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初デート(3)

気がつけば23時を回っていた。
終電が気になる時間帯だ。
サエコが手洗いに立った間に会計を済ませる。
今夜はオレの奢りと決めていた。

戻ってきたサエコと次のデートの約束を交わす。
「来週また逢いたいけど、出張とか入ってて…」2週間後の週末に逢うことにする。

終電まではまだ少し時間がある。
ぴったりと寄り添いながら「好きだよ」と改めて囁いた。
サエコは「でも私、おっぱい小さいよ。それでもいい?」と小声で答える。
胸の谷間からそっと手を差し込み、サエコの乳房をまさぐる。
確かに大きくはないが、形の良い乳房が掌の中で柔らかく温かくその存在を主張している。

店を出てエレベーターに乗りこむ。
カゴの中でもう一度熱い口づけを交わす。
腕を組み駅へ向かう。

都心の大きな駅なので、複数の路線が乗り入れている。
週末の終電タイムとあって、普段より人混みが多い。
サエコはJRへ。オレは私鉄だ。
JRのホームまで送り、無事に乗車するのを見届けて、私鉄ホームへ向かう。

週末の終電はいつもより混んでいた。
吊り革にぶら下りながらサエコにLINEを送る。
「きょうは楽しかったよ。ありがとう。好きだよ」
サエコから「ありがとう」の返信が来る。

ホテルに連れ込む気は最初からなかった。
まだ出逢ったばかりだし、初めてのデートだ。
もう少しサエコのことを知りたい。
どうしてオレとデートする気になったのか?
オレのどこが気に入ったのか?
これからどんな展開を期待しているのか?

オレのことも知ってもらいたい。
生い立ち、幼少期の思い出、食や酒の嗜好、趣味、身のこなしや言葉遣い、喋り方…様々な要素が複雑に絡まりあって人格は形成されている。
そうしたピースを一つひとつ自分の中で組み上げて〈オレにとってのサエコ〉というパズルを完成させていくのだ。
そうした作業を怠ってカラダだけ求めるような行為は、今のオレにはできない。
これが、〈最後の恋〉となるかもしれないのだから。

ふたりの独立した人格が交わることで起こる化学反応…それによって相手も自分も変化していく。
それが良い変化となるか、悪い変化となるか…それはまだ分からない。

(つづく)

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