薊
その人の住んでいた場所をたずねて
その人がいた そこはさら地の駐車場
その人がそこで生きていた家の隣の神社のなかを
歩きながら
その人のかけらを探した
30年後の木は大木になっていた
夕暮れの中、その木のねもとで
その人は「神の手」のように
石を拾い上げて これだよ石器だ と言った
家の中にはたくさんの石器とよばれた石がごろごろころがっていた
うれしそうな顔をして ひとつひとつ どう握っていたのか
疑うことなくぼくにおしえてくれた
ぼくは30年間それを信じていた
でも もうこの世にいないあなたに言いたい
その石のまるみが自然によるものなのか人為なのか
その区別がぼくにはわかっていなかった
歩きまわって わかったのは
薊がずっと好きだった理由
それは あなたが薊であったということ
針のような葉先が自然によるものなのか人為なのか
ぼくには わかります