見出し画像

【一日一捨】 男装ホストクラブの名刺

後輩の間宮君が「一緒に行きましょう! すごく楽しいですから!」と誘ってきて、一度だけ行った。お気に入りの子がいるという。間宮君が言うには、男装ホストクラブはその名の通りキャストさんはみんな男装した女性で、お客さんも基本は女性なのだが、男性客もOKで入店を断られたりはしない。そのあたりは本当のホストクラブとは違うのだそうだ。知らなかったのだけど、たいていのホストクラブは男性客は入店を断られるらしい。間宮君の恋愛対象は女性のはずなので、男装したお気に入りのその子を女性として好きになったんだなと思った。

間宮君の横に座った冬月君は、とても綺麗な顔立ちをしていた。「趣味は死体写真を見ることです」と、冬月君は言った。そういうキャラ設定にしているのか、本当にそうなのかはわからないけど、彼女が無機質な薄暗い部屋のパソコン画面で死体写真を見ている様を想像するとちょっとゾクリとした。そうか、間宮君はこういうタイプが好きなんだ。間宮君、もしかしたら冬月君に殺されたいのかなと、ちょっと思った。僕はそのとき一度きりだったけど、間宮君はその後もお店に通い続け、冬月君にそこそこの金額を貢いだらしい。彼女と付き合えたのかどうか聞く前に間宮君は田舎に帰ってしまって、今は音信不通だ。この前、店の前を通りかかったら男装ホストクラブは閉店して別の店になっていた。捨てる。

いいなと思ったら応援しよう!