森林・林業基本法にみる「林業の健全な発展」の文言

鳥獣保護管理法の制定目的にある「生活環境」とは何を意味しているのかを考えているうちに、同じく同法の制定目的にある「農林水産業の健全な発展」と言う文言が、他の法律でどのように使われているかを見ていく事になってしまっています。

今回は、森林・林業基本法です。

森林・林業基本法第一条

この法律は、森林及び林業に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。

第一条に記された「制定目的」の中には、「国民経済の健全な発展」と言う文言はありますが、「農林水産業の健全な発展」と言う言葉は出てきません。

そう言えば、「国民経済の健全な発展」と言う文言は、食料・農業・農村基本法の制定目的にも出てくると言う点が、森林・林業基本法と共通しています。

「国民経済の健全な発展」と言う言葉が法律の中でどう扱われているか、見ていくのも興味深いですが、

とりあえず、「農林水産業の健全な発展」と言う文言の使われ方に絞って調べていくことを継続したいと思います。

森林・林業基本法第三条

林業については、森林の有する多面的機能の発揮に重要な役割を果たしていることにかんがみ、林業の担い手が確保されるとともに、その生産性の向上が促進され、望ましい林業構造が確立されることにより、その持続的かつ健全な発展が図られなければならない。
2 林業の持続的かつ健全な発展に当たつては、林産物の適切な供給及び利用の確保が重要であることにかんがみ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即して林産物が供給されるとともに、森林及び林業に関する国民の理解を深めつつ、林産物の利用の促進が図られなければならない。

森林・林業基本法の中では、「林業の健全な発展」と言う言葉は、第一条の制定目的にはなく、

第三条の林業に関する施策方針が語られる部分で出てきています。

つまり、

国民経済の健全な発展のために、森林・林業に関する施策を総合的に進める

⇒林業については、健全な発展が図られなければならない

と言う論理で、「林業の健全な発展」と言う文言が出てきているわけです。

そして、第三条第二項で、林業の健全な発展のためには、林産物の利用の促進が図られなければならないと言う方針が導きだされています。

鳥獣保護管理法の場合、自然環境と言うものがあり、それは国民生活なり人類の福祉なり、農林業以外の分野も含む「全体」的な事柄に関わっている、

しかし、農林業にも関わる問題として鳥獣の問題があると言うように、

農林業とそれ以外の分野の接点の問題に関連して「農林業の健全な発展」と言う言葉が使われています。

森林・林業基本法においても、森林と言うものがあり、国民生活の安定や国民経済の健全な発展と言う「全体的な事柄」に、森林も林業も関わっているけれども、

林業は林業として健全な発展が図られなければならない

と言うように、林業とそれ以外の分野の接点に関連して「林業の健全な発展」と言う言葉が使われています。

「農林業の健全な発展」と言う言葉は、各種法律の中で、農林業とそれ以外の分野の接点に関連して登場してきている場合が多いのではないでしょうか?

引き続き、他の例を見ていきたいと思います。



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