今の20代30代の結婚・家族形成を巡る環境をデータとともに考える
先日ちょっとした調べもので統計局のデータをみていたら、単身家庭の増加など、感覚的にはそうだろうと思っていたことが、データ上もこんなに顕著なのかと驚いた。
調べ始めると、色んな興味深いデータがたくさん世の中にあることに気づく。なのでこの記事では、データとともに今の20代、30代の結婚や家族形成をめぐる環境について自分の思考を深めてみようと思う。
(専門家ではないので、読みとき方に間違いがあったら優しく指摘してね・・・!)
「一人で生きる」が今の日本の当たり前
まず驚いたのは、単独世帯の増加傾向の明らかさ。「核家族ってふえてるよね⭐️」を調べていたら、核家族どころか単独世帯が今の日本の世帯構成上のマジョリティだということを知った。
図の通り、平均世帯人数が1953年の5人から2022年は2.25人と、世帯の単位が小さくなっているのがよくわかる。日本人口は減っているが(2004年がピークらしい)世帯数は増加している。
そしてその平均世帯人数減少は、この世帯構造の変化でもよくわかる。
顕著に増加しているのが「単独世帯」(18.2⇒32.9%)「夫婦のみ」(14.4⇒24.5%)家庭で、逆に顕著に低下しているのは「夫婦と子」(41.4⇒25.8%)「三世代」(15.3⇒3.8%)だ。
つまり、この数十年で「夫婦二人や祖父母世代と子供が暮らす家庭」が過半数の時代から「一人で暮らす」「夫婦のみで暮らす」家庭が過半数に、一気に切り替わっている。
そして2022年の全世帯数のうち、単独世帯が全体の32.9%で、他の世帯構成のなかでも最も多い。「1人で暮らす」が今の日本のベーシックといってもよい。
(世帯は「住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、若しくは独立して生計を営む単身者をいう。」ということなので、住居は同じだが生計は別の同棲カップルなども単独カウントされている可能性はある)
家族形成の前提条件の違い
逆にいうと、1953年ごろ(つまり今の20代の祖父母世代が生まれた頃)の平均世帯人数が今の倍以上の5人と思うと、「そりゃあ〜、子育ての前提条件が今と違うわな」だ。
祖父母世代、親世代より家庭の単位が小さくなってるのだから、家庭の中で子育てを完結しようとすれば構成員一人当たりの負担は重くなるのは当たり前である。
もちろん5人の内数に子供自身も含まれるので、「子供一人あたりに大人の担い手が多かった」とは限らないだろう。ただ例え子供でも長子が末子を見るうえでは多少の戦力になることを思えば、「家庭の中に人数がいる」というのは、それだけで子育てにおける条件の違いに感じる。(これは私の感覚値だが、ワンオペはツーオペの倍どころか2.5倍くらい大変。新生児期などは一人じゃトイレもいけなければ飲み物も飲めない。)
加えて、上記世帯構成のデータで興味深かったのは、夫婦+子世帯が24.5%に対し、ひとり親+子世帯は6.8%の割合だということ。大体子供を育てる家庭の5世帯に1世帯がシングル家庭だと思うと、シングル家庭も全然珍しくない。シングル家庭も子を育てやすい社会になっているんだろうか?
身近に子供が育つ過程を見ることが減っている?
また、世帯の中で「児童がいる」ことが珍しくなっていることもこちらのデータでよくわかる。児童のいる世帯数は、1986年(40年弱前)は46.2%と約半数だったが、2022年18.3%になっている。
これは身近に子供が育つ過程をみるチャンスが減っていることを裏付けるデータではないだろうか。
自身が妊娠出産1歳の子育てを経験して一番よく思ったことは「こんなことが起きるなんて知らなかった」である。
お母さんの産後うつやお父さんのメンタルヘルス不調が社会問題だが、そこまでいかなくとも「仕事に育児になんとかやってはいるが、疲れ果てている」人がたくさんいる気がする。
身近に妊娠出産子育てを見る機会が減っているから「子供を産み育てる」ことのイメージがつかず
↓
でも「祖父母や親は普通に育てられてたんだから出来るだろう」という目測で子供を産むものの
↓
祖父母や親世代より小さくなった家庭の中で、しかも仕事と両立しながら子育てすることになり、
↓
社会の仕組みも追いついておらず、追い詰められてしまうお母さんやお父さんたち。
そんなことが起きているように思われてならない。
顕著な生涯未婚率の上昇
上記はあくまで世帯構成の話で、適齢期前の一人暮らしやパートナーと死別離別した高齢者などもすべて「単身世帯」のくくりになるため、「結婚観」によりフォーカスできる別のデータもみてみる。
「非婚化」の話題でよく参照されるのはいわゆる生涯未婚率のデータだ。
生涯未婚率は50歳時点で未婚の人の割合をいうそうなのだけど、男性28.25%、女性は17.81%。
男女の性差も興味深いが、60年前はどちらも2%未満だったのだから、いかに「結婚しない」人がこの数十年で一気に増加したかがわかる。
「結婚したいけどできない」だけじゃない
じゃあ、彼らはなぜ結婚しないのか。
時折、「結婚していない=結婚できない」という前提で話を進める人がいるけれど、アンチ結婚制度派の私はそんな単純な話じゃないと思っている。
実際データでみてみると、独身者の20代~30代のうち「結婚意思あり」がマジョリティなので、私が思うより結婚にあこがれを持つ人の割合はまだまだ多いようだ。(「結婚意思あり」=「現在すでに予定がある」「現在予定はないが是非したい」「現在予定はないができればしたい」)
ただその一方で、まだまだこれから相手を見つけやすいとされる20代の中でも、「どちらでもいい」が21.3%、「結婚意思なし」が14%あり、やはり確実に「結婚を必要だと思っていない人」も一定数いることは示されている。
(このデータの時代別推移や、年収別・地域別等でのデータがあればみてみたいなあ…)
結婚を望まない理由に垣間見える性別役割分業への懸念
そういった「積極的に結婚したいと思わない人」の理由で最も多いものは「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」だ。(次点で「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」)
そして興味深いのは、男女間の差がでているものだ。
女性にしろ、男性にしろ、「結婚に伴う性別役割分業上の義務」(女性なら家事育児、男性なら経済力)への懸念が、「それよりも自由を」と結婚を望まない理由になっている状況だと推察される。
おわりに
本当はもっともっといろんなデータをみていきたいのだけど、そろそろ疲れてきたのでこれで終わりにする。
データをみることで改めて何を思ったか。
個人的に強い問題意識をもっていることでいえば、
①子育てしやすい社会を作るには、今の世帯構成を前提に「社会の仕組み」を最適化しなきゃいけない(今は、社会の変化に仕組み側がおいついておらず「個人の頑張り」にしわ寄せされている結果、歪が起きている状態だと思う)
②家庭内の性別分業意識や既存の結婚制度(法律婚、夫婦同姓等)への不満から「結婚を望まない人」はマジョリティとはいはないが確実に一定数いる
ということである。
仕組みそのものを変えていくアプローチが本質的だとは思うものの、②に関しては個人の意識(内在化しているアンコンシャスバイアスを解き放つ)によるところもある。
今私はToB・ToGとToCの事業いずれも細々とトライしているのだけど、ToB・ToGでは仕組み側へのアプローチを、ToCに関しては個人の意識へのアプローチをやっていきたいなと思っている。
またデータをみることがあったら、アップデートしていく~!(おわり!)