「スイングブロック」と「クロスオーバーステップ」の違い
ブロックの動きについては、「より早く、より高い目標位置にブロック面を用意できる」ように、「スイングブロック」を基本と考えています。コーチングバレーボール基礎編(日本バレーボール協会編)でも次のように述べられています。
今回は「スイングブロックのステップ」と、ブロックのステップ練習としてよく行われている「クロスオーバーステップ」の違いについて解説したいと思います。
クロスオーバーステップについては、「コーチングバレーボール基礎編」では以下のように書かれています。
「スイングジャンプ」による「クロスオーバーステップ」という書き方をしているように、スパイクジャンプのような踏み切りをする「スイングジャンプ」も「クロスオーバーステップ」」に含めてもいいのかもしれませんが、違いがあるとしたらどんなところか、そこにどんな意味があるかについて考えていきたいと思います。
この図は「e-Volleypedia」の記事「ブロック・ステップ」の「ステップ・クロス・オーバー」と「助走」の「三歩助走」から足の動きを採用し、三村泰成氏が点線のボックスで「身体の向き」を描き込み、それを布村が修正したものです。図の下段は、「三歩助走」の図から左右を反転して「左利きのスパイクジャンプ」を作りました。点線のボックスが示すとおり、ブロックのクロスオーバーでは身体はほぼネットの方を向き、スパイクジャンプではほぼ進行方向を向いています。
「クロスオーバー」するというのは、たとえば「右足より左足の方が右へ行く」ということです。上の図の上段で、①で着いた右足よりも②で着く左足の方が右にあるという状況が「クロスオーバー」の意味だと考えられます。
それに対して下段のスパイクジャンプでは、足を着く位置は似ていますが、「右足より左足の方が右へ行く」ということはなく、「前へ行く」だけです。それは体幹が進行方向を向いているためです。
スパイクジャンプでは、空中でテイクバックするために、足が床から離れるタイミングでは体幹が横を向く(利き手方向に開く)のが普通ですが、ジャンプのために両腕を振り込む辺りまでは体幹が進行方向を向いています。
「体幹がネット方向を向いているため」クロスオーバーが起きるわけです。裏を返せば「クロスオーバーを意識すると、ネット方向を向いてからジャンプすることになる」のではないでしょうか?
重要なことは、最初に引用したように「高く跳ぶためには、スイング・ジャンプを用いて横向きに踏み切り、空中で正対する方が合理的である」ということです。ネットに正対すると腕が振れなくなり高さも失われます。
また、「ネットに正対してからジャンプ」いうのをよく見ると、移動の最後に正対するために「一旦ネットから離れて、ネットに向かって踏み込む」ということをやりがちで、遠回りして時間をロスしますし、「空中移動」を使えなくなります。最初に引用したように「空中での水平方向への移動を利用することにより、より早く有効なブロックを完成することができる」ということも重要で、「ネットに正対してから跳ぼう」という意識は持たない方がいいのです。
もちろん、「ネットに正対して跳ぶ」ということは状況次第でいくらでもあるので、それ自体いけないことでも何でもありませんが、せっかく助走・踏み込みの勢いが利用できる時に、わざわざネットに正対してから跳ぶということはしない方がいいと思います。
ブロックステップは何がベストか?それは「ブロック位置までの距離とアタックされたボールがネット上を通過するタイミング」によって様々なので、いろいろなパターンを知っておくことは必要かもしれませんが、特定のステップを練習してそのステップでいかなければならないといったことは考えない方がいいと思います。とにかく、「間に合うようにそこへ行けばいい」のです。そのために「トップスピードで踏み切り、ブロック位置に到達する感覚」を身につけておけばいいのではないでしょうか?
たとえば「片足踏み切りの(ワンレグ)ブロック」などもありますが、片足踏み切りの練習さえしておけば、後は「いつどこにブロック面を置けるか・置きたいか」をイメージすれば足の運びは体が勝手に選んでくれると考えた方がいいと思います。
最後に、セイエド選手のスイングブロックですが、下図下段の⑨までしっかり背番号が見えていて、進行方向を向いてジャンプしようとしているのがよく分かると思います。
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