夫の気力
夫は転院し輸血のおかげで、歩けるようになったので、会社に行きたいと言いだした。
外科部長は、看病する私のことを心配してくれたが、
主治医は早く退院して欲しいと言っていた。
主治医はの言い分は「こんなところにいたら死んじゃうよ」ということらしい。
病院は、毎日面会に通ってみればわかると思うが、すごく疲れる。
家から自転車で行けるようになり、気持ちもラクになった。
そんなこんなで、「あさって退院しても良い」と言われた矢先に
夜中、心肺停止の連絡が来る。
心肺蘇生して助けてくれたが、こう度々だと私の心臓もおかしくなりそうだった。
主治医は「あんなの(医療用麻薬)何枚も貼っても、死なない人は死なないよ」と言ったので、
ようやく私は、
医療用麻薬を貼るせいで、夫は何度も呼吸が停まっていたことがわかった。
体質もあるだろうが、痩せ細った体なのに、病院内ではごはんを食べないし、仕方ないのかも知れない。
せっかく退院してもいいと言ってもらえたのに、「やはり退院させられない」と言われた。
その時の夫の失望した顔は、今も忘れられない。
そのあと医師は、治療は無理だから緩和ケア病棟に移って欲しいだの、
もう延命措置は出来ないからサインしろだの、
家族としては辛い選択を迫られた。
それでも、主任看護師と副主任は「外科で面倒みるから大丈夫よ」と言ってくれて、優しかった。
治療(飲み薬の抗がん剤)をやめる選択をしたこと。退院できないこと。
夫は、生きる気力を無くしてしまったようだった。
つづく