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「根っこのないホウレンソウ」は意外と売れるかもしれない
畑に植えられている野菜は、一株全部が「きれいな葉」ではありません。
そもそも、葉は新葉として出た後、生長し、成熟葉になります。その後は、老化葉になって枯れていきます。他方で次々と新葉が出て、成熟葉になっていきます。
いわゆる葉物野菜は、成熟葉が一定の枚数になっているものを収穫して出荷しています。
出荷時に、黄色くなった老化葉がついていると、店頭でみる消費者は「黄色い葉がついている」=「不良品」と判断する可能性があるため、通常は、老化葉を取り除き、きれいで形の揃った成熟葉だけの状態にしています。
このように、畑に「あるがまま」の野菜を「商品」として店頭に陳列できるものにする作業を「調整作業」と言います。
ホウレンソウの場合、労働の85%が調整作業・・・つまり、老化葉を取り除いてきれいで形の揃った成熟葉だけにする作業が、全労働時間のほとんどを占めているとも言われています。
「種をまいて育てる」こと自体にはあまり時間がかかっていないとも言えます。
さて、春になり気温が上がってくると昨冬まきのホウレンソウは「トウ立ち」を始めます。「トウ立ち」は花芽がつくことです。
花芽がつく直前ぐらいから、茎が伸び始め、茎の下側から根っこにかけては硬くなっていきます。
硬い部分は食べられません。こうなると、一株丸ごと抜いた状態では、「売り物」にならなくなります。
実は、茎の上部とそこについている葉だけをカットして「根っこのないホウレンソウ」として、この間、販売イベントに持っていったところ、意外とお客さんが買ってくれました。
中には「柔らかくて美味しそう」と言う人もいました。
普通に「根っこがついているホウレンソウ(つまり、まだトウ立ちをしていないので、根っこの方まで柔らかいもの)」もあり、
ホウレンソウが欲しいと言うお客さんに「根っこがついているものとついていないもののどちらがいいですか?」と聞いたら、「ついていないもの」とお返事も返ってきました。
ホウレンソウは中央アジア原産で、江戸時代に日本に輸入された野菜です。当初は「毒だから食べるな」と言う声もあったそうです。やがて、「ホウレンソウのおひたし」が生まれてきました。
今では、「ホウレンソウのおひたし」は和食の定番のようになっています。
ただ、南アジアからヨーロッパにかけてのホウレンソウの食べ方をみると、カレーに入れたり、ピザに乗せたり、ベーコンと一緒に炒めたり・・・と、「おひたし」的に食べない方が主流です。
そして、今の日本の食卓は、世界中の料理の影響を受けています。
ホウレンソウの赤い根っこは、「おひたし」として食べる場合には美味しいですし、郷愁をもって受け止める人もいるようです。
ただ、カレー、ピザ、ベーコン炒めなどで食べる場合、「根っこ」はマストアイテムではないように思います。
トウ立ちが始まりかけた頃のホウレンソウの植物体上部の「柔らかい茎葉」は、むしろ葉が大きく厚くなっていて、ベーコン炒めなどに向くような感じがします。
「根っこのないホウレンソウ」を「柔らかくて美味しそう」と受け止めたお客さんの声はこうした食生活の実態を反映しているように思いました。
「根っこがついていないホウレンソウ」は意外とアリだと思うわけです。
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本日は雨の予想も出ていましたが晴れるようです。2週間予報は例年より最高気温が高い状態が続くとしています。
ただ、4月に入り、20℃の状態から25℃の状態になっていくと言うわけではなく、20℃近辺の状態が続くとの見通しです。
やはり、4月中下旬頃、「平年並み」に近い状態になるのではと思います。