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コロナ状況下での新しいコミュニケーション/SHIBUYA QWS リ/クリエーション

39都道府県で緊急事態宣言が解除され、徐々にコロナ終息への期待が高まる中、皆様いかがお過ごしでしょうか。
東京ではしばらく続くことが予想され、趣味のPeatix巡りをしていてもオフラインでのセミナー開催は難しく、zoomを用いたビデオセミナーが基本のようです。
本日はQWSという渋谷のスクランブルスクエアを拠点に活動する学習コミュニティのオンラインイベントに参加してきました。

※今回も肩の力を抜くことなんてできませんでした。
5000字をこえる超長文のnoteです。時間があるときにご覧ください。。。

SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)で開講している『リ/クリエーション』の公開講座に参加したイベントレポートです。
※中の人とは全く関係ない受講者の主観で、内容整理を目的として作成したものです。

1.Introduction

本講座は、私が愛読しているファッション批評誌「Vanitas」や、服作りの未来について論じた「ファッションを更新できるか」等を執筆している京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab特任教授 水野大二郎さんを講師に迎え、ソーシャルインクルージョン:文化的探査機としてのデザイン、それぞれの人の経験を変換するきっかけとしてのデザインの観点からコロナ時代の新コミュニケーション術を考える講義・ワークショップでした。

QWSの緊急オンライン講座RE/CREATION BOOSTコース 公開講座
第1回講義 5/16(土) ソーシャル・インクルージョンとあなたの企画(水野大二郎)
第2回講義 5/23(土) 明和電機流 ピンチエンターテイメントのススメ(土佐信道)
第3回講義 5/29(金) 発信する地域の実践者たち~拠点作り&ZINEづくり(安藤僚子・菅野信介)
第4回講義 6/12(金) ブレずに伝える編集術(平山潤・矢代真也)

2.情報と物質の世界のゆらぎ

コロナ状況下でコミュニティのあり方、価値観、経済に対する価値観は大きく揺さぶられています。
移動が制限され、自宅で動画やSNS等のコンテンツを一方的に消費するだけの生活が長く続いています。自宅勤務の会社員やオンラインで授業を受ける学生は、人との対面コミュニケーションが大幅に減少し、現実環境とのつながりに実感が薄れはじめています。
一方、VRや拡張現実といった新しい情報技術によって身体機能を拡張し、新しい体験や相互作用を生む取り組みも始まっているようです。
※後半で水野さんに紹介いただいた現実とインターネットが交錯する事例を記載します。

コロナによって情報と物質の世界ゆらぎが表れ始めているようです。

「情報」の世界では別の場所に瞬時にワープできたり、3Dスキャンした空間を俯瞰することができたり、過去のデータにアクセスすることができるなど、位置や時間すら意味を持たなくなります。
しかし、位置が意味を持たなくなると同時に場所は均質化し、建築のことばで言うところの「場所性」を失うようです。たとえば、グーグルストリートビューで世界を旅行しても当然実感が沸くことはありません。

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ナポリの公園見ながらで冷凍ピザを食べても何一つ実感は感じられない。。

水野さんが過去慶応SFCで取り組んだ、情報空間に場所性を持たせ、リアルでは気付かなかった街の断片を見つけることを目指したシミュレーションなども提示いただきました。
※SFCのキャンパスを3Dで再現するシミュレーション

受講生から

未来の都市はどのような姿になるのか。
ゆらぐ世界では、消費のための都市は不要となってしまうのか。

という問いがありました。

個人的な答えとしては、リモートでのやり取りが基本になり、移動など身体的な制約から多少は開放される未来は十分ありうると考えます。
しかし、対面で話すことがより付加価値となり、引き続き物質と紐づいた都市の価値は持続され、連動すると考えています。
この価値観も「リモートネイティブ」な現在の小・中学生が社会に出るころには時代遅れととらえられてしまうのでしょうか。。。

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3.ゆらいだ世界に対する問い

ワークショップの冒頭、水野さんから以下の問いを提示されていました。

問:情報環境と物理環境の境目があいまいになると、
あなたの企画はどう変わりますか?どんなことができますか?

BOOST コースの受講者ではなかったため、企画ではなく自分の会社でどのような変化が起こるか想像し、以下の回答をしました。

回答:
・会議や仕事がWebベースになると、会議や仕事の状況を見直すことが出来、第三者が人事評価を行う際のエビデンスが増える。
・採用の場に部署の「観戦者」が増え、新しい意見をもらうことが出来る。

講義内で回答を水野さんに取り上げていただき、オーウェルの1984的な世界観だとの指摘をいただきました。

1984ではビッグブラザーという名の支配者が全ての人を監視するディストピアが描かれており、仮に仕事でWebベースでパフォーマンスの低下が確認できたり、進捗状況が監視されるシステムが導入されるのは怖いよねとのこと。確かに、無意識下で自動的に監視されるシステムはディストピア的かもしれません。。

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前者の場合は人事評価の際に良いパフォーマンスが出ていた時のスナップショットを自分で選択して提出できれば、ポジティブな使い方もできるかもしれません。
後者についても、面接者の同意を得れば、シニア層の印象だけでなく、一緒に働くことになる若手~中堅のメンバの意見をくみ上げることができる新しい採用の形となりうります。
どちらもまともな会社であればという前提付きですが。。。

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4.ことばの選び方

ワークショップの後半ではBOOST コースの受講者による企画の紹介が行われました。

・イワを忘れない
岩の概念を考える場所としてカフェを作る。岩の絵を通して完成と記憶を再発見するワークショップをひらいて、様々な人から見た岩の概念を掘り下げる。
※プロジェクトメンバーによる1日1枚岩のドローイングを発信するTwitter

・スーパーカップバニラ味
街を走るアドトラ(バーニラバニラのあれ)に着想を得た、キャッチーで下品な表現の魅力を伝えること、メディア批判を目的とする。コロナについてのメッセージをバニラのメロディにラップに乗せた楽曲。

・アスマス目聞くオニはアメこよいサス
→引きこもりの人の孤独感の払しょくを目的とした髪を切らない美容師のパフォーマンス(?)

・オンライン部活 -居場所部-
オンライン上に目的なくただいられる空間を作ることを目的とした企画。
spatial chatを用いた居場所の作成を行っている。

参考)spatial chatのすばらしさを紹介しているnote

各企画について水野さん含め、講師メンバからブレストを受けていましたが、その中でも特に感銘を受けた指摘が、「伝えたいメッセージを英語にして考える」という手法でした。
イワを忘れないの企画についてのフィードバックで、

イワを忘れないは英語にするとどう表現されるか。Don't forget stoneでは企画の内容が何もわからない。
Forget making for stoneやStone as micro agentのように一言で端的に表してみると良い。
英語にできないものは抽象的にしか考えていないからである。

抽象的な日本語でごまかすことは日々の業務の中でもやりがちです。分かりやすく説明するのは大切で、言葉の選び方も丁寧に考えるべきだとの指摘は心に留めておきたいと感じました。

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就活生時代絶対なりたくなかったウザリーマンになってる気がする。。。

5.余白の重要性

水野さんは講評の中で、上記の企画がビジネスを主軸に置いていない点にも着目すべきと述べられていました。
いわゆるソーシャルスタートアップのイベントでは、デザイン思考のWSでビジネスを作るなど、短期的な課題の解決が目的となっていることが多い。

こういった企画に遊びの余白がないことに懸念を抱いており、本業での自分の立ち位置を新しくする・見直す・良くするために普段の生活に入れ込む必要性を説かれていました。
余白を作らなければクリエイティブは生まれないとのこと。

社会人になってからというもの、業務に追われ、全ての物事を損得勘定や将来性で考えてしまう自分を恥ずかしく感じました。確かに余白の在り余った大学時代はもっと創作意欲があり、新しい仕組みを常に考えていた気がします。。。
今後は人生に余白を積極的に取り入れていくこととします。

6.現実とインターネットが交錯する事例の紹介

最後に、水野さんに紹介いただいた2つの観点でのゆらぎの事例のリンク集を作成しました。
・immobility in physical realm:コロナなどで物理的な移動が出来なくなった社会でも、情報技術の身体拡張によって新しいコラボレーションが起こる。
・mobility in digital realm:情報領域の移動もより拡張され、時間的・空間的制約を超越した体験を行うことが出来る。

immobility in physical realmの事例
・Google Arts&Culture
建物全部を3dスキャンした拡張現実。美術館の収蔵品をストリートビュー形式で鑑賞することが出来る。

※先日まで森美術館で企画されていた未来と芸術展でも同様の取り組みがされていた。個人的にすごく気に入っている展示なのでぜひ。

・Isolation Stories
イギリスの作成が作ったショートドラマ。コロナ禍で町全体のロックダウンが決まってすぐに企画されたもの。スタッフを派遣することが出来ないため、俳優宅に撮影機材を郵送し、家族の協力で撮影を実施。Zoomに常時接続して指示出ししながら撮影を行い、実際にテレビ放映された。

・Forensic Architecture
シリアの実情を訴える目的で、収容所に収容されていた人の証言から内情の分からない収容所を3Dモデルに立ち上げて検証した事例。虚構ではないが、記憶や証言から再現する新たな創造である。

mobility in digital realmの事例
・sentimental experience
グーグルストリートに時間軸を取り込んだ作品。コロナウイルスの影響で恋人と二人で過ごす時間が長くなり、関係が悪化。乗り切る手段として、ストリートビューで過去を振り返り、中高のアルバムをめくるように昔話をしたり、終息後の旅行計画を立てたりと、将来に向けた話を行った。

・あつまれどうぶつの森の政治利用
香港の民主主義運動があつまれどうぶつの森環境で実施され、Nintendo Switchが中国で発売禁止に。国境をまたいで思想を飛びさすことが出来なくても、ゲームを戦略的に用いることで政治的な発信も可能に。

・intervention of physical space with HMD
IDFAの展示の一部。アムステルダム中央駅で、ヘッドマウントディスプレイを用いた新しい映画の鑑賞体験。メイン駅の意味合いがはく奪され、拡張空間で鑑賞を行う新しい取り組み。

・デジタルエスノグラフィー
人類学者のセカンドライフ※の中を旅しながら人々がどのような暮らしをしているか記録したエスノグラフィー。 未開の部族の生活だけでなく、未知の世界として、バーチャル世界でどう生きているかの調査を行った。
※エスノグラフィー:文化人類学などにおける「行動観察」
※セカンドライフ:アバターを用いて利用する巨大なバーチャル世界のゲーム
※デジタルエスノグラフィー:従来は実際の世界で様々な文化や民族などを対象に行っていた観察を情報世界にも拡張して行うこと。

講師紹介

水野 大二郎(Daijiro Mizuno)

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1979年東京生まれ。2008年Royal College of Art 博士課程後期修了、芸術博士(ファッションデザイン)。2012年 -2019年慶応義塾大学環境情報学部准教授、2019年から京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab特任教授。デザインと社会の関係性を批評的に考察し架橋する多様なプロジェクトの企画・運営に携わる。主な活動にDESIGNEAST実行委員、インクルーシブデザインの普及・実践活動、蘆田裕史とファッション批評誌『vanitas』の刊行、共著書に『x-DESIGN』、『Fabに何が可能か』、『インクルーシブデザイン』、『リアル・アノニマスデザイン』、『fashion design for living』、『ファッションは更新できるのか?会議』などがある。



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