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日本は四季から五季になった
夏といえばTUBEという時代があった。
サザンオールスターズの夏もいいが、日本の夏を描写させたらマーシーが天下一品である。
『夏の朝にキャッチボールを』『いかすぜOK』『夏なんだな』『多摩川ビール』『プール帰り』、究極がソロアルバム『夏のぬけがら』。
しかし、日本から夏は消えた。
私が小学生の頃の最高気温は32度くらいだった気がする。もっと高い日もあったかもしれないが、7月からここまで連日35度、40度なんて話はなかった。小学校にエアコンもなかったし。
今の夏は我々が知る夏ではない。40度にも到達する季節はもう夏とは言えない。「夏ってやっぱいいよね」とは思えない温度だ。「外に出るのが危険な季節」と認識を変える必要がある。
おそらく今の夏は6月から7月上旬までで、7月中旬から9月初旬までは、「夏ではないなにか」だ。
春夏秋冬という四季ではなく、五季の誕生。四季に一つ足した方がいい。名称はなにか。
「酷暑」や「酷夏」がいいのではないかと言う人がいるが、どうせなら漢字一文字、ひらがな2文字の方が、春夏秋冬に加えやすい。
「熱」がいいのではないか。
「熱」が季節を表すものになれば警戒する人が増えると思うからだ。病的な意味合いを含んでいるのもいい。
今の50代やそれ以上の世代は、なるべくエアコンを使わないようにする傾向がある。それは、エアコンをあまりつけなくても夏をやり過ごせたという経験があるからだ。
電気代の問題もあるが、つけっぱなしはなんとなく身体に悪い、という偏ったイメージも持っている。
ただこれが、「夏」ではなく「熱」だとなれば、もう時代が変わったとはっきり認識するだろう。
または夏ごとをなくして、春熱秋冬としてしまうか。
昔、「暴走族」の呼び名を「珍走団」にしようという動きがあった。
みうらじゅんさんは、覚醒剤を「おならプープー剤」という名前にすべきと言っていた。
本当にそうなったら誰も珍走団なんかやりたくなくなるし、おならプープー剤もやらなくなると思う。それくらい、言葉の影響力は絶大だ。
季節の言葉を変えるか増やすかするだけで、夏に対する警戒心は大きく変わり、高齢者の孤独死が減るのではないかとわりと真剣に思う。
8割の流儀・鷺谷政明
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