第五話「各セクションのプロフェッショナル達 その2 パタンナー」
加藤さん、伊藤さん、佐藤さん・・・。
多い苗字だからと言うわけではないが、「鈴木さん」ではなく
「みどりさん」とみんなが呼ぶ。
「みどりさん」はキャリア40年。
「デザイン」をおこすことはできても
「パターン」をきちんとおこすことができる人は少ない、と言われている
パタンナーの世界。
みどりさんは今、新たなチャレンジをまた始めたそう・・・
素顔を拝見
みどりさん:「マスク外すなら言ってくださいよ〜(笑)」
インタビューをしていた私は、みどりさんの素顔を(美しくお化粧はされています!)初めて拝見した。
キッチンアイテムの開発が始まったのは、コロナ禍真っ只中。
みどりさんをはじめとする開発チームとは、何度も顔を合わせていたが、
思えばいつもマスク越し。
写真撮影もするから、ということでこの時初めてマスクを外していただいた。綺麗なみどりさんの大きな目は、くるくると表情を変える。
予想しながら形にする
———みどりさんのセクションは、編立の皆さんとかぶる部分も多いそうですね。
みどりさん:そうなんです。田中さん率いる編立チームは、機械がある1階で仕事をしていますが、私たちパタンナーは2階におります。
サンプルを作り、通った企画を製造するため、実際の「型紙を作る人」です。専門的に言うと「仕様書をおこす」「指示出し」をする役目です。
———「指示出し」ってインパクトのある響きですね・・(笑)
みどりさん:そんなー、怖い人みたいに言わないでくださいよ(笑)
ニットって、編み地によって、例えば「アームの大きさ(腕周り)」が微妙に変わってくるんです。
きっとこの編み地だから、少し詰まるな、広がるな、など予想をしながら設計していくんです。
読みが当たる時は嬉しいですが、これがなかなか難しい・・・
思い通りのものができた時はやっぱり嬉しくて。
これがあるから、次も次もって、どんどん作っていくんでしょうね。
ニット離れを食い止めたい
———みどりさんは今まで、どれくらいの数の型紙を作ってきたんですか?
みどりさん:わかりません・・・数えたことないですし。
でも、最近は仕様書と言われる「レシピ」をちゃんと整理して
後世に残していけるような作業を、日々の合間にやっています。
みどりさん:「智香子さん、ニット着ています?」
———え?着ていますが・・・。
みどりさん:そうですよね。
私たち世代は、日常着といいものを上手に使い分ける、ということがあると思うんですが、私の娘達のような若い世代は、やはり量産のワンシーズン限りで気倒すようなニットに袖を通すことが多いんです。
若い時は、それでもいいんですけど、いいものにも触れて欲しいな、って思うんです。
そのためには、今は柄より、「シルエット」がポイントなので、やっぱりいい形の時代にあったニットを作らなきゃとも思うんです。
キッチンアイテムの開発をする
———サイフクさん初めての試み、「ニットでキッチンアイテムを作る」ということで、私も料理家の目線から一緒に開発させていただきましたが、一番悩んだのが「エプロン」でしたよね。
みどりさん:そうですよね。一番作りたいアイテムでしたが、一番難しかったですね。
———そう。この「エプロン作り」こそ何度も試作品を作っていただきましたが、脇のくりのところをあまり大きくしすぎるとかっこよくなくて、スタイルよく見える角度を探ったり、とにかく丈は長くしたい、という希望を叶えるとエプロンに重さが出てきたり。
みどりさん:でもせっかく智香子さんがこうしたい!というものを提案してくれているんだから、どうにかして形にしたくて、私たちも必死でした。
結果的に糸を贅沢に使って、体をすっぽり包む、だけど機能的、というエプロンが出来上がりましたね。
———本当にみどりのさんの何度も試作する姿に感謝でいっぱいでした。
みどりさん:智香子さん、エプロンの胸元がだれないように、裏に芯を入れたの気づきました?
———え?知らなかったです。
みどりさん:これで柔らかい素材のニットだけど、きちんと感が出ておしゃれに。あとは適度な重さによって「ストンと落ち感」のあるスタイリッシュなエプロンになったんです。
———スリットも綺麗に入って、足捌きがよく縦長のIラインを強調しながらも使い勝手のいいエプロンになったってわけですね。みどりさん、ほんとすごい!
みどりさん:ふふふ。