龍にまつわる意匠を紐解くと、紀元前から伝わる瑞獣として畏怖の象徴でもあるらしい...
ふりかえると、2020年1月に初めて赤穂ギャベの「虺竜(きりゅう)」という図案を紹介している。その際にも記載しているが、赤穂ギャベ用の図案として整える作業は僕が担当していた。
当時も、古代の青銅器でも見られると触れているが、今回、その辺りを深堀りする機会もあったので、改めてまとめ直しておく。
その青銅器については、赤穂ギャベの運営に関わる前、2019年6月の記事に京都にある泉屋博古館と、和鏡を作っている山本合金製作所を訪問している。興味の矛先はいずれ繋がっていくようで、素敵なご縁をいただけているんだわ♪
龍・竜の図案(紀元前から伝わる瑞獣)
龍、鳳凰、麒麟など架空の生き物とされる「瑞獣(ずいじゅう)」は、吉兆や畏怖の念を抱かせることが多く、さまざまな造形・彩飾の中に取り入られている。赤穂ギャベでは、その文脈である赤穂緞通の図案から着想を得て椅子敷きとして制作することも多く、これまでも龍(竜)に由来を持つ図案をいくつか制作している。
赤穂ギャベ:水龍(すいりゅう)
京都の禅寺である天龍寺や南禅寺の寺紋として雨龍(あまりゅう)が用いられるなど日本でも古くから用いられる紋様。赤穂緞通でも比較的多く残っている「市松雲龍」から龍文(雨龍)より椅子敷きとしたもの。
赤穂緞通での事例
赤穂ギャベ:虺竜(きりゅう)
赤穂緞通の比較的古い時代には、龍が持つ畏怖の念の文脈からか結界の役割のように縁(額)に龍文を用いた図案が多く見られ、その龍文から二匹の龍を抜き出し椅子敷きとしたもの。
赤穂緞通の縁(額)に龍文があしらわれた事例
シルエットが簡素化(ディフォルメ)され、一見、雷文の分類されるようにも見えるが、さきほどの市松雲龍の「龍の頭」とも連想される意匠と見て取れる。
事例の一つとして、ひと目で龍とわかる図案を用いられた赤穂緞通もある。
虺竜(きりゅう)とは
赤穂緞通に限らず、日本の伝統文様の多くは中国大陸の影響はとても大きく、さまざまな意匠に転用されている。その転用の繰り返しの先には当時の意味から外れてしまうものや、意匠としても発展だけでなく劣化していくこともみられる。赤穂ギャベの図案でも赤穂緞通だけでなく日本の伝統文様などからも着想を得て制作することが多く、できる限りその元になる意匠を汲み取った上で進めており、ネーミングを定める際には誤解のないように努めたいと考えているが、多少の色付も生じている。
虺竜(きりゅう)の「虺(き)」には、龍と成る前のトカゲやヘビの意味から小さいの龍を指すことや、「虺虺(きき)」という言葉に雷鳴の意味があったりすることを踏まえ、太古の時代に浪漫を寄せて、赤穂ギャベの図案名として採用した経緯がある。
紀元前17世紀(ざっと三千年前)、中国初期王朝の一つに「商」と呼ばれる時代があって、その商(殷とも呼ばれる)から春秋戦国時代(その後、始皇帝が統一)において、龍を象った文様の青銅器が多く残っているとされている。龍紋も青銅器の研究においては時代によってかいろいろ呼び名があって、夔竜文(きりゅうもん)、螭文(ちもん)、蟠螭文(ばんちもん)などの言葉が使われている。
泉屋博古館の青銅器研究者の方からお聞きした見解
・夔竜文(きりゅうもん)
横向きで大きく口を開け、その口の付け根あたりに眼と角が付き、細い胴体に一本足と尾を持つ龍で、商から西周時代にかけて流行した文様。
・螭文(ちもん)
足や角が欠けた小型で細長い龍で、春秋戦国時代に流行した文様。
・蟠螭文(ばんちもん)
複数の螭が複雑に絡み合ったもので、春秋戦国時代に発達した文様。
参考画像
蛇足:中国大陸古代史
ちょうど、Amazon Prime でドラマ「孫子兵法」をイッキ観している最中で、青銅による剣づくりのシーンもあったので覚え書きを残しておく。
紀元前500年ごろ、春秋時代(戦国時代)の軍師を題材にした長編歴史ドラマ。後半、刀鍛冶が鍛造するシーンがあるが、銅と錫の配合のセリフがある。この時代は青銅器時代なんだろう。位の高い層で使われている酒盃は泉屋博古館でも見受けられる青銅製っぽい。時代考証なるほど♪
…ドラゴンなど、その他の龍・竜の謂れは、またご縁があれば紐解きたいー(ブルース・リーとかドラクエとか… 限りなく広いw)
僕のnoteは自分自身の備忘録としての側面が強いですが、もしも誰かの役にたって、そのアクションの一つとしてサポートがあるなら、ただただ感謝です。