アロマクエスト|(14)|旅立-6
あれは、いつのことだっただろう。
香りがこの世界からなくなったのは、まだ小さい頃だった。
周囲の大人が、話しているのを聞いて知ったのだと思う。
そのことが、カオルには不思議だった。
なぜなら自分は、まだ香りを感じることができたからだ。
しかし、他人に話す気にはなれなかった。
自分だけがみんなと違う。
そう思われるのが、なんだか怖かったのだ。
だから黙っていた。
しかし今、目の前にいるメンタには、素直に答える気になった。
「うん、わかるよ。」
それを聞くと、メンタは安心したようだ。
「よかった…。」
そして次の瞬間、少し険しい表情になった。
「じゃあ、ボクがここに来た目的を話すよ。」
メンタは話を続ける。
「ボクの目的は、キミのように香りを感じる能力をもつ人間を探して、使命を伝えることさ。」
カオルは、思わず質問した。
「使命って?」
「ボクたちアロマルと一緒に、香りをこの世界に取り戻すんだ。」
「この世界に、香りを取り戻す?」
カオルは、その言葉を繰り返すと、さらに質問した。
「どうやって?」
「この世界から香りを奪った、魔王オーダレスを倒すのさ。」
メンタが答える。
「ヤツを倒さない限り、世界は救われない。」
「魔王オーダレスは、どこにいるの?」
「はっきりとは、わからない。
でも、魔王オーダレスには手下がいる。
その手下を倒して、情報をつかむしかないんだ。
そのために、力を貸してほしい。」
「ボクに、そんなことができるのかな。」
「さっきだって、ろくに説明もしないのにスウェイング・シャドウを倒したじゃないか。キミならできるよ。」
(つづく)
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