オンラインでは手にとって触れていただくように伝えられないけれど...
綿糸でつくる手織りの椅子敷き「赤穂ギャベ」は、赤穂緞通の織り手さんが、今の暮らしに合うような敷物を作れないかと模索され、赤穂緞通の枠組みに含めることはできないけれど、同じ道具や技術を使った商品として開発された。
...もともとスロースタートであったが、展示会などで実際にその質感に触れていただく機会を設けて商品を発表していた中、この社会情勢で積極的にそのような機会でさえも叶わなくなってきている。
商品の生産に伴う動きとしては、織り込む色糸となる綿糸の手配や、椅子敷きの図案などの開発に伴う領域もあるが、織り手の教育といった領域も含めた活動など、まだまだ手探りではあるがオンライン/オフラインを取り混ぜながらの状況となっている。
無地(縹、浅葱)のオーダーをいただく
この6月、赤穂ギャベの仲間でもあり、赤穂緞通の担い手の一人である工房 六月(むつき)さんがオンライン展示会をされた際に、赤穂ギャベも紹介していただいたこともあってか、オンラインで赤穂ギャベのオーダーをいただくことがあった。
無地(縹 はなだ 、浅葱 あさぎ)
天野紺屋さんにて藍染された糸を用いており、光の角度によっては、まるで瀬戸内の穏やかな海面のように藍の色がさまざまな表情を作り出しています。ふんわり感が感じられるおよそ1.9cmの厚み、綿糸特有の肌触りは、100年は持つとされる赤穂緞通のノウハウの上に生み出されています。日常使いとして長い年月を重ねていただけます。
オーダーをいただいたのは六月(むつき)さんのオンライン展示会の流れなので6月末頃。在庫が手元に無い「受注生産」の場合は、納期の目安を2ヶ月としている。注文が入れば、まずは織り手さんや機(はた)の状況を確認するところから行っており、すでにその機で他の制作をされているなら、それが織り上がってからになるし、織り手さんの日常生活の隙間時間で織っていただくこともあるので、余裕を持った期間の設定としている。
今回、織り手さんに状況確認すると1ヶ月ほどで対処できるようであったので、その旨をお客様に承諾を得てから制作を始めてもらい、7月末にお客様の手元へお送りた。すると配送されたその日だっただろうか、
「瀬戸内の海の眺めのように穏やかな色もふんわりとした手触りもたいへん気に入りました。大切に使わせていただきます。」
と、お客様からコメントをいただいた。
僕にとっても嬉しく、織り手さんにとっても次回制作の励みになって、本当に感謝しており有り難い。
藍は染色屋さんにてお願いしている
この椅子敷きでは、濃い色糸「縹(はなだ)」は島根県にて染色業を営んでおられる「天野紺屋」さんににて藍染を依頼している。
何度も繰り返し染められることで、深く藍が染み込んでいく、藍で染められた色合いは光の当たり具合で藍の風合いが醸し出され温かみが感じられる。そもそも素材の適材適所だとも考えているが、無地などの文様の無い図案では、このように色糸の素材がそのまま生きている。
そして、もう一方の明るい色糸「浅葱(あさぎ)」は、別の染色業の方に依頼をしている。こちらは若干、染が乱れていることもあるので、その特徴を生かして合糸をしていい具合のまだら感を作っている。
今回は含まれていないけれど、織り手に自ら草木染めを行うようなこともあって、天然染は個体差は大きくなる。正確に言うと化学染であってもロット違いで同じ色はない。
そのため、染糸の在庫が無くなると新たに用意することになって、これまでと色合いは当然変わってしまうし、手織りのため個体差が生じるだけでなく、天然染であることからも個体差が生じる。なるべく同じような風合いで作るようにしているけれど、むしろまったく同じものは作れないということを手工芸の強みとして捉える方がポジティブではなかろうか。
僕のnoteは自分自身の備忘録としての側面が強いですが、もしも誰かの役にたって、そのアクションの一つとしてサポートがあるなら、ただただ感謝です。