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スパイクとアタックの関係から『技術』と『技能』の関係を考察する

スパイクとアタックの違いについて説明できますか?

バレーボールプレーヤー。バレーボールコーチ。

いずれにしてもこの質問に明確な答えを持っておくことは重要なことのように思えます。

しかし、実際のところ私自身もこの質問を投げかけられて答えることができず、とても悔しい想いをしたのを昨日のことのように覚えています。

スパイクとは何か?

それでは、スパイクとアタックの違いについて考えていく上でまずはスパイクについて考えていきたいと思います。

スパイクは英語で『spike』。日本語の意味は『〈…を〉大くぎで打ちつける』といったものです。

そして、この意味から派生してバレーボール用語としてのスパイクが生まれてきたのだということは容易に想像できます。バレーボールにおけるスパイクとは、ボールを相手コートに力強く叩きつけるという一つの行為を指していると言えます。

アタックとは何か?

では、アタックとは何なのでしょうか。

アタックは英語で『attack』。日本語が意味するは『攻撃する』といったものです。

では、バレーボール用語としての『アタック』は具体的には何を指しているのでしょう。

それはサーブとブロックを除くすべての攻撃プレーです。

具体的に列挙してみると、スパイクにフェイント。そして、プッシュ。さらには、相手の隙をついてのアンバー・ハンド・パスやオーバー・ハンド・パスまでもがアタックと言えるでしょう。

関連記事:『サーブ』と『ブロック』はアタックではないのか?

アタックに内包されるスパイク

ここまでアタックとスパイクの違いを考えてみましたが、図式化してみるとその違いは一目瞭然です。

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図からも分かるようにスパイクはアタックに内包される存在であるということが分かります。敢えて言うならば、あくまでアタックの中の一つの選択肢でしかないわけです。

そして、この違いを理解するためのキーワードが『技術』と『技能』なのです。

スパイクは技術であり、アタックは技能である

スパイクは『技術』であり、アタックは『技能』だということです。

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『技術』と『技能』

意識しなければ、その違いについて考えることはあまりなく、混同して使用してしまうことが多いようにも思います。

まずは技術とは、物事を巧みにやり遂げる技であり、何かの目的を達成するための手段であると言えます。

そして技能とは、漢字からも感じることができるように技術を屈指して、目的を遂行する能力であると言えます。

このように考えてみると、アタックとスパイクの関係は目的と手段の関係にあると言えます。

つまり、こうも言えます。

攻撃して得点するという目的である『アタック』を遂行するために、『スパイク』という攻撃プレーの一つの選択肢である手段を講じるという関係性です。

普段、私たちバレーボーラーがスパイクとアタックという用語を使用する際に正確に使い分けができているかという疑問が残ります。この使い分けができていないと度々陥りがちな目的と手段の取り違えが起こり、手段が目的化されてしてしまい、目的が達成されない(例:スパイク練習ばかりして、スパイクという技術を遂行する能力は極めて高い状態になったが、肝心の攻撃して得点する能力であるアタックは身についていない)という結果に陥ってしまいます。

技術は教えることができるが、技能は教えることはできない。

さて、技術と技能の違いについてコーチングの観点からもう少し考えていきたいと思います。

この違いを理解する上で欠かせない視点。それは、教えられるのか?それとも教えることができないのか?という視点です。

結論から言うと、技術は教えることができるが、技能を教えることができないということです。

スパイク(技術)の話に戻してみると、スパイクのステップやスイング、コースの打ち分けなどについては一つ一つ事細かく教えることが可能です。バレーボールの書籍で解説されている内容やYOUTUBEで見ることのできるスパイク解説動画などは技術について言及されているものがほとんどであると言えるかと思います。

しかし、アタック(技能)に関してはどうでしょうか。攻撃して得点する能力を教えることなどできるでしょうか?

それはできません。

アタックを遂行するために必要な技術(スパイクやフェイント、プッシュなど)を教え、プレーヤーがそれらの技術を高いレベルで習得したとしても、それらの技術を屈指して得点できるかどうかについては、最終的にプレーヤーに委ねられるものだからです。

技術はティーチングによって。技能はコーチングによって。

では、コーチは一体どのようにしてプレーヤーと関わっていけばいいのでしょうか?

まず先述の通り、技術は教えることができ(ティーチング可能)、技能は教えることができない(ティーチング不可能)という認識を明確にしておくことが重要だと思います。そして、技能はコーチングによってのみ育むことができると理解しておけばよいと思います。

そして、場面に応じたティーチングとコーチングの使い分けをしていくことがコーチには求められていると言えます。

▶︎ティーチングはすぐに誰でもできるが、コーチングは?
誤解を恐れずに言うならば極論的ですが、ティーチングすることは、正しい知識さえ身に付け適切に伝達することさえできればすぐに誰にでもできます

しかし、コーチングに関してはどうでしょうか。

コーチングという行為は先述の通り、ティーチングすることができない技能を育むものであり、その難易度はティーチングよりも遥かに高く、複雑で膨大な試行錯誤を必要とするプロセスであると説明できるかと思います。

少し抽象的な表現になってしまうかもしれませんが、ティーチングはプレーヤーに新しいものを付加していくイメージで、コーチングはプレーヤーの内にあるものを引き出していくイメージです。

▶︎コーチングは引き出すために問いかける

コーチングは、プレーヤーの内なる能力をいかにして引き出すことができるのかという点が至上命題になると言えるのかもしれません。

そして、この能力を最大限引き出すための具体的行為が『問いかけ』なのではないでしょうか。

プレーヤー自身がある一定の技術を身につけた段階では、『問いかけ』がプレーヤーの技能を高める上でこの上なく重要であると言わざるを得ません。

コーチがコーチであるために。コーチはプレーヤーにとってベストの『問いかけ』を模索し、その『問いかけ』の質を高め続ける(コーチングという技能を高め続ける)ことを決してやめてはならないのだと思います。

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。