「農薬」について、菜園起業大学受講生に教える
見沼菜園クラブでは、なるべく農薬は使わないようにしています。
しかし、7-9月頃は、使わなければならないこともあります。
特に「アブラナ科」の葉物類は、虫にやられやすく、芽が出た途端に食い尽くされます。
IBM(Integrated Biodivecity Management 総合的生物多様性管理)の考え方では、「経済的に許容できるかぎり、様々な生物がいる状態を保全する」としています。
しかし、芽が出た途端に食い尽くされるのは、どう見ても経済的に許容できるものではありません。
たまたま、イベントで、栽培期間中農薬不使用と言うラベルを張って野菜を売っていた人を見かけ、実際のところをお伺いしました。
お返事は、
1)種まき前に土壌消毒をして、虫が土中にいないようにしている
2)そもそも、葉物をあまり育てていない
でした。
やはり、夏場にアブラナ科の葉物類を農薬なしに育てるのは、無理かもしれないと思いました。
特に昨年、今年と、超猛暑で虫の発生が多いため、夏場は農薬を使うことにしました。
先日、菜園起業大学の受講生にも、農薬について説明しましたが、なかなか一回で覚えきれないとのこと、
そこで、今回は「実地」で説明することにしました。
今回は、顆粒状のものを種まき時に散布する方式です。
(今まで試してみた限りでは、この方法だと、発芽後、生長し、葉が硬くなって虫に食べられにくくなるまで、比較的、虫に食われずに生長してくれるようです。)
まず、農薬裏の表示を見せて、
「この農薬はブロッコリーにつかっていいですか?」
と聞きました。
表示の中に「ブロッコリー」と書かれているのを見た受講生は、「使っていいです」とお返事。
「そうですね。では、小松菜には使っていいでしょうか?」
受講生、まごついています。
「どこにも小松菜と書かれていませんね。農薬によっては、非結球性アブラナ科葉物とか、葉物類とかと書かれている場合もあります。
葉物の中に小松菜も含まれるので、そういう場合は、小松菜に使っても大丈夫ですが、今回は、どこにも書かれていませんね。
だから、この農薬は小松菜に使ってはいけません。」
と説明します。
それから、苗床にブロッコリーの種まきをして、いよいよ農薬をまいてもらいます。
「表示には、10aあたり3-6kgと書かれていますね。この苗床は、だいたい3平米です。10a=1000平米ですから、1平米あたり3-6gまでは撒いても良いとすると、3平米だと9-18gですね。」
「一応、1g=1ccと考えて、計量スプーンで計って、5ccのスプーン3杯ぐらいをこの苗床全体に撒いて下さい。」
1杯目は、こちらでお手本を示し、2杯目、3杯目を受講生の人に撒いてもらいます。
ちょっとムラが出来たので、受講生の人が「この農薬は顆粒状でスカスカのところが出来るから、計量スプーン5ccで5gより少ないんじゃ?」と言い出しました。
ムラをなくすためにもっと撒きたいようです。
「それはそうかもしれないけれども、そういう風に言いだしたら、キリがないから駄目」
と言って、そこで打ち止め。
苗床に水を上げ、防虫ネットも張って、作業終了です。
実は、種まき時に、地面にまき穴をつけて、種を入れ、そのまき穴に丁寧に水を入れ、それから、レーキで均して、まき穴を埋めるような手順で作業しています。
農薬を撒いたのは、まき穴に水をいれる前。
「こういう風にすると、顆粒状のものから成分が水で溶け出し始め、土に混ざっていく。毎回、作業のどの段階で農薬を撒くか、手順を考えることも必要」
「農薬の表示には、例えば、10aあたり3-6gとしか書いていない。今回は、苗床に計量スプーンを使って撒いたけれども、自分が野菜を育てる場合、どういう風にやったら、その現場で表示どおりの撒き方が出来るか、具体的作業に落とし込むことが必要」
と説明していきます。
そして、
「ところでブロッコリーの表示のところ、何回撒いていいかって書いてありますか?」
と聞きました。
「3回です」とのお返事。
「そうですね、だから、例えば、今、種まき時にまいたけれども、植え替え時にもう一度撒いてもいいわけですね。
そうすれば、かなり虫に食われずに生長すると思います。
今回のように苗床に種まきして植え替えるのと、ポット撒きして、ポットから根鉢を出して、植え替えるのでは作業も違ってくる。
今回のは、苗床に撒くと言うことを前提に、農薬を選びました」
「液体の農薬だと、何倍に薄めると言う表示があることもある。
また、収穫何日前までなら撒いてよいと言う表示もある。
そういう事をよく読んで使いましょう」
一つ一つ、作業しながら、段階を追って説明したので、受講生の人も、理解してくれたようです。
現在、農薬は、かなり安全性の審査が厳しくなっており、「基準」を守って使えば、危険と言うことはありません。
そして、その「基準」は、「どんな野菜に」、「どのくらい(面積あたりとか、何倍に希釈するとか)、「いつ(収穫何日前、収穫まで何回)」と言ったことが厳密に決められています。
実際の農作業の中で、こうした基準をきちんと守って農薬を使うための解説を今回は受講生の方にしました。
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