【忘却】

 ポーン。

ポーーーン。

ポーーーーーン。

。。。。。

ここまで来れば
もう大丈夫。

ここまで入れば
もう安心。

ここまで潜れば
もう快適。

ここには
なんにもないし、
なんでもある。

-

あなたの足では
決して追い付けない。

あなたの手では
決して触れられない。

あなたの目では
決して見つけられない。

あなたの耳では
決して聴き取れない。

あなたでは、
決して捉えられない。

それは

小さな小さな

針穴みたいな

小さな   入り口。

それは

誰にでもあるのに、

誰も知らない

小さな    入り口。

-

戻れないんだって、
来た道は、もう。

忘れちゃうんだって、
通ると、すぐに。

探してるんだって、
確かなもの、ばっかり。

止まれないんだって、
いつまでも、ずっと。

分からないんだって、
何もかも、さっぱり。

-

そうやって

また

追って

触って

気付いて

見て

聴いて

捉えたつもりで…

緩めて

埋もれて

忘れて

漂って

散って

なくなって…。

でも、それは

ほんとうは

なくなってなんか…いない。

だって

ここに

ぜんぶ あるよ。

ひとつぶ のこらず

ぜんぶ ある。

ずっと

ぼくは

ここにいるよ。

きみのぜんぶと

いっしょにいるよ。

だから、また 

わすれてもいいよ。