透明で美しい酸素

静かな水の底で　息をするたびに
身体は静かに浮かび沈み、
透き通るような冷気が　肌に触れては消えていく
世界が遠くに歪んで見えた

水面から零れ落ちる月光が、
私の影を優しく撫でて、
言葉は水に溶け、何も残らない
声を出しても、何も響かない
この沈黙の世界で　ただ息をしている

光は、この淀んだ水の先に隠れて
冷酷な水を裂いて進むとき
その手に掴もうとするのは、見えない夢の破片
全ては指を通り抜けて、消えていった

この深い水の中で　私は何を求めているのか
答えのない響きが　胸の奥で弾けるたび
漂い続ける心に　誰が応えてくれるのだろう

息をするたびに感じる　重たい水の中で
淀みが消える瞬間を　ただ待ち続ける
そして私は手を伸ばし続ける
冷徹な水を切り裂き、遥か彼方の光に触れようと

そして、その先に見つけるのは
透明で美しい酸素
それは私の魂を解き放つ自由
濁った世界からの脱却

水の中で漂いながら
私はこの世界で、生きている

youtubeへ毎週金曜日、小さな物語をお届けしています😌
今回は、「透明で美しい酸素」
美しく、儚い世界観をAIイラストと朗読によって文字の世界とはまた違った空間をお楽しみいただけます😊

あとがき
「水槽という名のコンフォートゾーン。その壁を超えるのは誰でもない自分。」 人生とは、コンフォートゾーンを超えたいと願う気持ちと、今いる場所を受け入れる心が交差する、時間をかけた旅。壁を超えようと手を伸ばし続ける中で、私たちは迷い、漂い、そして少しずつ進んでいく。 最後にたどり着くのは、広い世界の中で自分らしく生きる場所。たとえ水槽の中にいても、漂いながら自分を見つめ続け、その中でどう生きるかを選ぶ自由がある。 「この世界で生きていく」とは、変化の途中にある自分を肯定しながら、次の一歩を見据えること。

「壁を超えたいと思うその気持ちこそが、あなたを進ませる光になる。」