文章構成のルールを知る
〈はじめに〉
※これから語られる言葉は少し長いかもしれませんが、なんども読み返してください。
※できれば声に出して読んでください。文章のリズム、語感がしぜんと身につきます。
ひとつひとつの文をじっくりと見つめて、間違いがないか、誤解を与えないか、書き手のイメージと読み手のイメージができるだけ重なるようにかけているか。いい文とは何か。正しい日本語表現の使い方ができているか。共通理解は成立しているか。これらのことについて、あらためて確認しながら進めてきました。
しかし、これは考えてみるまでもないことですが、文章表現というのは、あるワンセンテンスだけで成り立っているわけではありません。たしかに、ある場面では、「メシ」「フロ」「フトン」の単語だけで生活を送ることはできるでしょうけれど、それはわたしたちの目指すところとはずいぶん違っているようです。ひとつひとつの文に、「いい文」「正しい文」があるように、文と文のつながり方についても、一定のルールやスタンダードがあります。ということで、今回は、文と文のつながり仕組みを学びましょう。
【一文はみじかく】
センテンスのつながりは、短いほうから順に、
文 → 段落 → 文章
とつながっていきます。最少のつながりは、ひとつの文です。ここでいう「一文」とは、ある言葉からはじまって、たいていの場合、句点(「。」のこと)で終わる、ひとつのまとまりのことを指しています。
例文をつかって、一文を分解してみましょう。まずは簡単に主語と述語(動詞)をわけます。
①バラが咲いた。
主語=バラが、述語=咲いた
②真っ赤なバラが咲いた。
主語=バラが、述語=咲いた
③さびしかったぼくの庭にバラが咲いた。
主語=バラが、述語=咲いた
どの文も、ひとつの主語とひとつの述語がはっきりと書かれていますね。文の軸、文の芯をつくっているのは主語と述語です。それ以外の言葉は修飾語と言って、あくまでもサポート役に徹します。たとえば、②の「真っ赤な」は主語(バラ)にかかる修飾語(形容詞)、③の「さびしかったぼくの庭に」は、述語(咲いた)にかかる修飾語(場所を表す副詞節)です。小学校の国語の教科書に出てくるようなきれいな文をつくるには(それがかっこいいかどうかの価値判断は別にして)、主語と述語をはっきりさせることが大事、と覚えておいてください。では、次の文はどうでしょうか。
④ぼくの髪が肩までのびて、きみと同じになったら、約束通り町の教会で結婚しよう。
主語=髪が、述語=のびて? 同じになったら? 結婚しよう??
この文では、主語(髪が)に対応する述語がいくつかあるように見えます。でも、よく見てみると、「髪がのびる」は、この文の軸ではないようですし、「髪が同じになる」も中心の意味ではないようです。「髪が結婚しようよ」と読むにいたっては意味不明ということで、なにかが足りない。そのなにかを見つけるために、述語のほうから考えてみます。
この文の軸となる述語はどれでしょう。もちろん、「結婚しよう」ですね。では、結婚するのは誰でしょうか。結婚する、の主語は? もちろん、「ぼく」と「きみ」でしょう。そう、足りなかったのは、軸となる主語、「ぼくときみ」あるいは「ぼくたち」です。
文の軸となる主語が書いていない場合でも、私たちはごく自然に意味を補って、理解することができます。結婚するのはぼくたちだ、と。ところが、主語と述語の関係がはっきりと書かれていない文を積み重ねていくと、そのうち読み手がついていけなくなってしまいますから、できるだけ主語+述語の組み合わせははっきりと示すほうがいいでしょう。
④´ぼくの髪が肩までのびて、きみと同じになったら、約束通り町の教会で(ぼくたちは)結婚しよう。
主語=ぼくたちは、述語=結婚しよう
いちおう補足しておくと、「ぼくの髪が~同じになったら」までは、「ぼくたちは結婚する」にかかる修飾語句(条件を表す副詞節)です。修飾語句の中にも主語+述語が成り立っていますが、それは修飾語句の中でのハナシ。あくまでも修飾語句はサポート役にすぎません。このことは、反対から見ると、主語+述語の組み合わせが、一文の中に複数出てくると、どれが文の軸となる主語+述語なのかがわかりにくくなる、ということです。
たとえば、次のような文は一度読んだだけでは、意味がつかめない、いわゆる悪文です。
田中は佐藤が鈴木が提案した改革案は実現可能性が高いと評価した態度は間違っていると感じた。
主語になりそうなことばである、「田中は」「佐藤が」「鈴木が」「改革案は」がいっせいに続けて書かれているので、どれがこの文の軸となる主語なのかが、とてもわかりにくい。仮に、前回学んだテンマルを使ったとしても、わかりにくさは解消されそうにありません。
(テンマル)
田中は、佐藤が、鈴木が提案した改革案は、実現可能性が高いと評価した態度は、間違っていると感じた。
せっかくですから、語順を変えることで解決できるかどうかもやってみましょう。
(語順)
鈴木が提案した改革案は実現可能性が高いと佐藤が評価した態度は間違っていると田中は感じた。
これなら、多少は意味がとりやすくなったかもしれません。しかし、すぐに理解できるかと言われると、どうでしょう。このように、一文に主語+述語の組み合わせが複数入っている文をつくること自体が、どうやら間違っていると考えるほうがよさそうです。
(せめて)
鈴木が提案した改革案は実現可能性が高いと佐藤は評価したが、その態度は間違っていると田中は感じた。
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