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ここはすべての夜明けまえ
図書館で4-5ヶ月待ったかな。忘れた頃にやってきた。どこの情報から予約したんだっけ?
ひらがなと小学1年生くらいで習う漢字のみで書かれる文章は読みづらく、若い著者が奇を衒った文体でなんとなく読ませたいのかしらと第一印象は決して良くなかったのだけど、読み進めるうちによく出来ているなと思う箇所に何度か出会い、ちょうど今日は通勤に時間がかかる日だったので、行き帰りに夢中で読み切った。
死にたかった人が死なずに(死ねずに)人造人間として誰よりも長生きし、周りに誰もいなくなっても朝は来るわけで、人間らしい熱量みたいなものが少ない乾いた語り口で話が進む。
いや、こうして何気なく「人間らしい」という単語を使用している時点でそもそも私は"人間ってこういうもの、こうあるべきもの"みたいなのを勝手に創り上げているのだと気付かされる。
生きているとは何なんだろう。生まれた時から生きていることに違和感だらけの人にとっては、死にたい(つまり生きたい)も実感を伴わないのではないか。
この著者は、たぶん死にたいと思ったことがあって、だからこそ望んで健康的に死ぬこと(加齢や疾患を煩わない死の場面は、穏やかに描かれている)を否定しないでほしいという思いが、読み手の心にずしんと来る。
若い著者は調べてもプロフィールがら見つからず、得体の知れない相手であっても、この期待を胸に2冊目を待ちたいと思える作品だった。