売買の「売」と「買」の間に起きている事
お店に行って、品物を手にしてお金を払う。
日々普通にしている事ですね。
では、品物を手にした時からお金を払う時までの間に起きている事はなんでしょうか?
いや、スーパーマーケットやコンビニでレジカゴに入れただけで会計が済ませていない品物は、元の棚に戻せば、自分が買った事にはなっていないはず・・・
確かにその通りです。
では、もっと「時」を限定してみましょう。
品物がレジに持ちこまれ、登録され、「●●円です」と代金が示され、代金がカウンターに置かれたけれども、まだ店員さんが受け取っていない瞬間に起きている事はなんでしょうか?
あるいは店員さんが受け取ったけれども、まだレシートが発行されていない状態の時にはどんな事が起こっているでしょうか?
レジに持ち込まれた商品が、代金が支払われた後、買った人に引き渡されていない状態の時には起きている事はなんでしょうか?
仮に、買い手の人がお金を払っていないのに「払った」と主張したらどうなるでしょうか?
逆に、売り手がお金を貰ったのに「貰っていない」と言い張ったらどうなるでしょうか?
防犯カメラを見ればいい?、レジに登録されているか調べればいい?それが証拠になるはずだ
ですって?
売り手や買い手の身体に遮られて、現金をやり取りする手元がカメラに写っていなかったらどうでしょう?
レジに登録する前にカウンターに現金が置かれていたらどうでしょうか?
お金や品物のやり取りとレジ登録には「時間差」が生じるので、登録されているかどうかは絶対的な証拠にはなりません。
日々繰り返されている何気ない光景ですが、実は、お金と品物が引き換えられるその「時」に起きている事は非常に難しい問題を含む現象のように思われます。
マルセル・モースの贈与論は、ローマ法における売買の時に起きている事をこう述べています。
「最初の保持者は自分の所有物を示し、厳かにそれを手渡し、こうして受領者を買う」
品物が買い手の手元にあるが、代金が支払われていない状態の時、買い手は売り手に買われていると言うのです。
ずいぶん奇妙な考えだと思いますか?
次回以降、この奇妙な考えを参照しながら、レジ精算の刹那に起きている事について考えてみたいと思います。
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