僕の裏詠みonリリック×満月の夕/SFU と HEAT WAVE

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『満月の夕(1995) / Soul flower Union』

『満月の夕(1995) / Heat Wave』

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世界をどこから眺めたか?            足元から壊れていく平らかさ

時は1995年厳冬、あの阪神大震災の被災地である神戸・長田で、震災直後に生まれたこの曲は、ソウルフラワーユニオンの 中川敬、ヒートウェイブの山口洋、二人のミュージシャンによりそれぞれ、別に世に放たれました。

言い換えると、
それは平成7年1月、
「平らかに成る」はずだった日本の世界の地盤の下から、平らかが、崩れた冬。
その晩は、満月だったそうです。

急にやってきた震災、がれきの街、火災、人が狂う世界。
急に始まるインフラの崩れた生活。
電気、水道、水に困る生活。
日本人の望む想定からは、一番程遠い現実が舞い降りた、その冬の神戸近郊。
1か月後、また、満月はのぼる。
その晩、被災地では、また「ひどい揺れ」が来るというような噂もあり、
不安が不安を呼ぶ状況だったそう。

ソウルフラワーユニオンというバンドは、関西中心に活動するロックバンドだったこともあり、中川さんは震災直後から、神戸の街を訪れ、その現実の重さをみつめ、
慰問の為になんどもなんども、チンドン屋スタイルで、ライブを繰り返しました。
(ソウルフラワーユニオン・モノノケサミットというアンプラグドな楽器で構成するライブをやっていました)

その日々の中で、盟友のヒートウェイブの山口さんと共作した「満月の夕」の主旋律。

そこから関西の地で被災地に入り、現場を見つめる歌詞を紡いだのが中川さん、

また、東京在住であり、被災地からは遠い場所で生活をしていた
山口さんは、また別の歌詞をつけたのでした。
そしてお互い、それぞれ違う見地からだと認めあった2つの歌詞。

同じ曲から生まれた、ふたつの歌詞。
ふたつの歌詞の存在する、この同じ1曲は、
たくさんのミュージシャンにカバーをされ、歌われるようになります。

悲しくてすべてを笑う。乾く冬の夕

この地に流れる、時間。
もし、1か月前に逆回転させたなら、
誰と、どんな話をしてただろう。

もしくは、

「今」という時間を胸に刻まなくてすむこと、
ただ、当たり前に過ぎていく時間のその有難みについて知る必要がなかったなら。

こうして何かを新しく知る為に、なにかの犠牲を払う必要がなかったなら。

ああ。
この満月をただ眺めていれたなら、
そこに水がながれ、壁に囲まれ、暖を自由に求めることができたなら。

そこに流れる時間や、当たり前に当たり前をただぶつけることができる日々が
もし、続いていたのなら。

今頃、僕は、だれとどんな話をしただろう。

ほら。みてみ。
今から1か月前に、この町をがれきに変えたあの晩と同じ満月が
また、律儀にやってきた。

1日は本当に24時間だっただろうか。
1時間は本当に60分だっただろうか。
どうも、そんな風には思えなかったけど、
なにはともあれ、28日から30日くらいが経ったのだ。
また、満月がやってきた。

大きな声で笑う人達。
寒さの中で、どこにも逃げられない人達。
今、肩幅の下にある地面に、
ふたつの足をのせ、僕達はそれぞれ踏みとどまる。

もう、笑うしかない、この世界で。
僕は自分の肩幅の下にある地面に自分の体重を乗せ、踊りあかすしかない。

空には、あの1か月前の満月。
地面には、あの1か月前の地面。
この一か月に過ぎた時間を思わせるのは焚火から溢れる白い煙。

平らかに成るはずだった時代のはずれで、
平らかではない地面の上で、
焚火を囲み、白い息をみつめ、僕らは踊る。
今を刻む「必要」を無理にでもリズムに変えて。

残された、最後の命で笑う。
今日という時間を刻むステップに変えて。

声のない叫びは煙となり、風に吹かれ空へと舞い上がる。

僕には何かを語ることはできない。
僕そこに居合わせなかった時間、流れる風景について。
僕たちは、勝手な感慨で、勝手な言葉をつけることはできないのだ。

そこに流れる、折り重なる有機化合物や無機化合物の燃える匂い。
そこにある、土ぼこり。
そこに溢れる、寒さ痛みつらみ。
そこでたちののぼる激情と不安。
確かに、大勢、命がなくなったのだ。
確かに、たくさんの建物が崩れ落ちたのだ。
地面は、面ではなくなったのだ。あの時。

僕はどうしても、
何かを語ることはできない。
この風景を想像しては、僕はことばをつむぐことなどできない。

・・・・それでも、祈りたい。

本能を解き放とう。いのちで笑おう。
すべてを無くした今。
それでも、それでも人は、人と、出会い、いつか、きっと。
いつか、再び。だから、きっと。

言葉には意味がなくても、言葉にできなくても。

言い切れる言葉などない世界。
だからこそ、また、来月、
解き放った本能で、そして命で笑おう。

また、来月、今から28日から30日くらい経ったら、のぼるだろう、この満月の下で。

解き放て   いのちで笑え      満月の夕

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