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裁判終結のお知らせ

大内彩加です。
2024年11月27日、私、大内彩加が原告の民事裁判が終結しました。2022年12月15日に告発、提訴をした演劇の現場におけるハラスメント、性暴力裁判ですが、約2年かかりました。ここから先に書くことは2年間の裁判で私が訴えてきたこと、証人尋問で訴えてきたこと、つまり既に公開されていることを元に書けることだけ書きます。

私としては、いわゆる「勝利的和解」であると受け止めています。理由は、被告が私の胸部や臀部を何度も触ったことに関して「劇団の主宰者と劇団員という立場の差に鑑みると、 原告の真摯な同意があったとは認め難く、一定の不法行為責任が生じ得る 行為であったといえる」と裁判所が判断してくれたことです。劇団、その他上下関係がある関係性で起きるハラスメントでは、弱い立場側が強い抗議はできず、それに乗じてハラスメントが続き、それについて「合意していた」と加害者から言われてしまうものです。このような構造についての私の主張を裁判所が理解してくれたことは大変よかったと思います。詳細は以下に述べます。

裁判結果

裁定和解となりました。裁定和解とは、民事訴訟法第265条に基づく制度で、裁判所が和解内容を決める和解手続きです。判決(裁判所の判断)と和解(当事者の互譲による解決)の中間的な解決方法で、裁判所の判断もなされ、かつ、当事者も一定の判断をするという特徴があります。私は和解のメリットも充分理解した上で判決を望んでいました。ですが、判決で終わった場合、上訴されることや被告が私を名誉毀損等で訴える可能性がありました。
一般論ですが、被害者や第三者が行為者(加害者)を訴えたり公然と告発、糾弾すると名誉毀損で訴えられる可能性があります。被害者と加害者がひっくり返る構造です。その点に関して私の意見は「名誉が著しく傷付けられたら名誉回復のために訴えたくなる気持ちも分かるがそもそも加害者が悪いのではないだろうか。それよりも被害者が加害者から受けた傷はどうなるんだ。誰が被害者を助けるんだ。そもそも加害者が加害行為をしなければよかっただけの話では」という意見です。

正直な気持ちを書けば、私は誰を守ることも出来なかったと劇団にいた時からずっと思っていました。被害を受ける自分も、被害を受ける第三者も、私は助けられませんでした。判決で終わらせてもらった方が良いと願い続けていましたが、被告から訴えられたら、誰が私を守ってくれるんだろう。

和解を勧めてくる裁判所に対して何度も「判決を望んでいる」と訴え続けましたが、判決に近い、裁定和解という形にし、自分自身を守る決断に至りました。きっと「なんで和解なんだ」と言ってくる方がいらっしゃると思いますが、裁判の仕組みをご理解いただいた上でご意見願えれば幸いです。
和解は仲直りではありません。そしてあくまで裁定和解を選んだ経緯もご理解ください。

裁判所の意見

「原告が迎合的な態度を示すことがあったとしても、劇団の主宰者と劇団員という立場の差に鑑みると、原告の真撃な同意があったとは認め難く、一定の不法行為責任が生じ得る行為であったといえる。」というのが裁判所の意見です。裁判をしていて大変だったことは司法の場において「演劇界並びに劇団という特殊なものに関する説明と理解していただくこと」でした。一般企業、一般的な人間関係と何ら変わらないと個人的には思っていたのですが、フィルターが一枚噛むだけで伝わりにくいことがあるのかな、いや、演劇界で起きたハラスメント、性暴力問題に関する民事裁判の件数が他より少ないだけなのかもしれません。なんにせよその点に関しては私自身も勉強になりましたし今後、誰かの力になれたらなと思います。

また、強制性交に関してですが
「原告の立証に隘路(あいろ)があること、また、行為があったとされる時期に照らすと時効が成立し得ること等の事情を踏まえると、不法行為責任を追及するのは困難といえる。」
とのことでした。
民事裁判における不法行為責任の時効は3年です。2018年7月に行為があったと私は主張したのですが、「訴えたい」という願いが形になったのは2022年11月なのでその時点で時効が成立してしまっています。とは言え、この時効が成立するタイミングに関しては諸説あり、裁判の中でも話し合われてきました。
裁判の中で被告は「深夜に原告の家に行ったこと」「ベッドの上で原告を抱き締めたこと」は認めており、その先の行為については否認しております。
なお、被告が原告の家に来た時間については、私の主張は当初記憶のみに依拠していましたが、後にGPSを確認するという方法があることを認識して確認し、GPSによって確認される時間に主張を変更しました。しかし、同じ夜の2時間程度の差である上、そもそも被告はその夜に一人暮らしの私の家に泊まったこと、同じベッドの上で私に抱きついたことは一貫して認めている、というのが事実です。裁判所はそれ以上の行為を認定する証拠は十分ではないと判断したということになりますが、「なかったと認定した」わけではありません。詳細は、尋問調書を読んで頂ければと思います。
裁判の中で私は、行為に使われた避妊具や被告が飲酒したお酒の瓶はあったが破棄してしまって今は存在しない、と説明しました。そのような客観的な物証がない現状では裁判所で、立証が十分とはいえないと判断されてしまうこともある、ということです。
私は当時、すぐにシャワーを浴び、ワンストップセンターや警察に行くこともありませんでした。残された証拠として裁判所に提出したのは、その日に友人に被害があったと伝えたLINEと、当時私から相談を聴いていた友人の陳述書です。
裁判、被害申告をする上で如何に当時の自分に知識がなかったことが分かります。これは今後の人生にも活かしていきたい部分であり、上記内容については証人尋問でもそれについて話しております。尋問調書は東京地裁で見られるようになりますのでご自由にご確認ください。

大内の今後

知ってる?裁判が終わろうと被害者の人生は続くんだよ
裁判結果がどうなろうと、私が受けた被害はなくならないのです。ということで私は引き続き鬱病の治療を続けながら演劇を続けます。今の演劇界の自浄作用の無さに対して私は「焼き払った方がええんやないか」と思っています。最近も演劇の現場で演出家が未成年の女児に対して性的暴行をした事件がありました。
私が2年前に裁判を起こした時辺りから、オーディションの募集要項の最後に「ハラスメントポリシー」について書かれることが当たり前になりました。それでもハラスメントが起こる現場は今でもあります。SNSでハラスメントや性暴力に関してNOを突き付ける俳優が少しずつ増えてきました。私が被害を受けていた時、ハラスメントや性暴力の内容に関して触れようものなら爪弾きに遭うような業界でした。少しずつ、少しずつ変わってきたものの、今までの被害者はどうなるのでしょうか。これからの被害者は?加害者は?業界全体で、表現者ひとりひとりが行動し続けなければ意味がありません。

私はハラスメントカウンセラーの資格を取りました。この2年間の裁判期間並びに行為を受けていた4年間も含めて、私が経験したことを活かして、被害者、加害者を出来るだけ業界から出さないように行動、発信を続けたいと思っています。

また、いま私は約3年ぶりに東京で舞台に立っています。それに伴い、今まで俳優として関わってきた人達へ、全員ではありませんが少しずつメッセージを送りました。みんな温かい言葉をくださりました。本当にありがとうございます。
そして告発、提訴してからも、その前からも大内彩加自身を応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。いつか恩返しできたらいいなと思いつつ、もう少し生きていたいと思っています。

大内彩加



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