夫と猫
夫の遺体は、葬儀まで自宅に戻った。
猫は、大好きな夫が帰ってきたのに、寝たまんまだったので、
キャットタワーから何度も何度も夫の顔を見返した。
義兄が弔問に来た時は、夫と間違えて出迎えていた。
夫が初めて入院した時、お姉ちゃん猫は、押入れに籠って出て来なかった。
私は旅行で家を留守にしていたので、慣れていたみたいだが、
夫が家を空けることはなかったので、異常事態を感じたのだと思う。
夫は、幼い頃から犬を飼っていた。
だから、無類の犬好きだった。(笑)
結婚してすぐの頃は、犬を見れば
「ワンちゃんがいる。ワンちゃんがいる」と大騒ぎして、
犬を飼いたいと言っていた。
しかし、私が猫を2匹拾ってきたので、しぶしぶ飼ってもいいと言ってくれた。
今思うと、
夫は、留守がちな私に代わって、よく面倒を見ていたに違いない。
夫が勉強している時も、食事している時も、いつも猫2匹はそばに居た。
猫は、大好きな亡き夫にかまってもらえなくなった。
だからなのだろうか。
夫が亡くなったあと、お姉ちゃん猫はすぐに具合が悪くなった。
激しく咳込んで、見ていられないほどだった。
獣医に連れて行くと
片方の肺が潰れてしまって、もう治らないと言う。
そう診断されてからは、動物病院に行くのを異常に嫌がっていた。
ペット用の酸素室をレンタルしても、入らなかったが、私が手製で作った酸素室は気に入ってくれて、よくそこで寝転んでいた。
結局、夫が亡くなって一年半後に、お姉ちゃん猫は、夫の元に逝ってしまった。
私は残った猫1匹と暮らすことになった。
つづく