「A Bright New Boise」のこと。裁判のこと。
※出来れば最後まで読んでほしいです。
大内、2年振りに関東で舞台に立ちます。
サミュエル・D・ハンター作「A Bright New Boise」
海外戯曲、日本初上演、朗読劇、とても心が躍ります。
KAAT神奈川芸術劇場にて、5月10日~19日が公演期間なのですがクアトロキャストの為、大内の出演日は12日㈰、15日㈬の2日間、4公演です。
是非皆さんにも足をお運び頂きたいのですが「お前の裁判どうなってんの?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。
先月、第八回期日を終えて次の期日の日程が決まったのですが、第九回期日が5月10日に決まりました。え?公演初日やないかい。
10日は大内の出演日ではありませんが、舞台にお詳しい方、携わっている方だとお分かりいただけると思うのですが初日公演の前には大体ゲネ、所謂リハーサルがあります(たまにゲネ無しで本番を迎えることもあるのですが)。自分の初日が10日ではないとはいえ、カンパニーとしての初日は10日ですし本来俳優である私が行くべき場所は裁判所ではなく劇場です。私は原告側なので流石に証人尋問やらなんやらで裁判所に呼ばれる場合は事前確認があるはずですからそこまで気にしてはいなかったのですが偶然にしては驚きましたし胸がざわつきました。提出書類はありますが、今回の裁判は専門家に任せて私はステージに集中したいと思っています。
裁判ですが現状、後は和解をするか人証をして判決を出すか、どうするか、と言った状況まできています。提出する書類はあらかた出し終わっています。陳述書にご協力頂いた劇団員並びに関係者の皆さんには改めてお礼を伝えるとして……。
この和解と判決の違い、私は裁判を行うまで大きな勘違いをしていたのですが、和解をする方が原告側のメリットがすごいんですね(ケースバイケースかもしれません)(私の裁判の場合、私に対するメリットが大変強いです)。
大内の場合ですが、私の願いは大きく分けて3つです。
1.被告にアルコール依存症の治療や、ハラスメントを二度としないように加害者防止プログラムを受けてもらう事。
2.被告本人が加害を認める事。
3.慰謝料をしっかり支払ってもらう事。
判決のみだと慰謝料の支払いは認められても被告本人が加害を認める事や被告に治療を受けてもらう事まで求めることは出来ません。
私はこの1と2がかなり重要だと考えています。
まず、適切な治療を受けなければ「何が問題だったのか」がわからないまま社会へ出る事になります。私はもう二度と彼に加害をしてほしくない。あまりお話してきませんでしたが、裁判をした理由のひとつに「もうこれ以上加害者になってほしくない」という理由がありました。そして被告本人が加害を認めない限り回復は見込めないと私は考えています。勿論、口だけの謝罪は信じませんし求めていません。「外野がうるさいから一旦認めりゃいいでしょ」と言って裏で全く反省していない映像、演劇関係の加害者たちを私は何人か知っています。そして、自身の加害を認めない限り「あいつが悪いんだ」「あいつが俺の人生をめちゃくちゃにしたんだ」と他責になり一生私を恨み続けるかと思います。一切反省にも治療にも繋がりません。私自身の身の安全も保障されることなく、陳述書で協力してくれた関係者並びに被害者、声を上げられなくとも私に連絡をくれた被害者たちも怖い思いをし続けるはめになります。
2022年11月に裁判所に書面を提出して、2023年1月に第一回期日が行われてからもう一年以上経ちますが中々最後の一歩が進まないと言った状況です。私としては性暴力を受けて、日常的にハラスメントを受け続けて来たのですから泣き寝入りは絶対にしませんし、何かしらの結果をしっかり残して次に繋げたいと思っています。今でも演劇業界から性暴力、ハラスメントを根絶したいという気持ちに変わりはありません。被害者でも声をあげられること、被害を告発しても俳優としてやっていけること、被害者が業界を去らなくてもいいということ、性暴力やハラスメントを拒否しても演劇を続けていけること。
それを私は、私の存在で提示していきたいです。
という状況の中、昨年に引き続き今年も舞台に立てることが純粋にうれしいです。昨年8月は故郷である福島県でお芝居をしましたが、冒頭にも書いたように今年の5月はKAAT神奈川芸術劇場に立ちます。久しぶりのKAATですね。裁判記録にも残っていますがKAATの楽屋でもひと悶着あったのでフラバしないかな、という気持ちが少しありますが、そんな苦しみを吹き飛ばしてくれるような素敵なスタッフ陣です。とってもあんしん。うれしい。つよい。出会いから心強かったので一緒にお芝居を創れる未来を心から願っていました。
ダルカラでお芝居をしているとき、自分がハラスメントを受ける苦しみよりも「裏でこれだけの加害があって、それでも表ではニコニコし続けている自分が許せない。お客様を騙しているんじゃないか」という怒りや不安、これ以上騙したくない、観に来てくれるお客様に、応援してくれる人達に誠実でありたいという気持ちが何より強かったです。
告発、裁判を始めてからはそんな気持ちを抱かずに公演が出来る場所、純粋にお客様にお芝居を楽しんでもらえる場所を探し続けてきました。
今回もその願いが叶うことがうれしいです。
この度リーディングする戯曲「A Bright New Boise」も大変面白く、作者であるサミュエル・D・ハンターの別作品「ザ・ホエール」は戯曲とリンクする部分もあり、映画「ザ・ホエール」を見た方はより楽しめると思います。映画自体面白いので、映画を見てからステージリーディングを見に来るのもおすすめです。勿論、事前情報なしのまっさらな状態でも楽しめます。
ストーリー自体、どう感じてもらえるかすごく興味があります。アメリカ西部アイダホ州・州都ボイシ―の、とあるスーパーマーケットで働く人達のお話です。お話を楽しんでほしい演者側のネタバレ無し比喩表現として捉えてもらいたいのですが、容器の中にたぷたぷに注がれた白い牛乳に一滴の液体が混ざるようなお話。それがコーヒーなのか、水なのか、泥なのか、血なのか。
人と人同士の口語劇を是非楽しんでもらえたら幸いです。
↓公式のホームページはこちらです↓
Stage Reading「A Bright New Boise」
稽古も始まっています。
稽古初日、稽古場に行くまでとても怖い気持ちで過ごしていました。フラッシュバッグを起こしていたんです。目の前で加害が起きること、加害の対象になること、息が出来なくなったあの日、歩き方を忘れたあの日、耳が聴こえなくなったあの日、死のうとしたあの日。それでも私はステージに立ちたかった、お芝居がしたかった、私が好きなものを誰にも奪わせたくなかった。
集中しすぎて、稽古に行く途中、初めてキーケースを落としました。家の鍵と定期券と都営交通乗車証が纏めて入っている失くしたら地獄の3セット。改札から出ようとしたときに気付いて、あんなに意気込んでいたのに稽古に遅刻しちまう!!!!!と稽古場に急いで連絡。交通系ICが無ければ外に出られませんよと改札にいた駅員さんに言われて大パニック、ホームを探すも見つからず、落とし物担当の部屋にいた駅員さんに泣きつく始末。事情を汲んでくれた駅員さんが「乗った電車が折り返してくるから探しにいきましょう」と一緒に探しに行ってくれて、なんやかんや色々あって無事にキーケースを発見してなんとか稽古場へ向かうことが出来ました。死ぬかと思った。
いや、そんなことでは死なないんです。死なないんですけれどね、こんな日に限ってパニックや発作、フラバを起こしたときに飲む頓服薬を家に置いてきてしまって「精神科の薬一式持ち歩け馬鹿め~~~~!」と自分をぶん殴りたくなりましたしこの日の登場人物全てに拍手と謝辞を送りたいです。一緒にキーケースを探してくれた駅員さん、乗客の皆様、本当にありがとうございました。お陰様で稽古にも行けたし家にも帰れました。
と、いうことがあって迎えた稽古の日々ですがとてもとてもとても楽しいです。大変クリエイティブな現場にいられている幸せを実感しています。海外戯曲ですから勿論日本語訳をしてから稽古に臨むのですが、翻訳されたのは演出の下平さんで、稽古中にも俳優が「ここの訳についてなんだけれど……」というとすぐに反応してディスカッションしてくれますし、大元の戯曲をしっかり反映させ大事にしつつ俳優も混ざって「こういう日本語訳はどうだろう」「こうした方がお客様にも分かりやすいのではないか」と考えつづけています。これが私は何より嬉しいです。
昨年の柳美里さんの現場でもそうでしたが、戯曲に関して作家・翻訳・演出家と対等に、誠実に話し合える環境にいられるだけで嬉しいです。此方が恐怖を抱かなくてもいい、馬鹿にされることもない、話し合える余地がある、話し合える時間がある、指摘したことによって此方が不利益を被ることがない。殴られることもないし蹴られることもない。性暴力を受ける心配もない。怒鳴られることも人権を踏みにじられることもない。
演劇が出来上がる現場ってこんななんだ、我慢しないといけないんだと、絶望する必要もない。
こんな現場が増えたらいいな。
演劇の現場から去るべきなのは被害者ではなく加害者です。
被害を受けた人達が安心して演劇を楽しめる現場が増えたらいい。
被害を間接的に受け続けたお客様が安心してお芝居を楽しめる現場が増えたらいい。
増やそう、増やそうよ。
誰も辛い思いをしなくても演劇は創れるって証明しよう。
お芝居も、裁判も自分なりに頑張るので、応援の気持ちで朗読劇、観に来てくれたら嬉しいです。今回の記事は私からの皆さんへのお手紙だと思って受け取ってもらえたら。まあ毎回そんな気持ちで書いているんですけれども。
Stage Reading「A Bright New Boise」
◎公演日時(大内出演回のみ記載)
・5月12日㈰14:00/18:00
出演キャスト:竹尾一真/松本紀保/大内彩加/榎木淳弥/佐藤信長
・5月15日㈬14:00/19:00
出演キャスト:北川能功/貴城けい/大内彩加/鈴木勝大/佐藤信長
◎劇場
KAAT 神奈川芸術劇場 <大スタジオ>にて
〒231-0023神奈川県横浜市中区山下町281
◎チケット代金
一般:6,600円/U-24:3,300円/高校生以下:1,000円
↓チケットはこちらから↓(各ページに飛べるようにしといたよ)
カンフェティ、イープラス、チケットかながわ
stkham100@gmail.com
予約方法わかんないよって方はこれ、仕事で使っているアドレスなのでここにメール頂いても対応します。各SNSのDMでも大丈夫です。
こういう舞台って上演時間、早く知りたいと思うので情報出せるぞってなったら私も告知します。
ぜ~~~~~~ってえ、観に来てくれよな!KAATで僕と握手!
(この記事のヘッダー写真は去年のヨコハマで行われたポケモンWCS2023のポケジェニックを回っていた時の写真です。今回神奈川での公演ということで使用しました。最近、なかなかポケカが出来ていなくてむずむずしています)