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最高峰に火を灯す準備を

8月16日の今日は五山送り火、先祖があの世へ帰る日。

僕は今出川の坂から、ランニングシャツを着て走りながら、嵐を乗り越えた東の山が輝いているのを眺めていた。

もう半年前になるだろうか、2月19日の京都マラソンの日もこうして、39㌔過ぎの今出川の坂から、ランニングシャツを着て、雨に濡れたあの山を眺めていた。

休学届を出したのは京都マラソンの4日前だった。そして、その日に病院で癌の疑いも掛けられた。

進路変更名義で休学届を出したものの、正直再受験をやりとげる自信はなかった。

でも京都マラソンの最後、北白川今出川の交差点で折り返し、あの山を背に岡崎・みやこめっせに向かい、なんとかサブ3。少し自尊心を取り返した。

そして、何度も諦めたプランニングの教科書を1ページずつ脳に焼き付ける作業を始めた。意外と集中できた。しこりは摘出検査の結果、癌ではなかった。

脳に焼き付ける、といえばこの半年の京都の風景は脳に焼き付いている。

京の街は、梅が咲き、桜が開き、躑躅が並んだ。

薔薇が彩り、緑が芽吹き、紫陽花が濡れた。

夏の街は七夕祭と祇園祭で賑わっていた。そして、今日の大文字。

そんな風景を目指して走るのが一番の息抜きだった。

「走る」ことに喩えれば、外部院試はフルマラソンのようだ。ここで、フルマラソンが僕にとって最大級の表現でないことに留意していただきたい。僕はウルトラマラソン完走者だ。

負荷で言えば勿論、学部入試の方が重いだろう。あれは、ウルトラマラソンだ。

でも、外部院試という名のフルマラソンにはマイルストーンもなく、コース案内もなく、伴走者も殆どいない。そういった難しさがあった。

でも、給水してくれる人はいるから、感謝しつつ脚を前に進めた。

この半年の道のりをフルマラソンに例えるなら、今日は奇しくも39㌔を過ぎたあたりだ。そんなことを考えながら、今出川の坂を登っていた。

正しいとされるコースは、北白川今出川の交差点を折り返し、岡崎・みやこめっせのゴールに向かうコースなんだろう。それでも、僕は曲がり角を左折して、銀杏並木の都大路に進路をとった。

帰り道、西の山に帰る船が見えた気がした。ただ気づいたら灯火は消えていた。そんな船はない、気のせいだろう。

あと12日

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