僕の裏詠み on リリック 「指 さえも」 小沢 健 二
‘酔い に まかせ て 月光 の 下 キス を し た’ ・・・・・・・と、 スキャット の あと に 歌 は 始まる。
決して 歌い上げる では ない、 朴訥 と し た 子供 の よう な 歌 いま わし が 絶妙 で、 僕 は この ミレニアム の 風 が 吹く 少し 前 の 1997 年 に 発表 さ れ た 曲 を なにか と、 ちょいちょい 口ずさむ。
街 で 人気 の あの 女の子 に「 酔い に まかせ て キス し ちゃっ た・・・や べ ぇ・・・・」 という Desperation( 絶望)。 そこ から 一転、 彼女 の 姿 が みえ て 手 を 振っ て くれ た だけで ホッ として escalation( 増大) し て いく 気持ち。 「あー やっ ちまっ た。 どうせ、 もう ダメ か・・・はぁ、 寝よ っと」 という 諦め から、 一気に「 ナニコレ。 いけ ちゃう かも!?」 という 高揚 感、 そして 世界 が 自分 中心 に 回っ てる かの よう な「 神展開」。
私小説 的 な 狭い 狭い 世界 で おこる、 ベタ な 恋愛 展開 を 指し示す だけなのに、 やたら と 2000 年、 3000 年、 そして 5000 年 という スケール でかい 尺度 を もっ て し て 気持ち が 表現 さ れる。 今年 は イエス キリスト の 生誕 から 2018 年( とある 一説 に よれ ば) で、 5000 年前 と いえ ば 縄文時代 だ。 遥か 遥か 悠久 の 時 を 思う、 その 時 の 距離感 と 想い の 強 さが、 数 千年 という イメージ には 集約 さ れ て いる ん だろ う な・・・。
しかし、 で ある。 ふと 思っ た。 人生 を 1 年 ごと の スライド に し た と する。 そこで 80 年 の 高齢者 が 30 人 程 いる と、 実は 2400 年分 の スライド で ある。 ちなみに 平均 80 歳 の 高齢者 が 30 人 程 と いう と、 小さな 特別 養護 老人 ホーム は、 その サイズ くらいで ある( きっと 地域 には 必ず 一つ ある程度 の 規模 で ある)。 ふむ。 時間 の 感覚 って おもしろい。 2000 年 の 歴史・・・・それ は 比較的 手近 な ところに 存在 し て いる こと に 気づく。 数 千年 の 時空 を 超える 気持ち も、 確か に あり 得 ない こと は ない かも しれ ない・・なんて。
小沢 健 二 の Sing like talking( 話 を する よう に 歌う) な 声 は とても 程よい 温 さを もち、 冒頭 から 同じ トーン を 維持 し て ラストシーン を 迎える の だ けど、 その 頃 には、「 何 千 回 も」 キス を し たり、 同じ ベッド に 入っ て「 最初 に キス し た 時 の こと、 覚え てる?」 みたい な 会話 を し て いる 二人 に 発展 し て いる。
象徴的 なのが、 繰り返さ れ、 そして タイトル に 繋がる 一節
「あの 人 の 指 さえも 今 僕 の もの」
おいおい、 とんでも ない サイコ 野郎 だ な・・・と 意地悪 な こと を 思っ ては いけ ない。 キス を 何 千 回 し ても、 その 人 の 気持 が 本当に 自分 に 向い てる か、 なんて 誰 も わから ない。 ただ、 指 という 彼女 との 再会 を 示し て くれ た 象徴的 パーツ が、 これから の 二人 の 前 に 連なっ て いく「 人 と 人」 の 生活 の 道標 に 感じ られる。
同じ ベッド の 中、 まどろみ ながら 会話 を し て、 何 千 回 目 かの キス を し て、 今 まさに 繋ぎ あっ た、 その 掌 の 中 で。
≪週刊キャプロア出版編集部. 週刊キャプロア出版(第3号): フィクションに掲載されたものをそのまま載せています≫