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【北極冒険】Day28:2019.05.04

28日目、この日を入れてあと残り2日となりました。
そして最終章最終話です。明日はいよいよこの旅の終わり。
なのにどうして、こんなにもうまくいかない・・・。
ここまで読んでくださっている皆様には伝わっていると思いますが、当時の僕の振る舞いや体の元気さに反比例する形で、精神衛生状態は最悪でした。

さぁ、ゴール直前の、事件の様子をご覧ください。

歩き出し28日目。起きた瞬間、”今日は海上ナビゲーションだからいけるぞ”と思った。テントを出た瞬間、”終わった”と思った。ホワイトアウトしてる。一番離れているテント(4~5m先)が霞んで見える。「最後まで楽させてくれねぇなぁ、北極・・・。」と思いながらいつものように準備していく。
いざスタート。海に出るまでは少し距離があったので河を下る。足元の感覚と僅かに見える石の高さや配置から位置を把握しながら進んだ。海に出てからしばらくすると、モービルの跡があった。本来左に行くはずだが、モービルの跡の方が歩きやすいだろうと思い、その後に沿って歩いた。その直後の休憩、

「ナビゲーター失格、もういい、地図とコンパス返して」

と取り上げられ、頭が真っ白になった。柏倉さんが「西郷くん取り返せ!」と言ってくれたおかげでハッとし、荻田さんを追いかけた。

「もう一度やらせてください。」
「無理だね、2度目のチャンスはないの、この場所で。もう一回って言っているやつは大体死ぬから。邪魔だ、どけ。」

それでも荻田さんの前に立って道を塞ぐように懇願した。何発か殴られたが、それでもお願いしてなんとか返してもらえた。

モービルの跡を辿ったのが悪いわけじゃない、モービル道と普通の道を歩き比べて、それでもモービルの方を選択していたわけじゃなかった。そして、モービル道がどこまで続いているかわかってないのに跡を辿って、ホワイトアウトしている中、また道に迷ったらどうするのかを判断できていない。要は「ナビゲーションする気が全くない。」のが原因だった。

全く言い返せなかった。

その後は最後まで常に俺が先頭から2番目を歩き、ルート指示やスピードコントロールを行なった。なんとか23.5km進めた。なんとか、キャンプ。

食事後、メンバー全員で荻田さんのテントに入った。最後のナビゲーション確認だ。1つのテントに14人で入り、明日を確認した。

「明日あるけど、どうだった?」
「もちろん楽しかったですが、楽しいだけの日々ではなかったので、一生の糧になったと思います」

たくさん写真は撮ってきた。けど、写真がなくても、忘れないと思う。

もう、「お前、何回同じ失敗するねん」と、ここまで読んでくださった皆さんの心の声が聞こえてきそうです。同じ失敗の振り返りをしても仕方ないので、もう一度読みたい方は過去記事をご覧ください。

冒頭書きましたが、まじでメンタルは後悔寸前でした、これは「怒られるのがやだ」とかいうよりも

「まじで俺ってこんなにできない人間なんだ」

っていう自分の弱さが信じられないほど露呈して、それを受け入れきれていなかったっていうのが大きいです。なので日記はめちゃめちゃ自分を肯定しようとしてます。当時の僕の頭の中は、

隊の雰囲気を悪くしたらあかんし、俺が落ち込んでたらあかん。最後までなんとかやり切ろう。みんな大丈夫やろうか、最後まで歩けるだろうか。ってかこんだけみんなを振り回してしまってるのに、リーダーとかナビゲーターとか言っててみんなどう思ってるんやろ、調子乗んなって思ってんのかな。でもここでやめられへんよな。なんとか最後までやらなあかんな。最後うまいこといくかな。明日またホワイトアウトして、みんなから「どっちいったらいいんですか」って聞かれたらどうしよう、正解を言えるやろか。頼む、最後は晴れてくれ・・・・。

的なことをずっと考えてました。

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正直全く自分に自信が持てていなかった状況でしたが、メンバーのみんなにほんと助けられました。怪我してたり、体力ギリギリだけどなんとかペース合わせてくれるメンバー。ナビゲーションの相談に乗ってくれるメンバー、隊の雰囲気や怪我の状況を教えてくれるメンバー。本当にありがとう。体力ギリギリな中、ほんと、無駄な行動が多くて申し訳なかったです。

さて、今回の事件についての問題は、あいも変わらず「希望的観測」と「判断根拠不十分」です。何回同じ間違いを繰り返すんだろうか。反省しています。

ただ、今回の記事ではその時の僕の心境を書き綴ってみたいと思います。

地図とコンパスと取り上げられたとき。まじで一瞬理解でいなかった。モービル道のことだろうなと思ってたし、そのこと自体には「後方のメンバーの足の状態が悪い、結構辛そう」っていう情報と「明日ゴールするためには距離を稼いでおかないといおけない」という目標があったので、若干目的ルートから逸れてしまうが、スピードの出るモービル跡を歩いた方が最終目的は達成されるだろうという狙いが(一応)あって、前線メンバーにも話していた。なので、「え?」となった。

取り返すときは、半ば俺も意地にはなっていた。

ただ、ここまでやってきて、こんだけ苦しい思いをしてきて、最後の最後に”最終日以降はやらせません”ってのだけはどうしても納得できなかった。

荻田さんに取り上げられた後、30分くらい荻田さんの真後ろで歩いたけど、そん時かなり色々考えてた。あの時多分コンパスと地図を返してくれてなかったら、おそらくその場で動かなかった。最後までやり切れなかったんだったら、これ以上進んでも意味ない、だったら気持ちの切り替えできるまで1人になったとしても進まない方がいい。じゃないとこれでゴールしたら北極に来たことを心底後悔しそうと思ってた。

結果返してもらえて、なんとか最後まで続けることができた。


キャンプになって、ご飯を食べたあと、いつものように明日のためのブリーフィングに行こうと思ってよく考えたら、

「あ、これ今日が最後や」

ってのに気がついた。いつも自分と他1人を連れて行っていたけど、今日どうしようかなって思った答えが、「全員」だった。

全員同じテントに集まっていた、ゴール前日の就寝前のあの瞬間。
おそらくあの時が、「スタートライン」だったと思う。
ここまでは、明日を迎えるための壮大な準備期間。
果てしなく長くて、キツくて、悔しくて、何度も悩んできた。
けど明日が、これまでずっと夢見てきた「本番」
メンバーそれぞれ思うところはあったと思うけど、個人的には、やっとチームとして機能し始めたなと思った瞬間だった。


いよいよ、明日最終日。
明日は少し長めに記事書きます。


今日はこの辺で。


終わり


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