全ての人たちへ
全ての人たちへ
私、大内彩加は自分が所属する劇団DULL-COLORED POP主宰谷賢一を提訴いたしました。
ずっと願っていました。誰かが谷を告発することを。
きっと同じように願っていた人たちは沢山いて、告発の準備をしていたけれどしなかった人、自分の生活を守るためにしなかった人、もう谷には関わりたくない一心で告発しなかった人たちを私は知っています。
私は2018年6月から谷に「日常的に胸やお尻を触る」「卑猥な言葉をかけられる」「卑猥な内容のLINEが送られてくる」等の性加害を2021年3月まで受け続けました。もっと深刻な、辛すぎる性加害もありました。詳細は訴状に記載しています。
それ以外でも谷はエントラップメント型ハラスメントや環境型パワーハラスメントを行い、「稽古中に飲酒をしながら稽古をする」「酩酊状態で稽古場に来る」「性的な演出を演者の許可を取らず行う」「若い役者・スタッフを複数人の前で怒鳴りつける」「女性キャストに肩を揉ませる」「女性を必ず自分の隣に座らせる」「物に当たる、態度に大きく不快感を出しながら稽古をする」「急に人を叩く、蹴る」等の、ここには書ききれないハラスメント行為を行ってきました。
2018年当時、私は劇団員ではなく客演という立場で「福島三部作」先行上演に出演していました。当時から劇団員たちは谷の加害を止めることなく、私が胸を揉まれ、お尻を触られても特になにかアクションを起こすことはありませんでした。私が谷から受けた性被害について先輩劇団員に相談したところ、「大内よりも酷い被害を受けて来た人はたくさんいるからなあ」と一蹴され、「これがここでは普通なのか」と思ってきました。
私がそこまでしてDULL-COLORED POPに関わってきたのは私が福島県飯舘村出身であり、東日本大震災の被災者だからです。「福島三部作」先行上演時、谷に「いつか平田オリザさんと福島の浜通りで演劇祭をやるからお前も手伝うんだぞ」と言われた時から、福島県が復興すること、自分が大好きな演劇によって故郷が盛り上がることを願って活動してきました。
しかし谷は、自身が性加害を行ってきたこと、ハラスメント行為をしてきたことの自覚がありません。
2022年6月、劇団内のハラスメントについて話し合う会が行われた時に谷が「自分はハラスメントをしたことはない」「もししたとしても●●(過去の劇団員)の尻を揉んだくらいだ」と発言したことを私は忘れません。
私は今、適応障害・うつ病を患い精神科に通院、投薬治療をしています。
何度も自殺をしようとしました。
主治医からは「劇団を辞めるか演劇を辞めるかどちらかを選んでください」と言われています。
谷は今、福島県双葉町に移住をして活動拠点を広げています。そして福島で行われる演劇祭の為に動いています。
今もなお、こうして苦しんでいる被害者がいて、周りには泣き寝入りせざるを得ない人たちが沢山いて、そんな状況下でこれ以上故郷の地に足を踏み入れてほしくない。これは私の愛した故郷への侮辱行為です。
福島の人たち並びに演劇関係者でこれ以上不必要な性加害・ハラスメントを受ける被害者が増えてほしくないです。今まで声をあげられなかった被害者たちが声をあげられるように、そして被害を受けた人たちの心が少しでも休まりますように、ここに、実名にて告発・提訴いたします。
今回、「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(http://nosekuhara.com/)に自身の被害を相談し、弁護士を紹介していただきこうして告発するに至りました。迅速にご対応頂きまして誠にありがとうございました。
他の相談先ですが、NPO法人「レイプクライシスセンターTSUBOMI」(https://www.crisiscenter-tsubomi.com/)にもメールにて相談いたしました。「性暴力は加害者が100%悪く、すべての責任は加害者にあります。」と言ってくださったその言葉に何度も救われてきました。
私は今まで、自分が受けた被害を大好きな母にも、親友にも、当時いた恋人にも話せずにいました。ぽつ、ぽつと断片的に、一緒に共演した仲間や、似たような被害を受けた先輩に相談したことはありましたが、全てを人に話せたのは去年の秋ごろのことです。
私自身、同情が欲しいわけでも、心配してほしいわけでも、気を遣ってほしいわけでも、腫れ物に触るように扱ってほしいわけでもありません。事実としてあったことを述べています。もし、もしこれが「大内彩加」が受けた被害ではなく「皆さんの大事な、かけがえのない大好きな人」が受けた被害だったらどうしますか?「そういう人はいないなあ」という方は自分自身が、もしくは推しや応援している誰かがそのような被害を受けたら、と考えてみてほしいです。
私は偶然、自死を選ばずにここまで来ました。偶然、死んでいないだけです。でも、誰も告発する道を選ばず、誰かが私と同じような被害を受け、苦しみ、役者を辞めてしまったら。そして自死を選んでしまったら。
私は悔やみきれません、いつまでも後悔すると思います。どうして私が声をあげなかったんだろうと一生自分を恨むと思います。
全ての人たちへ、という題にしたのは、誰しもが被害者になる可能性があり、加害者になる可能性もあり、相談相手になる可能性もあるのだから「どうか考えることを辞めないで、行動し続けてほしい」という気持ちからこの題にしました。私は被害者・加害者共に適切なケア、治療、援助、救済は必要だと考えています。それと同時に周りの理解、知識も必要だと思っています。
訴状は自ら公開はいたしませんが、皆様ご自身で請求をすれば全文読めます。裁判も傍聴できますので是非お越しください。
今は私自身、裁判やうつの治療・通院で手一杯ですが、いずれハラスメント相談員の資格を取り、自分にとって必要な勉強をしながら、演劇業界で少しでも加害者、被害者を出さない取り組みが出来ればと行動していきたいです。
そして、お芝居もたくさん、たくさんしたいです。なによりお芝居がしたいです。誰もが安心してお芝居が出来て、お客様の元に届けられるように。お客様も心置きなくお芝居を楽しめる、そんな環境作りをしたい。その一心で動いています。どうか、皆様のお力を貸してください。
そして見届けていただけますと幸いです。
2022年12月15日 大内彩加