夫の怖い病室
今回はICUに二泊しただけで、すぐに出ることが出来たが、
ナースステーションの隣のお部屋に移された。
前回は新館だったので、HCUだったのだが、
昭和に建てられた古い病棟は、ナースステーションの隣の部屋だというだけだ。
今回は、突然心肺停止になったので、何人かの医師が病室に入ってきて、夫に訊く。
「なにがあったのですか?」
そんなことは、私たちが訊きたいと思った。
ナースステーションの隣のお部屋。
この部屋は、少し広めの個室なのだが、ものすごく暗い。
昼間も暗い。
そして、四方八方の壁から
トントントンと3回ノックの音がする。
私も
面会に来てくれた従兄弟も
友人も
トントントンという音を何度も聞いた。
夫は看護師のノックと間違えて、「はい。どうぞ」と言っていたが、誰も入って来ないし、
朝から晩まで
トントントンと聞こえるし、
夜中に、女性の声で耳元で話しかけられたとまで言い出した。
いつもは、幽霊の話とか全く信じない夫が
「信じるとか、信じないとかの話じゃなくて、いるの」と言った。
それで、看護師に相談した。
この部屋は、ノックの音がうるさいと言われたことないですか?と。
看護師は顔色も変えずに
「はい。よく言われます」と言うので、
盛り塩してもいいですか?と許可をもらって
部屋の四隅に盛り塩をした。
怖くて部屋の中を歩かなかったので、気づかなかったが、壁は血の跡が沢山あった。
不思議なことに、盛り塩をした途端に、ノック音が聞こえなくなったが、
なんと夫は、10日後に二度目の心肺停止状態になった。
今回も助かったが、原因がよくわからないと言う。
そんなはずはないのだが、この部屋にいるのは良くないと思って
「部屋を変えてください」と看護師にお願いした。
二、三日待って欲しいと言われたが、一刻も早く出して欲しかった。
つづく