
YouTubeは書類審査、TikTokは2秒面接
ずっとYouTubeの再生回数に不信感があった。
なんでこんなのが。
その不信感は、TikTokの登場によって是正されつつある。
YouTubeで再生されるには、3つの関門を突破しなくてはならない。
まず検索需要。
日常的に検索される有名人や固有名詞を3%、その他を97%として、この記事を今読んでいるあなたも僕も、97%側の人間とする。
なので、作った動画のタイトルに検索されるワードが入っていない限り、1000年経ってもそれが再生されることはない。砂浜に小石を投げて見つけてもらうようなもの。
次にサムネイル。検索ワードで視界に入っても、タップしたくなるサムネじゃないといけない。
格好もみんなほぼ同じの夏の湘南海岸で、自分を見つけてもらうにはどうすればいいかを考えなければならない。
サムネイルの難しさは、単に目立たせればいいというデザイン性の問題に留まらず、タイトルに合っているかどうかという、もう一つの難しさがある。
いつの世も目立つイケメンや美女は、顔だけじゃなく、スタイル、体型、髪型、アクセサリー、全てのバラスが整って初めてそれになる。どこか一箇所が優れているだけではダメで、全体のバランスが重要なように、タイトルとサムネの整合性が取れてないといけない。
最後に内容だ。
内容さえ面白ければ、と考える者は多いが、あくまでそのタイトルとサムネから連想される範疇内においての面白さが用意できてないといけない。その期待から外れてると「釣り」と一蹴される。
例えそれが有意義な内容であっても、パスタのレシピを知りたい人にタイヤチェーンの取り付け方を見せても反感を買うだけだ。
つまりYouTubeで再生されるには、①検索需要のあるタイトル②それに付随するサムネ③それらから連想される面白さ、を作る技術が必要になる。
TikTokにそういった技術は必要ない。とにかく面白ければいい。①と②がないため、そこの脈絡も気にする必要なく、面白ければ勝ち。
TikTokで一つ難しさを挙げるなら、冒頭2秒で全て判断される点だ。検索して出てきたものではない、求められていない出会い頭だから、冒頭2秒でつかめなければ飛ばされる。
それでも、検索されないと視界にすら入らない世界よりはいいと思う。
言うなればYouTubeは書類審査、TikTokは2秒だけ直接アピールできる面接。
倍率の高い人気企業に就職したいとなったとき、まず書類審査だけで10万人の中から選ばれるかどうかの戦いがある。志望動機や自己PR欄になんと書くか。強みになる資格はあるか。出身大学や高校はどこか。字が汚ければ印象も悪い。証明写真に映る自分は客観的に見てどうだろうか。
TikTokは経歴もなにも一切関係ない。高卒だろうがなんだろうが、とりあえず2秒は面接官に見てもらえる。写真映りもクソもない。2秒は会える。そこで興味を持ってもらえればもう2秒、さらに5秒、10秒と見てもらえる。ゴッドタレントと同じ。面白ければ一発登録、ゴールデンブザーもありうる。
そんなTikTokも利用者が増え、日々レッドオーシャン化していくが、高い精度のアルゴリズムによって、興味を持ってくれそうな人に動画を表示させくれる仕組みが強い。
あなたが車業界に入りたければ、あなたの分身を車関連企業の面接官に一気に送ってくれる。トヨタ、ホンダ、ガリバー、オートバックス、カーメイト。
車に関連する動画を上げているなら、車が好きな人に表示させてくれるということ。需要と供給のマッチング率が高い。
以前、黒澤明監督について語る動画をTikTokに上げたら一気にバズり、あいみょんや本田翼を語る動画より伸びた。TikTokの利用者層を考えれば、あいみょんや本田翼に関心がある人の方が多いと考えてしまいがちだが、Tiktokのマッチング率は半端じゃなく、ターゲット層やら検索需要をこちらが考える必要はなく、内容が全てになる。
YouTubeも対抗措置としてショート機能を実装し、2023年2月より収益化も開始したが、まだまだアカウントパワー優位である。
どれくらい投稿しているか、いいねやコメントはどれくらいあるか、LIVEをしているか、様々な指標でアカウント評価がされるというが、登録者が多いアカウントは動画を出せばすぐにいいねやコメントがもらえるので、「面白い動画」という評価をされやすく、多くのスマホに表示されやすい。
そしてこうなる。
なんでこんなのが。
TikTokは登録者数は関係ない。面白さが全て。
全く関係ないとは言わないが、YouTubeほどではない。
ショート文化が誕生してなければ、未だに需要があるタイトルを考えることに時間を費やしていたと思う。
検索されるタイトル、タップされるサムネ、その期待感を満たす内容を考える、それ即ち、内容主導ではなく、タイトル主導の内容になる。YouTubeで伸びるものがハウツーものに偏っていくのは、なにかを知りたい、調べたい、という人の需要に答えているからだ。
「こんなん面白いと思うんですけど、どうですかー?」というその他97%の知らない人から発せられる動画より、お料理レシピや、車の塗装、DIYや世界情勢、最新ITなど、みんなの「知りたい」を満たせないといけない。
TikTokで知ってくれる人が少しだけ増えたので、先日連載開始した、拙著の小説もそちらで先に告知し、早くも感想を頂けた。
本来、僕なんかが小説を書いたところで1万年経っても読まれない。まさに、その他97%から発せられる、こんなん面白いと思うんですけど、どうですかー?になるところだが、鷺谷が書くなら読んでみようという環境を作れたのも、ショート文化のおかげである。
内容に時間をかけれる今、毎日が楽しくてしょうがない。
いつもはタイトルとサムネに手間暇がかかり、公開後も反応が悪ければ、またタイトルとサムネを作り直し、なんでこんなことに…というストレスと足りない時間に追われていたが、今は、内容にかける時間が足りなく感じるようになり、嬉しい悲鳴だ。
noteは未だタイトルとサムネ勝負につき、今後もここに来る頻度は少ないだろうが、現在某サイトで連載中の小説を、数カ月遅れでここにも掲載していくつもりだ。
「卵は一つのカゴに盛るな」と投資の世界でよく言われるが、とにかく昔はYouTubeしかなかった。この書類審査で勝てなければダメだった。
それがショート文化の台頭により、TikTok、Instagramリール、YouTubeショート、1つの動画で最低3つのフィールドに出せる。
また、僕のYouTubeは音声配信が主なので、今は、YouTubeにアップしたものを一部Spotify、Apple Podcast、Amazon Musicからも配信している。ここからも少しずつ流入が増え始めた。
頑張って作った動画がYouTubeという大海に投げ込むしかなかった頃は大変だったが、今はいくつものところへ投げることができる。まるで昔のテレビとネットの関係のよう。それくらいYouTubeはネットの世界で一強だった。
今からなにかを始めようという人はいいなあ、と思う。
というわけで拙著の小説も、公開タイミングを変えながらnote、個人ブログ、様々なところへ投げ込んで行く。
いいなと思ったら応援しよう!
