「セットアップの基本」とは? -セットアップの基本を考える-(5/5)
【5/5】
「セットアップの基本を考える」5回シリーズの続きです
1/5 「ボールの下」とはどこ?
2/5 「体を上げる方向に向け」ればボールは正確に目標に向かって飛ぶのか?
3/5 「どこでボールをとらえればどの方向に飛ぶか」をつかむための練習方法
4/5 注意してほしいこと
5/5 「セットアップの基本」とは?
「基本」とは「動作のやり方」ではなく、「もっとも汎用性のある動作原理」だということが重要です。
最もよく使われる動作のエッセンスのようなもの、その感覚をつかむことがプレイに最も役立つもの、初心者からトップカテゴリーの選手まで共通して重要な動作感覚、それは何だろう?ということを考えてみると、
・パスをしっかり飛ばせる
・ボールをセットする(トスを上げる)目標をイメージできる
・あらゆる方向の目標にボールをコントロールできる
・床反力を利用するために適切な足場ができているかどうか分かる
・適切な足場ができた適切な位置をイメージして、そこへ移動できる
・味方の状況を把握し、それによってセット(上げる位置と到達のタイミング)を選択できる
・敵の状況を把握し、それによってセットを選択できる
といったところでしょうか?
中心となるのは「体の中心とセット目標を結んだ位置でボールを捉え、目標に向かって両手を動かすと正確にコントロールできる」という感覚です。
これをつかむこと、これを拠り所にボールをコントロールすることが「基本」であるということです。それを実現する「やり方」はいろいろあって、状況に応じていろんなやり方を選択できた方がいいので、「こうするのが基本だ」と言ってやり方を制限すること(「必ず目標に正対しろ」「移動にはこのステップを使え」等)はむしろマイナスだと考えています。
東京オリンピック銅メダルのアルゼンチン男子チームのセッター「デ・セッコ」選手は、世界一の高いパフォーマンスを持つセッターだというのは疑う余地のないところだと思いますが、そのセットを見ると、どんな意表を突くトリッキーなセットでも、どこを向いていても常に「体の中心とセット目標を結んだ位置でボールを捉え正確にコントロールする」ということを、実に「美しい」というレベルで実現しています。限りなく「基本に忠実」なプレイをしているわけですね。
月刊バレーボール(日本文化出版)2012年5月号の「スター選手の『あたりまえ』に挑戦」というコーナーで「ボールを捕らえる位置でセットする方向をコントロール」とデ・セッコ選手のプレーを紹介しています。
動画もたくさん紹介されていますね。(タイトル画像は動画のサムネイルより)
どんな「やり方」をするかではなく、いろんな状況において、最も確実にコントロールできる原理を再現できるようにするのが理想です。
このシリーズでは、ハンドリングについては一切触れてきませんでしたが、「どこでとらえればどこに飛ぶか」、「ボールに力が伝わる感じ」を探してもらえば、ハンドリングで無理をすることがなくなり、結果的にハンドリングはとても安定し、綺麗になります。意図的にどうにかしようとするよりも、上手く、正確に、気持ちよく「ボールに力が伝わる感じ」を探していくことで、結果的に理想的なやり方になっていくんですね。
バレーボールは「ネットを挟んで味方でパスができる(3タッチ以内)」というのが最大の特徴であり、「セット」は守備を攻撃につなぎ、創造的な組み立てを行う中心となるプレーです。あらゆる方向に、自在に、正確に、無駄な時間を使わずにコントロールできるようになるための感覚を基本とすべきではないでしょうか?
バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。