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【北極冒険】Day11:2019.04.17

11日目。この日は停滞日。物資を受け取ったり、体を休めたり、買い物をしたり、作戦会議をする日だ。そして、Xデーだ。

今回の北極冒険でもっとも厳しく、もっとも重要な日だった。
この日のことはTVやネットニュース、講演会などでは語られてない。
日記にも、これだけしか書かれていない。

後日改めて書こう。
怒らない、怒れない。

ですので、ここから先は記憶を頼りにお伝えさせていただきます。
かなり、長くなると思う。

まずこの日、最初に行ったのは、国立公園の管理棟みたいなところ。(名前何だったけな。)

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ここで、無事にキキクに着きましたよって言う報告をしました。これちゃんと報告しないと、救助隊の人たちが”あいつらこないぞ、なんかあったのかもしれない!”ってなっちゃうから大事な報告。荻田さんは小部屋みたいな所でスタッフの人と画面上の地図を見ながら相談してた。

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待っている間のおぐらくんとあんどぅ。これまでの疲れからか、まだ眠り足りない様子。この時、もう昼前なんですけどね。りょうくんは相変わらず俺と一緒の体力お化け。ピンピンしてる。笑

この後、オタワから発送していた物資を受け取った。重い。せっかく軽くなってきたソリがまた重くなった。(*1) これから海に出て歩くと言うのに、これまで以上に重いなんて・・。オタワから送り込んだ時にわかってたことではあるが、その時感じていた重量と違う。「これは初日から元気ピンピン男子たちに女子の荷物ほぼ振っていかなあかんな」と確信してた。
(*1)最初が200km分の食料、キキクからは400km分の食料。単純に、倍。

空港からキャンプ地に戻って、早速会議。みんなの関心は

”ここがゴールか、クライドリバーに行けるのか”

荻田さんが途中いなくなったり、国立公園のスタッフの人と相談してたりしてたから、超ドキドキしてた。答えは

”クライドリバーを目指す”

とても嬉しかった。泣きそうだった。目指せる。キキクまでのことがあったから本当に不安だった。自分が後方部隊で遅れていたから、ダメだと思われたかもしれないとドキドキしていた。良かった。

その後、荻田さんが途中いなくなったのは猟銃を借りてくれていたり、なんと急遽補給点をもう1箇所作ってくれていたからだと知った。

第2補給点 ”ケープフーパー”

これには驚いた。さっきも言ったが、ここから先は荷物が重くなることを毎日テントの中であつしと日々問題視していたし、実際受け取って絶望感があったからだ。その作戦があったかと。自分は解決策は出せなかったが、荻田さんはちゃんと考えてくれていた。感謝しかなかった。

この補給点の設置には、軽量化以外のもう一つのメリットがあったと思っている。それは、中間目標ができたこと。正直、これは大きい。ここから先は400kmある。これまで景色が変わるアウトドア感のあった前半戦ですら、海に出て少し景色が変わらなくなると明らかに雰囲気が悪くなった。ただなんとかたどり着けたのは、”キキク”と言う目標があったからだと思う。キキクとクライドリバーの中間にできたこのケープフーパーは、この後やはりモチベーションに大きな影響を与えることになる。荻田さん、そこまで見越してたのかな。だとしたら、やっぱさすがすぎるとしか言いようがない。

午後は自由時間となり、”ほぼ”全員がスーパーマーケットに直行した。ただ全員が行ってしまうと、可愛い泥棒ちゃん(現地のタバコを吸うちびっこ)にいろんな物を持っていかれてしまう。そこで、自分と(確か・・・)柏倉さんとあつしといーたんで見張りをしてた。みんなが帰ってきたら交代で行こうと言うことになって。しばらくタバコ吸ったり、装備の手入れしたり、本を読んだりと、静かな場所でリラックスタイムを楽しんだ。

しばらくして、みんなが食料買い込んで帰ってきたので、交代でスーパーに向かった。

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いく途中に見つけたわんちゃん。めちゃ吠えられた。ふさふさ。

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写真撮り忘れてたので、GoogleMapで見つけた!ここ!!このスーパー!雪がない時期のものだけど、まさにこのスーパー!懐かしい(涙)
(にしてもGoogleさんすげぇな、普通にストリートビューで出てきたわ。ここも守備範囲なのね・・・。)

スーパーに着いてら絶対に買おうと決めていた物が2つある。1つは肉。もう一つがカレースパイス。実は、前半戦が始まる前のパングの村で、ベーコンの塊のような物を購入していて、それを前半戦4日目くらいにみんなに差し入れたらめちゃめちゃ喜ばれたので、今回も長い旅になるし前半より大きめのものを買おうと思って探した。
カレースパイスは、毎日の食事で必須だった。自分のドライバックに入っていた辛ラーメン*2と交換するほど、カレーは自分にとって重要だった。
*2 貨幣が価値を持たない冒険中は、食べたら体が芯から温まる辛ラーメンが最高級の価値を有していた。ドライバックに辛ラーメンが入ってるかどうかは運次第。

スーパーで程度のいい肉を探していると、店内で荻田さんに遭遇。またもやお楽しみアイテムを探していることを伝えると、「粉末ジュースとかいいんじゃない?これから暑くなってくるし、美味しいもの飲んだら元気でない?」 ナイスアイデアすぎた。粉末なら凍らないし、そこまで重くもないしかさばらない。水があればどこでもジュースを生成できるまさに最強のアイテムじゃないか!やはり経験者の知恵は素晴らしい。

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確か、これだったと思う・・・。定かではない。
荻田さんとお金を出し合って、全員分を購入。いいタイミングで2人でみんなに配ろうと言って、半分半分を持った。そのまま先に荻田さんは店を後にし、俺は本気でカレースパイス探し。こちらも軽量で最高の味を提供してくれる。カレーで不味いものは、ない、ゆえに最強。

そうこうしていると、りょうくんが店に入ってきた。

「めちゃ荻田さんに怒られた、やばいかもしれない」

え?ちょ、何々?どういうこと?

頭の中はハテナだらけ。店を出て話を聞くと、どうやらみほがシャワーを浴びたいと言ったらしく、りょうくんはお兄ちゃん力全開で手伝ってなんとか辿り着き、今まさにシャワー浴びているらしい。そして荻田さんからは、シャワーなんかに入ると、みほの足の豆は悪化するらしく、これからの行程に支障が出ると言うものだった。りょうくんは、みんなを呼びに来たつもりが、荻田さんに遭遇し、その話されて、猛省していた。

”いやぁ・・・え〜〜、ちょ、サークルの合宿かよ・・・。”

が本音。しかし、とりあえず起こったものは仕方ない。しかも今みほがそのシャワーのところに1人でいるって言うから、いや置いてきたらあかんやろと思って急いでりょうくんと迎えに行った。

みほにも現状を説明。

「もうこれで痛いとか言い訳にできなくなったね」とか
「起こったものは仕方ない、逆にプラスに変えて頑張ろう!」とか
とにかく2人が落ち込むことだけは避けようと励ました。ちょっとだけ頭濡らして、「これで俺も共犯だ!」とかゆーてたな。みほのモチベーションが今まで以上に下がったらフォローできる自信なかったし、りょうくんはいつも俺を助けてくれてた”相棒”的存在だったから、元気でいて欲しかった。

「みんなの足が悪くなってもイケない。これ以上被害者を出さないためにも他のみんなには黙っておこう。」と話し、速攻でテントに戻った。

帰った途端、荻田さん大激怒。りょうくんはテント内に呼ばれ、荻田さんにぼ○ぼ○にされてた。唖然とする。荻田さんのテントの前に立つしかできない。頭の中真っ白。

「もうやめだ」
「やってられないね、無理だ。こんなやつら連れて行けない。」
「帰れ」

怒号とともに何度も荻田さんのため息がもれる。
その後荻田さんは自分たちを残し、街の方へ消えていった。

その後、柏倉さんを中心に全員集合。いろいろ話した気がする。正直頭真っ白だったからほとんど記憶ない。あつしが正しいこと言ってた気がする。

その後、各自テントに戻って、少し考える時間があった。何がダメだったのか。何故こんなことになってしまったのか。ハッとすることがあった。日本出発前、樋口さん(*2)に言われたことを思い出した。
(*2)樋口さん:南極越冬隊 隊長の経験もある方で、医療班としていろいろ教えてもらうために、日本でいろいろ準備していた時、荻田さんに紹介していただき、話を聞きにいっていた。

「自然の怖さを知らない君達は死ぬよ、隊がまとまらなくて、本来荻田さんが自然に対して注意を向けなきゃいけないのに、隊の事を考えなくならなくちゃならなくなった時。そうならないようにするのが君の役割。」

まさにこれだ、こうならないためにしなきゃダメだったのに、今まで何してたんだ。怪我とか凍傷とかそんなことを気にするよりも、一番注意を払わなくちゃ行けないのが隊をまとめることだった。
失敗して初めて気づいた、こう言うことなんだって。
猛烈に反省し、すぐに荻田さんのテントに向かった。
懺悔するかのように、気持ちを伝えた。正直細かい所までなんて言ったかは覚えていない。ただ、

・隊の雰囲気が浮ついているのを理解しつつも、怒れなかった。彼らなりのリフレッシュ方法だと自分に言い聞かせて、注意・指摘することができなかった。
・樋口さんからのアドバイスを活かせなかった。
・北海道演習の時から、”せごどんって怒らないよね”ってみんなから言われてたが、”怒らない”んじゃなくて”怒れない”だけだった。
・荻田さんに隊のメンバーについて注意関心をむかせてしまった。

と言う内容だったと思う。リーダーを任されつつも、結局何もできていなかた。ただ八方美人に振る舞っていただけだった。

自分の不甲斐なさが、とても悔しかった。

ライフルを借りてくれたり、補給点を急遽もうけてくれたり、隊をなんとかクライドリバーに連れて行こうと必死になってくれていた荻田さん。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

油断したら、荻田さんのテントの中で、号泣しそうだった。

テントを出ると、りょうくんがいた。りょうくんは俺が荻田さんのテント行く前に、自分でもう一回行ってたのだ。まじでその辺りメンタル強い。あれだけ怒られた後に、反省して、もう一回頼み込みにいけるのは勇気いる。

2人で、タバコ吸いながら。最後まで食らいつこうって話した。



〜 北極冒険物語、エピソード1 完 〜


と言ったところでしょうか。
この日のことは”生涯忘れられない出来事TOP5”に常に入ると思う。

明日からはいよいよ後半戦、クライドリバーを目指す物語が始まります。
後半戦は後半戦で気持ちのアップダウンが激しいです。前半戦以上に暴言も増えます。笑  特に後半の後半から大荒れでした。

このペースで行けば、8月完結も視野に入ってくる。どこまで俺が頑張れるか。乞うご期待。



おわり

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