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夫の転院

2016年夏。夫はイスから立ち上がれなくなり、

最期は、自分が生まれ育った町の総合病院に転院したいと

言い出した。


出ていく大学病院は、あっけなくOKをくれたが、

受け入れるほうの病院は、なかなか甘くない。


緩和ケアもある、町の総合病院は、うちから徒歩10分だが、

一歩も歩けないので、救急車で行ったら、病院から即座に断られた。

仕方なく、タクシーを呼んで、歩けない夫を運んだら、二人でひっくり返ってしまった。



それでも、連れて行くしかない。



やっとの思いで病院に着く。すぐに外来のベッドに寝かせてくれた。


とりあえず貧血をなんとかしてもらえないかと頼んだら


外科部長に「そうね。これじゃあ、帰れないよね」と入院させてもらった。


次の日に顔を出すと、夫は輸血してもらったお陰で、ベッドの上で元気に足を動かしていた。


しかし、今度の主治医は


「前の病院に行けば良かったのに。(死んでいく人に)輸血は医療資源の無駄遣いだよね」


と辛辣だったが、


主任看護師は「うちで受け入れますから大丈夫ですよ」と言ってくださった。


少し胸をなでおろした。


つづく

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