【一日一捨】 木のスプーン
匙を投げるという慣用句がある。もうどうにもならない、手の施しようがない、お手上げ状態を表す言葉で、語源は江戸時代の医師が薬の調合に使う匙を「これはもう治らない」と投げる様から来てるという。日常会話ではなかなか使わない言い回しだけど、昔、彼女にリアルに匙を投げられたことがある。
彼女は金属やプラスチックのスプーンが嫌いだった。口に入れたときの感触が苦手なのだとか。どこで買ったかは忘れたけど、この木のスプーンは彼女のお気に入りで、スープ、アイスクリーム、ヨーグルト、うちに来て何か食べるときはよく使っていた。その日はプリンを食べていた。食べながら些細なことから喧嘩になり、ヒートアップした彼女はこの木のスプーンを僕に投げつけた。木なのでそんなに痛くはない。金属じゃなくてよかった。捨てる。