ソウゾウハンザイクラブ『サツジン』
【声劇台本】
比率:♂0:♀3
所要時間:40分
【まえおき】
この作品は女子高生が犯罪計画を想像し、
改めて犯罪って良くないんだねって実感する会話劇です。
演者様の性別不問です。
配信なども自由!
このような作品をお読みいただけただけで嬉しいです♬
【登場人物】
ユマ ♀
読書クラブの女子高校生。
口を開くと残念な超絶美少女。
突飛で大胆な性格。
ミヤ ♀
読書クラブの女子高校生。
真面目で成績優秀な天才少女。
冷静で面倒見の良い性格。
サナ ♀
読書クラブの女子高校生。
運動神経抜群な天然少女。
アホの娘。
ソウゾウハンザイクラブ『サツジン』
ユマ:
っだぁーーーー!!もうやってらんないっ!!
ミヤ:
っ!?
サナ:
っ!!
ミヤ:
びっくりしたぁ……やぁっと来たと思ったら、何?どうしたの?
サナ:
ユマちゃんっ!おはよぉっ!
ユマ:
どうしたもこうしたもないよっ!なんであたしたちがあんな部屋に移動しなきゃなんないのっ!?
ミヤ:
なんだ、そのことか……。
サナ:
ユマちゃんっ!おはよぉっ!
ユマ:
うん、おはよ!サナ!
ユマ:
って、どぉしてミヤはそんな平気な顔してんの!?
ミヤ:
それは……まぁ、今更言っても仕方ないし。
ミヤ:
それと、サナ、もう放課後だからね?
サナ:
あ、そっか。じゃぁ、ユマちゃん、おやすみなさい!
ユマ:
うん、おやすみ!サナ!
ユマ:
こっちがそうやって大人しく従っちゃうから、あいつらが付けあがるんでしょ!?
ミヤ:
サナ、それだともう寝ることになっちゃうよ?
ミヤ:
あいつらって……。
サナ:
あ、そっか。じゃぁじゃぁ……。
ミヤ:
従うも何も、元々そういう条件だったんだから、文句は言えないでしょ?
サナ:
さよなら!ユマちゃんっ!
ユマ:
うん、さよなら!サナ!帰らないけどねっ!
ユマ:
なんでなんでなんで?一億歩譲って移動するのは仕方ないにしても、文句は言ってもいいでしょ!?
ミヤ:
いや、条件達成できなかったんだから、文句は言えないよ。
サナ:
んにゃ~?サナ、また間違った?えっと……じゃぁじゃぁ……。
ミヤ:
サナ、挨拶はもういいから、会話に混ざろっか。それに、ユマとは朝からほとんどずっと一緒にいるでしょ。
サナ:
うん!わかった!!
ミヤ:
一年生が入学したら、必ず部員を増やす。出来なければ、部室は明け渡す。
ミヤ:
これは、この部活が発足した時からの条件だったんだから。
ミヤ:
出来なかった以上、部室を移動するのは当然のこと!自分たちの責任なんだから。
ユマ:
あーあー!そんなこと言って何も言わずに大人しく従ってたらさ、その内、もっと無理難題ふっかけられるよ?
サナ:
ムリナンダイ?
ユマ:
そぉ!無理難題!いついつまでに部員集められなければ廃部とか!部員が増えなきゃ図書委員と合併とか!
サナ:
そっ、それは!ムリナンダイ!
ミヤ:
まぁ、それはあるかもしれないね……。
ユマ:
でしょ!?そして、それすらも黙って受け入れたら……。
サナ:
う、受け入れたら?
ユマ:
部員集めのために各中学を回って入学志願者を募集して来いとか!海外にとんで留学生を連れて来いとか!
サナ:
えーーーーー!?
ミヤ:
いや、それは流石にないっ!
ユマ:
どうして無いっって言いきれるのさ!?
ミヤ:
いや、常識的に考えて……
ユマ:
常識ってナニ!?
サナ:
ナニ!?美味しいの??
ミヤ:
常識は……常識だよ。
ユマ:
そんなもん一回試しにやらせてみて成果が出たら、もうそれは常識になっちゃうでしょーが!?
ミヤ:
うぅぅ。ユマは時々そういうカリスマっぽいキラーワード言うんだよなぁ。
サナ:
うん!ユマちゃんのこーゆーとこサナ好き!
ユマ:
えっへん!
ミヤ:
いや、そんなドヤらないでよ……まぁ、この三人なら度合いの差はあれど、ないこともないか。
ミヤ:
でも、そこまでの無理難題をふっかけたら先生たちのほうがリスク高いでしょ。
ミヤ:
それに、流石にそこまで要求が過度なら、条件提示された時点で断るって……。
ユマ:
あたしは受ける!
ミヤ:
いや、受けないでよ。
サナ:
サナ、中学なら行ってもいいけど、英語喋れないから、海外は嫌だなー
ユマ:
あたしも喋れない!でも、戦わずに負けたくないから受けて立つ!
ミヤ:
いやいや、戦わないでよ先生と
ユマ:
何言ってるの、ミヤ?人生って戦いの連続だよ?
ミヤ:
いやいやいや、勝負所間違えてるから
サナ:
人生は戦い……わかった!サナもユマちゃんと一緒に戦う!
ユマ:
おう!サナ大尉よくぞ志願してくれた!共に戦おう!
サナ:
らじゃーであります!
ユマ:
で、ミヤはどうする?
ミヤ:
そ、そりゃぁ、あまりにもな話だったら、抗議くらいするけどさ……。
ユマ:
さっすが、ミヤ少佐!
ミヤ:
あ、わたし少佐なんだ……。
ユマ:
うん!でもってあたしは大佐ね!
ミヤ:
何?ミリタリー小説でも読んだの?
ユマ:
ううん。ファンタジー。帝国と魔法使いの国が戦う的なやつ。
ミヤ:
そっちか。
ユマ:
まぁ……とにかく!あたしは然るべき決戦に備えて、文句を言うという方法で先生に牽制をしてきたわけです!
サナ:
おおー、ユマちゃんカッコイイ!
ユマ:
だろぉ?
ミヤ:
なるほど、それで放課後になった途端に教室からいなくなってたってわけね。
ユマ:
そーゆーこと!
ミヤ:
それで?結果は??
ユマ:
…………
サナ:
勝ったんだね!
ミヤ:
……絶対、負けた時のリアクションじゃん。
ユマ:
……い、いいのぉ!今日はあくまで今後要求が過激化しないための牽制なんだからぁ。
ミヤ:
んー、果たしてそれが牽制になっているのやら……。
ユマ:
ちっちっちっ!ミヤくん、解ってないなぁ日々の積み重ねこそが大切なのだよ。
サナ:
そーそー、パイの積み重ねこそがミルフィーユになるのだよ。
ミヤ:
うーん、台詞だけは言いこといってるんだけどなぁ。
ユマ:
え?ミルフィーユ?
ミヤ:
うん、ミルフィーユは置いておこう?
サナ:
え?どこに?
ミヤ:
うん、ミルフィーユの話は忘れよう?
ミヤ:
そうじゃなくてさ……はぁぁ。
ミヤ:
ねぇ、ユマ?日々の積み重ねが大切という言葉は、積み重ねている人が言うことだよ?
ユマ:
そうだねぇ。だからこそあたしは部長として皆の模範となるべくこうして動いているのだ!
サナ:
すごーい!よっ!大佐部長!
ミヤ:
うん、サナ、階級と役職を並べない。もう誰を指してるのか判んなくなっちゃってるから。
ミヤ:
で、ユマ……積み重ねとか、模範とか言ってるけど、先生んとこに抗議しに行ったの今日が初めてだよね?
ユマ:
そうだけど?
ミヤ:
いやいや、それじゃぁ積み重なってないのよ。しかも、いざ部室を明け渡す約束のその日にってなるとねぇ……。
ユマ:
なると?
ミヤ:
部員からしたら、模範どころか、片付けが嫌で逃げ出したんじゃないかって勘違いされちゃうんじゃない?
ユマ:
マジか!?
ミヤ:
大丈夫。わたし達はユマがそんなことする子じゃないって解ってるから。
ユマ:
良かったー。
サナ:
うん!それにユマちゃんが突然フラっといなくなるのはいつものことだしね!
ミヤ:
そうそう、もう永い付き合いだからね、ユマの突発的な行動には慣れてる。
ユマ:
んーー?なぁんかけなされてる気もするけど、二人に信用されてるってことだよね!
ミヤ:
まぁ、そうだね。だけど他の人からは疑われるかもしれないから、今度からは一言云ってからにしてね。
ユマ:
はぁーい!
ミヤ:
よしよし。ところでさ……。
ユマ:
ん?
ミヤ:
さっきから気になってたんだけど……その箱何?
ユマ:
え?カステラ。
サナ:
おぅっ!かすてぇら!?
ユマ:
なんか、文句言おうと思って顧問のとこ行ったら、こっちが何か言う前に「がんばれよ」って渡された。
ミヤ:
え?なんで、文句言いに行って、カステラもらってんの?しかも箱で!
ユマ:
うん、今日部室の引越しするって知ってたから、差し入れにって買っておいてくれたんだって。
ユマ:
だから、カステラには緑茶かなぁと思って、三人分お茶買ってきた。
サナ:
ありがとぉ!ユマちゃん!カステラ一番、緑茶は二番だね!
ミヤ:
え?文句は?牽制は?
ユマ:
言ってないよ?さすがに言えないでしょ、差し入れ貰った手前。
ミヤ:
あ、あー、そう……えーっと、その……ありがとう。
ミヤ:
とにかくさ!部室の移動に関してはもう決まったことなんだしさ、とりあえず片付け進めよう?
サナ:
え?戦わないの……?
ミヤ:
うん、戦わない。って、なんでサナちょっとがっかりしてるの??
ミヤ:
別にさ、部室を明け渡すってだけで、移動先もちゃんとあるんだし、わたしはいいと思うよ。
サナ:
そうだね!サナもユマちゃんとミヤちゃんが一緒ならそれでいい!
ミヤ:
そうそう。それよりも片付けしないと今日中に終わらなくなっちゃうよ?
ユマ:
え?休憩は?
ミヤ:
ユマはまだ何もしてないでしょ?わたしとサナは粗方私物まとめ終わったけど……
ユマ:
え?おやつタイムは?
ミヤ:
あーとーで!ユマ、一番私物多いんだから。
ユマ:
ううぅぅ、二人とも手伝ってぇ~。
ミヤ:
だーめ。わたしとサナでソファとかの大きいの運びだすからさ、ユマは自分の物をまとめてください。
ユマ:
うぅぅ、それはそれでありがとぉ~
ミヤ:
よしっ!じゃぁ、サナ。まずは、テーブルとソファを順番に運ぼう?
サナ:
あいあいさー!
ユマ:
階段気をつけてねぇ~。
ミヤ:
どう?終わった?
ユマ:
あとちょっとぉ……ねぇねぇ、この握力測るやつってまだ使うかな?
ミヤ:
使わないんじゃないかな?
ユマ:
そっか……じゃぁ、ストップウォッチと笛は?
ミヤ:
それも使わないと思うけど……。
ミヤ:
てゆーかうち『読書クラブ』だよね?さっきから文化部とは思えない物ばっかりなんだけど・・・・・・。
ユマ:
うん、数日前までは必要ないものだったよね。
ミヤ:
いやぁ、数日前も必要だったかなぁ~?
ユマ:
必要だったでしょ?本入部のための体力テストのために。
ミヤ:
そもそも、その仮入部希望者を振るいにかける体力テスト自体必要なかった気がするんだけどね。
ユマ:
何言ってんの、ミヤ?必要だよ体力!まず読書を長時間続けるために……。
サナ:
はいっ!持久力が必要です!
ユマ:
サナ、正解!そしてページをめくるためのぉ……。
サナ:
強靭な握力!
ユマ:
そう!そしてそして姿勢維持を続けるためのぉ……これは二つだよぉ?解るかなぁ?
サナ:
はいっはいっ!柔軟性と筋力!
ユマ:
ぴんぽんぴんぽーん!大正解!
ミヤ:
だからといって、「校庭20周」「腕立て腹筋背筋100回」はいらないんじゃないかなぁ。
ミヤ:
大方ユマ目当てできた男の子たちを振るいにかけたかったんだろうけど……。
ユマ:
うっ……バレておったか……。
サナ:
……ねぇねぇ?ちょっと思ったんだけど……。
ユマ:
何、サナ?
サナ:
仮入部とは言え、10人も来たんだからさ、一旦でもいいから入部だけしてもらえば良かったんぢゃない?
ユマ:
……あ
ミヤ:
……あ
ユマ:
っとゆーわけで!皆様のご協力の甲斐あって、無事部室の移動が終わりました!
サナ:
おおぉー!ぱちぱちぱち!
ユマ:
過ぎたことをくよくよ言っていても仕方がない!なので、おやつにしよう!
サナ:
カステラにしよう!
ミヤ:
はいはい……1、2……全部で10切れあるね。一人3切れ食べられるよ!
サナ:
やったぁ!
ユマ:
はい、二人の分のお茶ー
ミヤ:
うん、ありがと
もぐもぐタイム
ミヤ:
……うん、そこまで悪くないんじゃない?
サナ:
うん!美味しいね!
ユマ:
たまには和菓子も悪くないね
ミヤ:
いや、カステラもだけど、部室のこと。階段下の元倉庫だっていうからもっと狭っ苦しいかと思ったけど……
サナ:
そうだね!三人ならそこまで窮屈じゃないね!今までも結局ソファに集まってたし
ユマ:
…………
ミヤ:
うん。窓がない分ちょっと薄暗いけど……
サナ:
サナ、壁ぶち抜いて窓作ろうか?
ミヤ:
やめよう?破壊からは何も生まれない
ユマ:
…………
ミヤ:
って……どうしたの、ユマ?さっきからじーっとカステラ見て黙っちゃって……
サナ:
お腹いっぱい?サナ、代わりに食べてあげようか?
ユマ:
……もう、いっそのこと殺してしまうか……
サナ:
えっ!?
ミヤ:
はぁっ!?
サナ:
ユマちゃん、ごめん~。カステラ食べないから、殺さないで~!
ユマ:
ん?サナのことじゃないよ?まぁ、カステラはあげないけど
サナ:
え?じゃぁ誰のこと?
ユマ:
教頭だよ。教頭。顧問に文句を言ったところであの人は所詮伝書鳩。諸悪の根源は教頭だよなぁって思って
ミヤ:
はぁぁ、また何を言い出すのかと思ったら……
ユマ:
だってさぁ、よく考えたら部員の数がどうとかって条件出してきたのって教頭じゃん?
ミヤ:
さっき「過ぎたことをくよくよ言っていても仕方がない」って言ってなかった?
ユマ:
言った!だからくよくよ言わない!ぐいぐい言う!
ミヤ:
ぐいぐいって……だからってそれで殺すって飛躍し過ぎでしょ?
ユマ:
ふっふっふ……しかしながら、わたくしこのカステラを見ていて思いついてしまったのだよ
サナ:
何を!?
ユマ:
完全犯罪計画をっ!!
サナ:
えええええ!?
ミヤ:
完全犯罪計画ぅ?
サナ:
あ、あ、あの小説やドラマでしか聞かない……
ユマ:
そう!それ!
ミヤ:
でも、結局探偵役の人に解かれちゃうっていうね
ユマ:
まぁまぁ、いいから聞きなさいって……
サナ:
ふむふむ。
ユマ:
まず、カステラをぎゅーってします。
サナ:
なるほど!ぎゅーって!
ミヤ:
え?なんの話?
ユマ:
完全犯罪の話
ミヤ:
え?どこが?
ユマ:
いいからいいから
ユマ:
話を戻します。……カステラをぎゅーってしてうすーくうすくしていきます!
サナ:
うすーくうすく……
ミヤ:
サナ、やろうとしないよ。食べ物で遊ばない~。
サナ:
はいっ!どのくらい薄くですか?
ユマ:
それはもう鬼のように薄くです
サナ:
お、鬼のようにっ!?
ユマ:
そしてそれをミルフィーユのように重ねていきます。何層も何層もです!
サナ:
カステラでミルフィーユを!?
ユマ:
そうして出来上がったそれを対象に食べさせて、そこに温かいお茶を飲ませればぁ……。
ユマ:
…………胃がボンっ!
サナ:
ぼんっ!!??
ミヤ:
…………
ユマ:
そうっ!ボンっ!!
サナ:
おーまいがーっ!
ミヤ:
はぁぁ……そんなうまくいくわけないでしょ?
サナ:
ぼんっ!しないの?
ミヤ:
しないしない
ユマ:
えー、なんでよー!?お菓子の生地って取り込まれた空気が熱を加えられることで膨張してるわけでしょー?
ユマ:
だから、ものすごーく圧縮したカステラに熱と水分を加えたら、こうスポンジみたいに膨らんでさぁ……。
サナ:
ぼんっ?
ユマ:
そうっ!ボンっ!
ミヤ:
いやいや、あのさぁ、確かに多少は膨らむかもしれないけど、もしそれが成立したら全国のケーキバイキングは大惨事だよ?
ユマ:
だからぁ、それはもう鬼のように生地をうすーくうすく潰して……ほら、なんだっけ?質量保存の法則?
ミヤ:
口から摂取したものが胃にそのまま届くわけじゃないしね。
サナ:
ぼんっ!しないの……?
ミヤ:
え!?なんでサナそんな悲しそうなの?ボンっして欲しいの!?割とグロ映像だよ?
ミヤ:
あー、わかったわかった。じゃぁ、百歩譲ってボンっするとしましょう!
ミヤ:
ボンっするとして、一体どれ位のカステラが必要なのよ?
ユマ:
んー……山のように?
ミヤ:
さっきから、鬼とか山とか曖昧だなぁ……。
ミヤ:
まず!カステラ箱一本で大体580g、対して胃の容量は食べ物が入る際には2Lくらい拡がるっていわれてる
ユマ:
ということは……2Lは2kgだからぁ……最低でも……4箱必要ってことかぁ……。
ミヤ:
そう。4箱分のカステラを人が齧れる大きさに圧縮するなんてまず人の手じゃ無理。
サナ:
サナでも?
ミヤ:
サナでも、無理!
ミヤ:
それに人それぞれ胃の容量なんて違うわけだし、概算で4箱なんだから、確実にボンっさせるならもっと量が必要だよ?
ミヤ:
人が何の疑いも持たずにそれを食べようって思わせるためには、お金も手間も無茶苦茶かかると思うよ。
ユマ:
はぁぁぁ、じゃぁ無理かぁ。完全犯罪無理かぁ……。
ミヤ:
なんでそもそもそれが完全犯罪になるって思ったの?
ユマ:
えぇー、だってさぁ、例えしたいを解剖されたとしても出てくるのは大量のカステラとお茶でしょ?
ミヤ:
なるほどねぇ、毒物とかと違って痕跡が残らないって思ったわけか……。
ユマ:
そぉ。この人食べ過ぎて死んだんだなぁってことにならないかなぁって……。
ミヤ:
でも、結局、凶器を準備する時点で不振な点が沢山残っちゃうから。
サナ:
ねぇねぇ?じゃぁさじゃぁさ。もしカステラを不振に思われないようにちょっとずつちょっとずつ準備したとしたら?
ミヤ:
あぁ、それもご都合主義でクリアしたことにしちゃう?
ユマ:
そしたらもう完全犯罪だよ!
ミヤ:
ううん、そしたら今度はどうやって対象にその鬼薄ミルフィーユカステラを食べさせるかって問題になると思う。
ユマ:
どうやってって……はいって渡したら誰かに目撃されちゃうかもしれないから……。
ユマ:
机の上に「食べてください」ってメモ書いて置いておくとか?
サナ:
えーっと、なんだっけ?……筆跡?そーゆーのでバレちゃう?
ミヤ:
そうだね
ユマ:
じゃぁ、新聞とかの切り抜きを貼り付けて文を……。
ミヤ:
確実に犯行声明っぽいでしょ?怪し過ぎる。
ミヤ:
ていうか、机の上にいきなり誰からかも判らないお菓子が置いてあっても食べないでしょ?
ユマ:
あたしは食べるよ!
サナ:
サナも食べるよ!
ミヤ:
…………。言い方変えるね。人によっては食べないかもしれないでしょ?要するに確実に食べてもらえるとは限らない。
ユマ:
うーん、だったら、誰かに渡してもらうとか?
ミヤ:
共犯者が増えることになるよ?
サナ:
ならなら、投げるってのはどうかなっ!?口開けてる時にホールインワンって!
ミヤ:
うん、絶対吐き出されるね。
サナ:
じゃぁじゃぁ、離れたところからっ!ヒットマンみたいにっ!
ミヤ:
どんだけ遠投するつもり?メジャーリーガー連れてきたって成功率低いよ
ユマ:
……だったら、何かに混入させる?
ミヤ:
まぁ、それが妥当かもね
サナ:
混入?ハンバーグの中とか?海苔弁のご飯との間とか?
ミヤ:
サナ、それ瞬間でバレるやつ。毒物感覚で混入させようとしないでー。
ユマ:
見た目同じものをいっぱい作って、対象にだけ鬼薄ミルフィーユカステラが行くようにする……?
ミヤ:
うん、それなら対象に食べてはもらえるかな……
ミヤ:
でも、やっぱりミスなく、警察の目をすりぬけて、痕跡を残さずってなると難易度高いよ?
サナ:
不完全犯罪になっちゃうね
ユマ:
あー、良い案だと思ったんだけどなー
ミヤ:
科学捜査とかも発達してるしね、旧時代の探偵小説みたいにちょっとしたトリックじゃ完全犯罪なんて無理だよ。
ユマ:
でもさでもさ、逆にさ、逆にだよ?
ユマ:
そういう完全犯罪とか企てる犯人て天才ってゆーの?普通じゃ計れない頭のいい人がするものじゃん?
ユマ:
それをあたしたちみたいなまだ未発達の中途半端な女子高生が考えたら、逆に面白いってゆーか、斬新な計画がたてられるんじゃない?
ミヤ:
うーん、まぁ、斬新かもしれないけど……杜撰だよね。
ミヤ:
完全犯罪には程遠い。
サナ:
え?じゃぁ、今日から完全犯罪クラブ?読書クラブはおしまい?
ユマ:
それいいかも!新しいね!こんな薄暗い部屋に押し込まれたわけだし、いっそのこと新しいクラブにしちゃうか!
ミヤ:
いや、絶対無理だから。成立するわけがないから。
ミヤ:
根本的な話、なんだってまた、殺人なんて言い出したの?
ユマ:
えー?むしゃくしゃしてたし、目の前にカステラがあったから?
ミヤ:
何、その登山家のような理由。
ユマ:
うーん、じゃぁ、なんとなく思いついたから?
ミヤ:
思いつかないでよ、そんな怖いこと。部室移動させられたくらいで。
ミヤ:
日本の殺人に対する刑罰は死刑又は無期、若しくは5年以上の懲役。
サナ:
えーっ!サナ死刑!?
ミヤ:
14歳以上なら責任能力があると判断されて、一応今のわたし達の年齢の場合、最高刑は無期懲役だね。
ユマ:
んー、そう考えると完全犯罪として考えるのに殺人は難易度高かったかぁ~。
ミヤ:
いやぁ、軽犯罪なら難易度低いって考えるのもよくないと思うけどね!
ユマ:
でもさ、今回のことは勢いで言ったけど、殺してやりたい~って思う事ってあるよね?
ミヤ:
まぁ、否定は出来ないかな……。
ユマ:
でも、それで衝動的に殺しちゃったりすることがないように、重い罰が設けられてるんだよね。
ミヤ:
そうだね、殺意を持っていなくても事故とか、案外ちょっとしたことで人って死んでしまうから。
ユマ:
物とかと違って人間は弁償できないもんね……。
サナ:
サナ……ユマちゃんやミヤちゃんが死んじゃったら嫌だ……。
ユマ:
あたしだって、ミヤやサナが死んじゃったら嫌だよ!
ミヤ:
うん、わたしも嫌だよ。だからさ、いっくら憎くても殺そうなんて思っちゃダメなんだよ。
ユマ:
そうだね……憎しみからは憎しみしか生まれないからね!
ミヤ:
そうそう!殺そうと思っていようがいまいが、もし誰かが身近で死んじゃったら、悲しいんだから
サナ:
サナたちが誰か殺しちゃったら、その人を大切に思ってた誰かがいーっぱい悲しむことになっちゃう
ミヤ:
っということで、もう誰かを殺そうなんて言っちゃダメだよ?
ユマ:
はぁい!
ユマ:
でもでもっ、やっぱりこうやって犯罪の計画考えるのちょっと楽しくなかった??
サナ:
楽しかった!サナは二人と一緒ならなんでも楽しい!!
ミヤ:
おいおい、たった今、犯罪は良くないことってことで話がまとまりかけたって言うのに……
ユマ:
解ってるよー!だから、あくまでも想像の話だって、そ・う・ぞ・う!
ミヤ:
想像でも、こうやって皆で話し合ってたら、もうその時点で犯罪なんだけどねー。
ユマ:
え!?そうなの??
ミヤ:
共謀罪とか予備罪とかね。実在する人物や事物に対して犯罪計画をたてたら、それだけで罪になる
ユマ:
じゃぁ、こーっそりあたし達三人だけでやらなきゃいけないんだね!
サナ:
大丈夫!サナ、ちゃんと秘密に出来る!ってゆーか、覚えてられない?
ミヤ:
いやいやいや、こっそりやれば大丈夫ってことじゃぁないから!
ユマ:
とゆーことは、完全犯罪クラブじゃなくて、想像犯罪クラブだね!
サナ:
ソウゾウハンザイクラブ!表の姿は読書クラブ!でも、陰ではこっそり想像犯罪クラブ!カッコイイ!
ユマ:
よし!この薄暗い部室へと移動した今日この日をきっかけに我々読書クラブは……。
ユマ:
想像犯罪クラブを結成することとなりました!!
ミヤ:
あー、これもう何言っても聞かないやつだ……。
サナ:
イエイ!結成!!
ユマ:
でも安心してください!そんな毎日、毎回犯罪について話すわけではぁありません!
ミヤ:
あ、そうなんだ……。
ユマ:
想像犯罪クラブはあくまでも裏の顔!世に対するアンチテーゼが蓄積されたその時こそ力を発揮するのです!!
サナ:
いざという時だけ出動するダークヒーローってことだね!ますますカッコイイ!!
ユマ:
そう!その来るべき時に備え、日々鍛錬を怠ってはいけませんよ!サナさんっ!!
サナ:
らじゃーであります!大佐!!
ミヤ:
あっ……カステラあと一切れあるけど、食べる人~?
ユマ:
はいっ!
サナ:
はいっ!
おわり