「人が町を作る」を体現した倉敷。東町通りにある展示会での特別企画。
岡山駅から伯備線に乗って倉敷に入る。瀬戸内だからか、それとも春ということだろうか、ずいぶんと温暖な気候のように感じる。予定通り1時間ほど早く到着したので、小高い丘にある「阿智神社(あちじんじゃ)」に軽く立ち寄ったり、街をぶらぶらしながら会場に向かう。今回の第一の目的は、倉敷美観地区内にある「楠戸家住宅(くすどけじゅうたく)・はしまや」を会場とした展示会に赤穂ギャベが参加することになったので、当番として会場入りをすることだった。倉敷は、京都から新幹線で2時間の距離。日帰りでもまったく問題ないんだけれど、せっかくなので1泊する。ノートパソコン持参しているので、基本的にはいつも同じ環境で仕事ができる。つまりワーケーション(Work+Vacation)だ、もっと増やしたいー♪
今回は僕にとって初めての倉敷。とにかく素敵な街だという話ばかり耳にしており、まぁ、いつか機会があれば是非訪れたいと思っていたんだけれど、想像以上であった。
楠戸家の面々
「楠戸家住宅・はしまや」は、五代目夫人である楠戸恵子さんら親族の方が管理しつつ、様々な事業を展開されているようで、楠戸恵子さんは朝から店先を掃除されていた。
当日のお昼は何処で食べようかと思っており、楠戸家の親族が営んでおられるイタリア料理店「トラットリア はしまや」も当初は候補に入れていたけど、ちょっと敷居が高そうな印象もあったので、他を探すも展示会場の奥にある「夢空間はしまや」も興味もあったが、街をぶらっとしてインドカレー屋に入ってしまった(一人だとお店を選ぶんだよね…)。
赤穂ギャベに関わる当初、友人が購入した MUNI CARPETS に触れる機会がったんだけれど、その倉敷本社店が「はしやま」の前にあるということで、展示会終了後に立ち寄る。上質なラグが展示されていることもあって眼福の時間を過ごすことができたけど、そもそも MUNI CARPETS の創業者である楠戸謙二氏も楠戸家の親族だと知る(まったく想像してなかったので驚いているが、楠戸家の交友関係を知ってからいろいろ腹落ちするw)。
お昼過ぎだっただろうか、楠戸恵子さんがご友人と共に会場に来られ、赤穂ギャベの展示をご案内していただいた。話を聞くと「融(とおる)」という民藝店のオーナー夫妻(ん?夫妻かな…ちゃんと聞いていない)。民藝店ならではの視点だろうか、会場にしつらえてあった家具が「これは中国?李朝かな?」という話になったんだけれど、話をいろいろ聞いているとお店は若い方に譲られたようで、今はご夫婦でゆっくり過ごされているようであった。(そんな話を何処かで聞いたようなだったけれど、その時は思い出せず、後になってなるほど〜っとなる♪)
倉敷本染手織研究所と外村吉之介
「民藝」を言葉として掴み取る必要はないとも思うんだけれど、知らないという話もできないので、過去のnoteにも「僕の記憶や体験と重ねると民藝とはパンク・ロックだと腹落ちしているところ」、「赤穂ギャベが、民藝の枠組みに入るのかどうかってことは、若干悶々としているが、時間と共に噛み砕いていければと思っている。」など書き残していたりしてる。
機会があれば体験したいということもあったので、倉敷民藝館にも立ち寄ってみると、そこで何処にでもあるアンティークショップや民藝店、骨董品店にも通じる体験があった、良い道具はいつでも現役なんだ。倉敷民藝館は展示紹介する博物館としての役割と、使うための道具を販売するお店としての役割があるようだ。
倉敷の文化の奥行きに、外村吉之介(とのむらきちのすけ)という人物は欠かせない。もともと染色の研究者であったということもあり、倉敷本染手織研究所を設立し、椅子敷「倉敷ノッティング」を考案された第一人者であり、倉敷民藝館の発起人(初代館長か…)であったり、倉敷の町並み保存(倉敷美観地区)への意識も高く、今の倉敷があるのは彼の影響・功績がとても大きい気がする。
倉敷ノッティングは、ウールを経糸に結んで(トルコ結び)つくる敷物で、ウールを主に使われ、ぎっしり詰め込まれて厚みもあって、幾何学模様のデザインがモダンで美しい。赤穂ギャベはまだまだ若輩プロジェクトであるが、赤穂緞通の結び方(ペルシャ結び)を用いることが大きく違うし、綿を主に使っている。トルコ結びは経糸に結ぶ際に中央でぐっと手繰り寄せることで縦向きに力が加わることもあって、ある程度の厚みがあってもしっかりしているのではないかと思われる。いろいろと勉強になるところが多い。
外村吉之介が世界中の道具(民藝)をまとめた図録「少年民芸館」の倉敷ノッティングの項目では『椅子敷は「ビスケット」という仇名がついている。』と説明されており、なるほど確かに倉敷ノッティングの幾何学模様がビスケットの凸凹に見えてきた♪
店主は民藝への造詣が深い写真家
倉敷民藝館から駅に向かう途中に、昨日お話を聞いていた「融民藝店(とおるみんげいてん)」にも立ち寄ることにしたんだけれど、お店に入ってみると素敵な湯呑があったので購入。購入する際、店主といろいろ話をしている中で、僕が知っていたのは鎬(しのぎ)は金属の茶入にそのような造作をされている品があるんだけれど、鍛金として鎬の形状を叩き出すのだろう。陶器における「しのぎ」は針金を曲げた道具で側面を削って作る工程のようだが、「しのぎを削る」とは陶器から展開した言葉だろう。
…融民藝店に立ち寄った経緯を店主と話をしていると、店主である山本尚意さんは数年前に赤穂ギャベのイメージ写真の撮影をしていただいた方だった。人のご縁が強烈過ぎる初めての倉敷訪問であった。
さてと、今回参加した展示会
今回、倉敷美観地区にある「虹色商店」が主催となっており、同地区にある「はしまや」の店先を利用して開催される展示会「アール・ブリュットクラフトの世界」の特別企画として赤穂ギャベが参加することになった。
「アール・ブリュットクラフトの世界」では、岡山県内の障がい者施設で製作されたノッティング椅子敷、吹きガラス、備前焼、アクサセリー、織物等の展示販売されている。
赤穂ギャベからのお知らせ
余談:倉敷美観地区
白壁土蔵のなまこ壁(平瓦を壁に貼り付け、目地を漆喰で「なまこ」のように盛り上げる施工)が計画的に維持保存されているように見えていたけれど、楠戸家住宅をはじめ木造家屋の壁面の多くは焼杉の壁材を使われているところも多く。住む人の文化度の高さ(心意気)は尊敬の粋である。