「大物VIPの寿司会談」【ショートショート】
空港は厳戒態勢だった。とある国の大物VIPが初来日とのこと。
大物VIPは時間が限られており、すぐに出国して次の国へと向かわなければならない。
我が国では、最大限のおもてなしをするため、大臣が直々に空港まで出迎え、空港を貸切り、特設VIPルームを作り、星付きの板前が出張して寿司を握った
「ようこそ、このフロアは貸切になっております。そしてこちらがご希望の『回転寿司』です。」
大臣の挨拶を全く聞かずに大物VIPは、世界一の高級な寿司を大胆に食べる
「さっそく、例の件なのですが、、、」
大臣が約束を取り付けようとしたが、大物VIPは腹減ったと言わんばかりに、ベルトコンベアを叩いた
マグロをまるまる一尾つかい、俵で作ったシャリにのせた巨大寿司を10巻ほどほおばると、大臣を摘み上げ、おしぼりのように口周りを拭いた。
それでも大臣は平然とし、部下に指示をだした。
するとベルトコンベアには、大量のスーツケースが流れてきた。ベルトコンベアの本当の使い方なのにとても小さく見える。
文字通りの「大物」VIPは、金銭の詰まったスーツケースをスーツの内ポケットにいれ、去っていった。
我が国の空港の手荷物受け取り場が、酢飯の匂いが充満する程度で平和が守られたのだから、安いものだ