ママをやめてもいいですか
コロナ騒動の最中だけど、当日ネットで座席を確認するとほぼ貸し切り状態だったため思い切って、新宿シネマカリテへ。
強烈なタイトルだけど、見終えて印象に残ったのは、子育てってこんなに大変!!というものではなく、むしろ「どんなに大変でも、ママをやめたくない」「負のループを断ち切って、子どもに幸せになってほしい」と願うお母さんたちの切実な姿。
産後うつやパートナーとの協力関係、気持ちのすれ違い、実母の死、葛藤、孤独、、
それぞれにつらさを抱えながらも、懸命に子どもと向き合うお母さんたちに、どん底だった時の自分を重ねて、終始涙が止まらなかった。
子どもたちが7歳、4歳になって
ママじゃなきゃダメ
家事が一向に片付かない
自分の時間が全くない
みたいな切羽詰まった困り感からはだいぶ解放され、ママをやめたいとは思わなくなった。
本当に大変だったのは、上の子が3歳で下の子が生まれ、退院後の手伝いが一切なくワンオペ2人育児が始まった頃。
1人目の産後、極度のプレッシャーから神経質(今思えば産後鬱)になり、母親への長年の恨みが噴出して抑えられなくなった。
その結果、夫、義理の両親、ママ友、保育園、人との関わりはあっても誰にも心を開けず、どんどん孤独になった。
そんな中授かった2人目。
パートは育休をもらえない職場だったため退職し、上の子も保育園を退園することに。
本来ならパートでも育休をもらったり、保育園でも産前産後二か月は預かってもらえるのだが、保育園の園長から、家にいるなら見れるじゃない、早めに次の人に席を譲ってくださいと退園を促され、やめざるを得なかった。
1人目の時は、赤ちゃんと一緒に休んだり、自分の食事はワタミの宅食などで済ませられたが、さすがに2人目の産後は、上の子の食事、外遊びなど1人では対応できない。
市の子ども家庭センターに相談し、産後は数日、家事と沐浴などを請け負ってくれるヘルパーさんや産後ドゥーラの方に来てもらい、とても助けられた。
NPOの運営する定期一時保育に上の子を預かってもらい、同年齢の子どもたちと外遊びの機会も持つことができたのも幸運だった。
頼れる制度を身近に見つけられたことで、どうにかこうにか乗り越えられた。
それでも多くのお母さんは家族に支えてもらえるのに私はお金を払ってサービスを受けるしかない、という圧倒的な違い、不公平さに、ただただ絶望していた。
1か月検診におばあちゃんと一緒に来ているお母さんを見ると羨ましくて、嫉妬して、いつも「私にはなんでまともなお母さんがいないのだろう」とそればかり考え、心の中で泣いていた。
里帰りしてもうまくいく母娘ばかりではないし、シングルでもっと過酷な状況の中、子育てをしている人もいるということが今になれば分かるけど、当時は視野が極端に狭く「私だけが不幸、誰も分かってくれない」と思っていた。
それから紆余曲折を経て、少しずつ少しずつ自分を取り戻し、『夜間もやってる保育園』という映画を見たことをきっかけに保育の仕事に興味を持つようになった。
そして保育士を養成する職業訓練校に入ることができ、社会的養護、児童家庭福祉、家庭支援論、社会福祉などなど、さまざまな授業で、多角的に虐待、ネグレクト、親の精神疾患、あらゆる家庭の課題、構造、背景について学んでいくことで、時間をかけて自分の傷も癒された。
仲間には同じように、自分の生い立ちに悲しい思い出のある人が少なくない。
私と子どもたちは、当時たくさんの頼れる他人に出会えたことで生き延びられた。
私も誰かにとって、微力であっても、頼れる他人になれたらと考えている。
ママをやめてもいいですかの中では、解決策として夫婦で協力することがメインで描かれていたけど、他人を頼る、制度を活用するという選択肢も描かれていたらもっと良かったのではないかと思う。
観終わった後は、東京で一番好きな店、ベルクに寄って帰路へ。いつ行っても心が満たされる美味しさ。ベルクの食べ物にはオージャスが詰まってる!