田舎の公立中学校で外部指導者を導入してみた話③

早くも3回目となりました、実証レポート!

今回は、「外部指導者」目線で、実際に感じたことを書いていきたいなと思います!

指導者に興味がある方、これから教師を目指している方など、必見です!!

1、「何をさせるかではない。いかにさせるかである。」

冒頭から、かっこつけてしまいましたが、これは私の指導者の師匠とも言える先生から2年前に授かったお言葉です。

それまでの私は、「どんな練習をさせようか」ということにばかり固執し、その練習をどのように落とし込むかについて、あまり考えることができていませんでした。

そんな中で約3年前、師匠と出会います。

師匠はとてもシンプルな設計の練習をされます。しかし、その練習には明確に「落とし込ませたい要素」があり、それを徹底されていました。

そして、選手たちをピリッとさせるタイミングや、逆に和ませるタイミングなど、声掛けのタイミング・バランスが超適格・・・

選手たちは常にいい雰囲気で練習に励んでいました。

以来、私は「何をさせるか」ではなく(当然、何をさせるかも大事だがそれ以上に)「いかにさせるか」を考えるようになります。

すなわち、

・その練習の「キーファクター(大切な要素)」は何か?
・ポイントを意識してできているか?
・緊張感を持って取り組むことができているか?
・丁寧にできているか?


といったことを、常にジャッジしながら声掛けを行い、ときには、練習を止めてデモンストレーションを行ったりする。

非常に難しい。ただ、練習メニューを考えるだけではなく、このようなことができるからこそ、指導者が居る価値があり、「いかにさせるか」の能力こそが指導者としての資質・能力に直結しているのではないかと私自身は思っています。

もちろん、私もまだまだ未熟で勉強中の身ですが、何事もやってみないと上手くなりません。試行錯誤しながら、日々、選手への声掛けの仕方などを工夫しています!

皆さんも是非、私の師匠の言葉を胸に刻み、指導に臨んでみてください!

2、 指導者としての楽しさ・喜び

私は、大学一年生のときから指導者をはじめて、今年で4年目になりますが、指導をしている時間が一番好きです!

では、指導者の魅力とは何か。普段、言語化しようとしたこともないような問いですが、この機会に考えてみようと思います。

まず一番は、教え子が上手になっていく過程を一緒に歩めるということです。
当然ですが中高生はやればやるほど、どんどん上手くなっていきます。その過程の中に自分が居る。指導者という仕事は、そんな彼ら彼女らの力になれる、やりがいが非常に大きい仕事だと思います。

部活動をしていた方は思い出してみてください。自分の部活動の監督・コーチのことは結構覚えていますよね。(もちろん悪い意味で覚えているという方もいらっしゃるでしょうが。。)部活動の指導者というのは、そのチーム全員の、人生におけるキーパーソンになれる存在だと私は思っています。

教師以外で、こんなにも子どもたちの青春に近くで関われる仕事は無いでしょう。。(たまに高校生がうらやましくなって、もうすぐ大学生すら終わってしまう自分が悲しくなることがありますw)

最後の試合が終わり、三年生が引退となったときには何とも言えない感情になるのですが、それもまた、指導者の醍醐味の一つでしょう。大人になって、勝負事で負けて泣けることなんてあんまり無いですからね。


次に、自分も一緒に汗を流せるということです。指導者としての本分とずれてないか?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は、体が動くうちは、一緒にプレーしながら伝えていくことも大切だと思います。口で言うより説得力がある場合もありますからね!
それに、大人になるとスポーツをする機会は減ってしまいます。部活で少し中に入ってプレーするだけでも、自分としては楽しめますし、それも指導者の魅力の一つではないでしょうか!

ときには一緒に中でプレーしながら指導します!

他にも、色々あるとは思いますが、僕が最初に思いついたのはこの2点です!指導者によって、感じる魅力は違うと思います。指導者に興味がある方は身近な方に聞いてみるのもいいかもしれませんね!

ちなみに、私は「学生で外部指導者とか務まるの?」という問いに関して、全力で肯定したいです。大学生や専門学生は、中高生にとって年齢が近く、競技のこと以外にも相談したいこと(たとえば、勉強、進路など)を相談しやすい存在です。さらに、先ほど述べたように一緒にプレーしながら指導することができます。
「学生だからこそできる」部分も多くあります!私は一人でも多くの学生に指導者として子どもたちの助けになってほしいのです!

3、指導者としての難しさ

指導者の楽しさについて語ってきましたが、やはり、難しさもつきものです。

色々ありますが、まずは「誰をどのポジションで試合に出すのか」を決定することはさまざまな意味で難しさがあります。
当然、戦術的な難しさもありますが、部活動が教育活動の一環である以上、できる限り全ての選手に出場機会を提供するべきであるという難しさもあります。選手の出場機会とチームの勝利、このバランスを考えながらの選手起用はとても難しいものがあります。

次に「いかにさせるか」の部分です。冒頭でも書いた通り、指導者には「いかにさせるか」の能力が求められます。インターネット、Youtubeなどを探っていけば、ある程度「何をさせるか」を決めることはできるでしょう。
しかし、それを自分のチームの選手に合った指導法で落とし込むことは、とても難しいことです。

特に、ハードなトレーニングを課す際は、声掛けの仕方、強度の調整など、臨機応変に対応しなければ、なかなか選手はついてきてくれません。サッカーにおいてフィジカルトレーニングは必要不可欠なトレーニングであるものの、選手にとってフィジカルは嫌いなトレーニング最上位でしょうから・・

また、練習外でのコミュニケーションもすごく大切で難しい要素の一つです。普段の何気ないコミュニケーションで、選手と指導者の信頼関係は構築されていくものです。また、選手以外にも指導者間でのコミュニケーションや保護者とのコミュニケーションも欠かせません。チームに関わる大人の方々は、自分の心強い味方です。選手について自分が知らないことを知っていることも多々あります。

ただ、ここまでで述べた「難しさ」は、同時に「やりがい」や「楽しさ」と表裏一体でもあります。

難しいからこそ、楽しいのです。(笑)

4、 東部中サッカー部での実践例

ここまで、つらつらと私の実体験からくる「外部指導者」の魅力や難しさについて述べてきましたが、実際に東部中ではどんな魅力や難しさに出会ったのかお話したいと思います。

4-1 中学生と高校生のギャップに直面

私は、大学1年生の時から母校である鹿島高校のサッカー部で外部指導者をしています。途中、1年間ほど地元の中学年代サッカークラブでGK(ゴールキーパー)コーチも兼任していましたが、本格的に中学生のチームの指揮を執るのは初めてでした。

ここだけの話、「まあ、高校での経験もあるし、大丈夫だろう」という気持ちはありました。が、残念ながらそう簡単ではありませんでした。。(笑)

まず、当然ながら高校生と中学生では発達段階が違います。ヒトという生物の特性上、それは当然のことです。
すなわち、高校生と同じような指導を中学生にしても、効果的ではない(場合がある)ということです。

また、中学生と高校生では、鍛えるべき部分が違います
例えば、高校生は筋肉系の、中学生は循環器系・呼吸器系ゴールデンエイジと言われています。このように、年代によって大きく伸びる部分が異なるため、そのようなことを念頭に指導をする必要があるのです。

さらには、特に中学生年代では(もちろん高校生もですが、より)先を見据えた指導をする必要があります。中学生の段階で何を身につけておくと、その後の高校サッカーを含めた長いサッカー人生を楽しめるのか。目先の勝利ではなく、選手一人ひとりのその後のサッカー人生を考えてあげることが指導者には求められます。

実際に高校と中学という2つの異なるカテゴリーを経験し、上述したようなことを、より強く感じました。

では、実際、東部中はどんなチームでだったのでしょうか。
また、北原はどんな指導をしたのでしょうか。

4-2 空気感を変えていくことの難しさ

前回のレポートでも書いていましたが、東部中のサッカー部、第一印象は「ダラダラしてるなあ」でした。

練習態度もそうですが、なかなか人の話を静かに聞けない。自主的に行動することができない。

そして、何よりも自分が今まで指導してきた高校生と違うと感じたのが「言われてもできない」ということでした(笑)

もちろん、他の中学校のチームすべてがそうだとは思いません。現に、鹿島地区の他の中学校は、ちゃんとできる子の方が多い印象です。

まあ、とはいえ、中学生なのでまだまだ未熟なところが多くて当然です。
そんなチームの練習に取り組む姿勢を変えるのは、本当に苦労しました。
というよりも、絶賛苦労中です。日を重ねるごとに、中学校の先生へのリスペクトが高まるばかりです。

ということで、まずは「人の話を聞く」「練習中の私語を減らす」など、チームの空気感を変えていくために、生徒の言動をこと細かに指摘をしていきました。ときには、名指しで指摘をしたり、生徒を個別に呼び出して諭したり。。ありとあらゆるアプローチで改善を図りました。

とはいえ、私一人ではなかなか変えることができない部分も大きかった中で、顧問の先生にもきめ細やかな声掛けなど、指導のサポートをしていただき、とてもありがたかったです。

先生方もサポートに入っていただき感謝です!


4-3 日々、変わっていく子どもたち

そんな感じではじまった東部中の指導でしたが、日々少しずつ子どもたちにも変化がみられるようになってきました。

「話聞こうぜー」

「歩かず、ジョギングで移動しよー」

「練習始めよー」

このようなポジティブな声掛けが、生徒の中からも聞こえてくるようになってきました。

また、たまたま東部中の野球部の先生が、私の中学時代の担任の先生で、その先生からも

「あいどんも、練習の楽しかて言いよったばい!野球部の方から見よって
も、今までとは動きの違うもんね!」

(注:そのままの熱量でお伝えしたかったので、佐賀弁のまま記載しました。)

と嬉しいお言葉!!

さらには、お隣で練習をされているソフトボールの先生が、私の中学時代のサッカー部顧問の先生で、その先生からも

「練習中に奇声をあげたり、ふざけた雰囲気でしたりすることが無くなった」

と言っていただき、彼らなりに成長しているんだなと実感しました!


プレー面でも、今までは練習中にスライディングしてシュートブロックに行くシーンなど、一切見ることができなかったのですが、そのようなひたむきな姿勢を見せてくれるようになったり

「コーチ!シュート打ってください!」と、キーパーの子がお願いしてくれるようになったり、、

小さい進歩かもしれませんが、こうした姿を見せてくれるたびに嬉しい気持ちになりました!

実際、保護者の方や先生方にご協力いただいたアンケートでも、ほとんどの方が子どもたちの変化を実感されていて「専門的な指導を受けることができる環境は、子どもたちの非連続の成長に繋がるんだ!」と自分自身も、自信を深めることができました。

5、次回予告

いよいよ、指導も終わりに近づき、中学生にとって最も大きな舞台「中体連」を迎えます!

ある保護者さん曰く「初戦敗退レベルのチーム」がどのようなプレーを見せてくれたのか。そして最終的に、どのような結果を手にしたのか。

次回、お楽しみに!!


北原



スポーツをしたことのある人であれば一度は感じたことのあるであろう
「コーチ」「監督」「指導者」への憧れ。

憧れの「指導者」をより身近にし、困っている部活動やチームを助ける。


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