10年ぶりの出逢い(6)
時計の針は午前4時に近づいてきた。
「そろそろ閉店させていただきます」というマスターの静かな声がオレたちを現実に引き戻す。
「ごめんなさい、変なところ見せちゃって。引いちゃうよね?」
「全然!LINEとかFBやってたら交換しようよ」
始発までまだ時間があるので、お互いタクシーで帰ることにした。
駅前のタクシープールまで歩く。
少しふらついているサエコの腰に腕を回し支えてやる。
「きょうは変な話してごめんなさい」
「そんなことないよ」
「なんかね、昔から知ってる人みたいで…」
「僕もそんな感じがしてる。今度いつ会えるかな?」
「再来週くらいかな…」
「じゃあLINEで相談しよう」
一瞬、サエコの唇を奪おうかと思ったが、今夜はやめておくことにした。
次回ゆっくり話して、お互いに求めるものがあれば、その先へ進もう。
タクシーに乗り込もうとするサエコを一瞬引き止めて額に口づけした。
「ありがとう、タケちゃん」
「気をつけて。またゆっくり話そ」
(つづく)
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