【備忘録】キックオフミーティングをただの顔合わせにしないために
プロジェクトが始まる際に必ず行う「キックオフミーティング」。ディレクターになりたての頃は、顔合わせくらいにしか思っていなかった。
いざ自分でプロジェクトを担当してみると、プロジェクトが進行していく中でクライアントと認識がズレていたり、そもそも説明していなかったりとグダグダになる。
今回はプロジェクトを成功させるために、キックオフミーティングで話すべきことをここでまとめてみる。
そもそもキックオフミーティングの目的は?
個人的には「ゴールまでを見える化」するためだと思っている。
つまり、プロジェクトの曖昧な部分をできるだけなくす内容になっていなければならない。
クライアント含めメンバー全員がプロジェクトの全貌を理解している状態にするのがベスト。
キックオフミーティングもせいぜい1時間くらい。限られた時間でプロジェクト内の曖昧になりやすいところを抑える必要がある。今回は私が対応することが多いBto Bサイトリニューアルを行うときのケースを例に見ていく。
アジェンダ
ご挨拶
プロジェクト概要
プロジェクト体制
制作スケジュール
プロジェクト要件
作業スコープ
次回アクション
「1.ご挨拶」は自己紹介。自分のポジションや過去に対応した案件などをサクッと紹介する。詳細は割愛して、順番に内容をまとめていく。
2.プロジェクト概要
2-1.背景
プロジェクトが発足するにいたった背景。それ相応の理由があって予算が組まれるはずなので、ここにプロジェクトの必要性がある。どんな課題があるのかをまず初めに確認して共通認識をとる。
2-2.目的
このプロジェクトでなにを達成するのか。なんのためのプロジェクトなのか。この認識がとても大事。どのフェーズにおいても、迷ったらここに立ち返るために確認する。
2-3.ターゲット
そもそもターゲットが明確になっていないと、どんなサイトを制作するのか決めることができない。詳細なペルソナを作成するが、正直案件による。どんな人にどんな行動を取ってもらいたいかを定める目的を達成できれば良いと考えているので、職業とか住んでる地域など、ありがちな情報は無視して、サイトに訪れるシチュエーションを切り口にまとめることが多い。
2-4.目標
このプロジェクトが成功したかを推し量るもの。誰の目から見ても達成したと判断できる基準でなくてはならない。一般的に定量的な数値目標をKPIとして設定する。
KPIが設定されていないクライアントの場合は、KGIから紐解き設定する。
3.プロジェクト体制
プロジェクト体制図の確認は、ただの窓口担当の確認で済ませてはいけない。個人的に意識しているのは次の2つ。
1つはクライアントに制作チームの体制を把握してもらい、安心していただくこと。それぞれのフェーズでどんな役割の人間が何人動いているのか、なんとなくでも把握していただいた方が安心できる。
もう1つは、先方の承認フローを確認するため。個人的には、これが進行管理において最も重要なことのひとつだと思っている。
各フェーズの成果物に対して承認を得ることがサイト制作の基本的な進め方だが、最後の最後に代表の鶴の一声で全て覆るこがある。蓋を開けてみたら、担当者の意見のみで進めていたことが発覚する。
それを避けるためにも、担当者のポジションとクライアント社内の承認フローを確認することはとても重要。各フェーズで決定した内容は基本的に覆らないもの(もしくは追加費用が発生する)と認識してもらい、そのための承認フローを構築してもらう必要がある。
4.制作スケジュール
4-1.WBS
全フェーズのタスクと担当者を洗い出し、ガントチャート形式で時系列順に並べる。私の場合は、Googleスプレッドシートで叩き台を作成して調整を繰り返し、おおよそ合意が取れたタイミングで課題管理ツールbacklogに反映するというやり方を採用している。backlog上で調整を繰り返すと無駄に変更履歴が残ってしまうのが個人的には好きではないので一旦叩き台を作るようにしている。
WBSの見方や、おおよその制作の流れを説明し、先方確認期間に何営業日必要か、納品日はいつに設定するかなどの合意をとる。
4-2.マイルストーン
WBSである程度スケジュールを説明するが、重要なことはマイルストーンをしっかり認識してもらうこと。マイルストーンとは、この期日が遅れるとプロジェクト全体のスケジュールにも影響が出てしまうポイントを指す。
マイルストーンを意識しないと、仮に遅延してもメンバーがどのくらい遅れているのか分からず、いつまで経ってもプロジェクトが進まない。
5.プロジェクト要件
5-1.制作物の確認
受注内容に基づく最終的な納品物をメンバー全員に共有。
サイト制作の場合はディレクトリマップを用いることが多い。受注内容によっては全ページデザインカンプを作成しない案件もあるため、ページ単位でどのレベルのコンテンツを制作するか確認する。
クライアントが想定している成果物と受注内容に乖離がある場合が時々ある。この段階でこのギャップを解消しておかないと、各フェーズでFIXしない。プロジェクト途中で追加費用の相談も難しくなる。
サイトリニューアルの場合、現在のサイトのと違いが分かるように、ディレクトリマップには新旧ディレクトリ名や仕様(カスタム投稿タイプなど)、コンテンツ概要を記載。私の場合は、ここにデザインカンプを作るページとそうでないページを明記し、クライアントに認識してもらう。
5-2.制作の進め方
どんな工程があるかは制作スケジュールのところで説明するが、各フェーズでの具体的な進め方を共有する。以下の内容を全て詳細に話していては時間が無くなるので、ドキュメントに明記する。
①要件定義・サイト設計
制作要件、システム要件の定義とサイトの基本設計を行うのがこのフェーズ。また、必要な機能やコンテンツを洗い出し、画面設計に落とし込む。必要な素材の調達もここで整理する。
要件定義の内容は長くなるので別の記事でまとめる。私の場合はこのキックオフミーティングの内容をベースに作ることが多い。要件定義の精度を欠くとトラブルに発展することがある。個人的に案件の中で1番神経を使う作業がこれ。
②デザイン
UI・UXを考慮したインターフェースを作成。いきなりデザインを作成するのではなく、詳細なヒアリングを行い、デザインの方向性を決定する。当社の場合は、専用のヒアリングシートを用いてクライアントのイメージを正確に言語化する。
方向性が決まったらデザインカンプをXDで作成。XDのURLを共有し、コメント機能でクライアントにフィードバックをもらう。前述の通り、カンプは全ページ作成する場合もあれば、TOPページと一部のページしか作成しない場合もある。ここは受注内容による。当然全ページ作成してもらえると思っているクライアントもいるため、キックオフの際に制作範囲は明確にする。
基本的にデザインは最初にTOPページを作成して、サイトのトンマナが確定したら下層ページを作成する。デザインソフトは業界の動向を見てfigmaにシフトする予定。
-調達
企業ロゴ、イラスト、素材はデザインフェーズ開始までにクライアントより支給してもらう。不足分はAdobe Stockからライセンス取得する。図、イラストの作成は受注内容から、対応可能かどうか、何点まで作成するかなどを共有しておく。
③コンテンツ制作
専門性が高い内容の場合は、サイト内に流し込む原稿をクライアントに支給してもらう。SEOを考慮した調整、校正、表記統一を当社で行う。基本的に②デザインと同時進行する。
-撮影
プロカメラマンによる写真撮影が必要な場合は、場所、製品、モデルはクライアントに手配してもらう。カメラマンは予算や得意分野を考慮してパートナーをアサイン。
-コピーライティング
コピーライターによるライティングを行うが、場合によってはインタビューを行う必要があるため、サービス担当者など適切な人材の手配をクライアントに依頼する。
④構築
構築指示書作成、コーディング、CMS基本構築の順番で進める。このフェーズに入ってからデザイン変更や、機能要件の追加は不可。どうしても必要な場合は追加費用とスケジュールの調整が発生することを伝える。また、このフェーズが始まるまでにサーバ周りの手配は確実に完了しておく。
⑤検証
構築したサイトの検証を行う。フォームの送信確認や100項目弱のチェックシートに基づき、最低ラインをクリアしているか表示チェックを行う。また、CMSを導入した場合は管理画面の検証も行い、ブラッシュアップを行う。
一通りクリアしたら、クライアントへ展開。内容と合わせて、全ページ表示チェックをしてもらう。
⑥公開
検証環境の内容をテスト環境に反映。公開日定時になったらDNSの切り替えや表示チェック、フォーム、電話問い合わせがワークしているか確認しする。確認完了のエビデンスを必ずもらう。確認が完了したら公開完了。
後日、CMS運用マニュアルを納品して全工程完了とする。
5-3.納品物
各フェーズの納品物をまとめる。逆に、納品しないのももしっかり共有することが大切。
5-4.会議体
会議はキックオフミーティングだけではなく、各フェーズの提案時に実施する。制作物に対し、制作意図や狙いを説明。こちら側の意図を正確に理解してもらうために行う。
基本的にオンラインミーティングで実施。1時間以内で収める。会議には、目的、アジェンダを予め共有し、会議の最後には次回アクションを確認する。プレゼンやブラッシュアップを目的とした会議では難しいが、この会議で決定することを明確にして開催する。その日のうちに議事録を展開し合意形成をとる。
案件によっては定例ミーティングを行う場合もあるが、クライアントによっては
5-5.コミュニケーション方法
プロジェクト内でどのようにコミニュケーションを取るのかを決める。基本的にはテキストコミニュケーションで行い、言った言ってないを無くすために必ずログを残す。
6.作業スコープ
6-1.制作サイドの作業
制作サイドの作業は基本的には受注内容に沿ったものになる。
6-2.クライアントサイドの作業
クライアントのタスクを全て洗い出し、見える化することが重要。
6-3.作業外スコープ
意外と重要なのが「やらないこと」。当然やってくれるものだと思ってたなんてことがないようにしなければならない。必要であれば、クライアントに手配してもらうか、要件に加えるために列挙する。
7.次回アクション
最後に、双方の次回アクションを確認する。
まとめ
キックオフミーティングで話すことは大体こんな感じ。
これを40分くらいで共有して、最後の20分で質疑応答やより理解を深めるためのコミュニケーションをとる。
会議は基本60分までと決めているが、初回なので必要に応じて90分取ることもある。
大切なことは曖昧な部分を無くすこと。後々言った言ってないのトラブルになってしまっては双方にとって良くない。これはディレクターの重要な仕事なので、しっかり握っていきたい。