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【一日一捨】 ユニクロのTシャツ
映画のエキストラに参加したことがある。
街中で主人公とその敵対するグループとの乱闘が始まり、なんだなんだと集まってきて乱闘を遠巻きに見物する野次馬たちの役どころだ。
早朝に集められた数十人のエキストラは助監督さんの指示でだいたいの立ち位置を決められる。僕は結構いいポジションを獲得した。最前列だ。
それじゃテストいきましょうかということになったとき、
「ちょっと待って。そことそこ…」
カメラマンが待ったをかけた。カメラマンが指さしたひとりは僕だ。もうひとり指を指された奴の方を観ると同じTシャツを着たエキストラがいた。ユニクロのTシャツは街中を歩いていても同じ柄のを着ている奴に出くわすことは普通にある。街中、集まってきた野次馬たちの中にも同じ柄のTシャツを着た人が2人いたとしてもなんら不自然なことではない。実際にその日のエキストラで集まった中にもこうして2人居合わせたわけだし。とはいえ、それが映画の1シーンとなると話は別だ。同じ画面の中に同じTシャツを着たやつが2人いると目立つ。目を引く。それは避けなければならない。結果、せっかくいいポジションを獲得したにもかかわらず、僕の方が最後方にまわされた。Tシャツの柄はもちろん顔さえも映るのかどうかというポジションだった。とても悔しい思いをした。
後に公開された映画はもちろん観に行ったけど、結局そのシーンは使われなかったようで、僕も、もうひとりの奴も、どっちも映ってなかった。捨てる。