なぜDX会議はすれ違うのか
こんにちは。アカチセ代表の齋藤です。
アカチセでは「アセを、カチに。」をパーパスに、現場の知見・ノウハウを活かした共創型DX支援を行っています。パーパスや取組内容についてはHPをご覧ください。
1. DXプロジェクトで起こりがちな不
今まで数々のDXプロジェクトに携わってきましたが、停滞する原因には共通して「コミュニケーション齟齬」が発生していました。皆さんもこういった経験はありませんか?
(プロジェクト担当者の内心)「提起された議論はもちろん必要。でも、今じゃない。そこは一度進める事が決まったはず…。しかし、賛同を得なければその先がないので、本来やりたかった目的の議論は、次回か…」
と、議論が後ろ倒しになってしまうことも珍しくありません。
一時的な停滞ならまだしも、議論が白熱して終始し、無理に進めれば本来ブレークスルーするポイントの議論ができず継続性の観点で影響がでることもあるかもしれません。
こういった状況に対してよく打たれる手は、「強力なリーダーを採用する」「担当者のコミットをあげるために鼓舞する」「出島を作る」「とりあえずPoCを進める」などなど、議論そのものを減らす取り組みです。
これも一つの解ですが、DXの必要性や知見が広く普及し、既存事業を巻き込んだ推進が必要になった今、「合意を得るためのアプローチ」も試してみることをおすすめします。
本記事では、大~中堅企業・スタートアップとわず複数のDXプロジェクト・プロダクト開発に関わった筆者が、よく利用する「議論整理のマトリックス」を紹介します。
2. 抽象度x時間軸で可視化
結論から言うと、各メンバーの「抽象度×時間軸」の認識がズレていることが一番の問題です。
長期戦略検討をする方は、長期×抽象で、日々現場をリアルタイムに動かしている方は短期×具体で考えます。また、日々のKPI達成を追いかけている方は中期×具体あたりでしょうか。
もちろん抽象度のベクトルは様々ですが、下記のような3x3マトリックスでどの議論がされているか整理することで、誰が、どの議論したがっているか、プロジェクト全体で進んでいない議論は何か、整理することができます。
各セグメントの論点は、例えば
といったもの。
軸のレンジは、下記のように考えると整理がしやすくなります。
あえて、3x3のマトリックスにしているのには理由もあって、プロジェクトを進める上では、議論は長期・短期など二分できるものではなく、本当は連続的なものだからです。ただ、線引しておいた方が関係者が把握しやすいので、、このようなマトリックスを明示して議論します。
では早速、実際にあったいくつかのケース(わかりやすく特定のセグメントの議論が停滞した案件)にあてはめて解説してみましょう。
3. よくあるケースに当てはめてみる
それぞれ詳細に書くと長くなりすぎてしまうので、ここでは状況・打ち手をシンプルにしてお話します。
A. ビジョン不在のケース
「属人的な既存取次業務は将来的に限界がある。DX化して、生産性改善を図ろう。まずは足元のやりやすいところから」といったよくあるケース。
全体像を見ずに具体×短期レイヤーだけで着手するケースでは、、大きな投資ができないことでプロダクトもインパクトも小ぶりになりやすくなります。
実際に、進めるときの負担(運用変更・顧客・ステークホルダーへの説明コスト)や開発費用を見て、「ちょっと待った」となってしまうわけです。
こういった場合、長期×抽象視点でのビジョン設定が重要になります。一度、具体的なオペレーションや実現性は置いておき、コンセプトベースで10年先の業界やありたい姿について議論すれば大きな方向性が見えてきます。
ここでの議論は、時間をかけすぎないこと(チーム全体を巻き込んだ議論は1日で終えるレベル)、ビジョンの外部発表をマストにしないこと(社内外への確約となると自由な議論ができなくなる)で、最初のステップをきること。
アウトプットは少なくともチームメンバーが共通認識を取れる資料としてまとめておきます。もし確証度が高まったら、コンセプトデザインや動画を作って共有するのもよいでしょう。
B. 絵に描いたモチのケース
今度は反対に、大きな絵はあるが、具体的に進められないというケースで考えてみましょう。「10カ年での大きなビジョン(夢のような)が絵として存在しているが、じゃあ具体的にどう進めるか見えていない」という、こちらもよくあるケースです。
この場合、具体×抽象の中間のモデル化が重要です。
実現したいビジョンを、モデル・模式的にポンチ図で表したらどうなるか。例えば、事業モデル・業務フロー図・サービスブループリントなどで表したらどうなるか可視化することを1歩目にします。
これをしようとすると、現状の事業・業務モデルや、参考にできそうな類似サービスのモデル(同市場とは限らない)を把握したくなると思います。有難いことにビジョンが固定されるため、現状把握や類似調査の効率も良くなるでしょう。
C. 実装まであと一歩のケース
「長期のビジョン、戦略、コンセプトモデルは進んでるが、実際のプロダクト開発が見えない。難易度が高い仕様は開発との連携が大変だから後回しにするか」というようなケースです。
この場合、具体レイヤーの議論を進めましょう。
優秀なエンジニアであればあるほど、安定性や拡張性を考えてくれます。なので、短期的な仕様ばかり話すと将来性を考えるうえで不安になりたくさん質問しますし、長期的な仕様ばかり話すとそのすべてに対応する仕様を考えて過度な工数がかかってしまいます。
そのため、短期・中期・長期をざっくりどのようなプロセスでわけて進めていく方針かといったロードマップや、開発仕様上の論点を引き上げプロコン整理し、決断してく必要があります。
社内で慣れた人材がいない場合、開発上流工程が得意な外部のプロダクトマネージャーをチームにいれると良いでしょう。もちろん、ビジョン構築などプロジェクトの初期から関わっているとベストですが、現実的には開発検討フェーズになってジョインする場合が多いと思います。その場合、今まで議論・調査された内容をドキュメントベースで伝えられるとキックオフがスムーズです。(ビジョン、既存フロー、類似サービス、顧客候補の声がまとまってると最高です)
以上、よくある3つのケースを説明しました。企業・プロジェクトによって、滞るところはこれ以外にもありますし、最適な打ち手も異なりますが、状況をマトリックスで整理すると滞っている点がわかりやすくなります。
そして今回は、ウォーターフォール的にこの流れで進めましょうという話ではなく、見取り図としてマトリックスの説明をしました。
一般的には、長期×抽象の議論から始めましょうとされていますが、現実的には各プロジェクトで重要な点・不足している点は異なると思います。
また、一回やったら完了という形ではなく、プロジェクトの中でこの図の各セグメントをぐるぐる回って確証度を高めていく必要があります。
具体⇔抽象、短期⇔長期を、チーム全体で継続的に行き来するために、このマトリックスが役立つと幸いです。
4. 最後に
「なんだよく言われる抽象度と具体の行き来ではないか、長期のビジョン思考をしろという事か」と言われてしまうとその通りなのですが、これが十分に出来ていないケースがほとんどではないでしょうか。
頭ではわかっていても、十分なリソースを割けない、組織の力学的に思うように進められないという事はよくあるかと思います。特に、DXプロジェクトには複数部署の現場・経営/ 事業・プロダクトから外部企業まで多様なメンバーが登場します。
私は、この抽象度と時間軸の行き来とコミュニケーションに、生成AIが活用できると考えています。アカチセでは、「業務フロー」に特化して、抽象度と時間軸の管理が出来るサービス「ゲキカル」を提供しています。
具体も重要、抽象も重要なのはわかっているけど、どう整理し、どうコミュニケーションしよう?という悩みをお抱えの方は気軽にお声がけいただければとおもいます。
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