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ロッキー山脈の西と東で。~アリゾナ州とカリフォルニア州の違い~


お久しぶりです。サガです。

最近、世界的に報道されたMLBドジャースの大谷選手の元通訳による銀行詐欺事件、何かこう「ホントに行ったことあるんか」「知ってんのか」というような的外れな日本の報道が多くて非常に歯がゆい気持ちだったので、ちょっと南部編からズレますけど、アリゾナ州とカリフォルニア州に滞在経験がある身としてTipsみたいな感じでお伝えできれば、と思います。

なお、現地時間2024年4月11日に行われたFBI+IRS+HSI+DOJそろい踏みの記者会見でのFBIのエストラーダさんの英語、本当に聴きやすいです。

私の場合、エストラーダさんレベルの英語だったら聴きながら内容タイピング出来る位には明瞭でゆっくりとした発音なので、多分英語が得意な中学生や高校生にはリスニングの良い材料になるのではないか、と思います。(言ってる内容は決して中学生や高校生の教材向きでは全くないんですけどねw)

(大谷批判派急先鋒だったリッチ・アイゼンさん〔この方はかなり著名なスポーツ解説者であり、パーソナリティです〕の英語はかなり速いスピードですし、時々不明瞭な所もありますので、英語学習者向きではありません。)

さて、閑話休題として、アリゾナ州からいきましょうか。

1.アリゾナ州とは?

アリゾナ州は以下の地図の赤で塗られた部分の州です。

見ての通り、がっつりメキシコと結構な距離、隣接しています。

州旗はこちら↓。なかなかにカラフルなので覚えやすいかもしれません。(でもあんまりアリゾナ州内で州直轄の建物以外でこいつ見たことはありません。まあでもニューヨーク州やコネティカット州みたいな北東部の州よりはみかけます)

州のニックネームは"The Grand Canyon State" (グランドキャニオンの州)です。

この州旗に関して少し言及しておくと、上半分の赤と黄色の組み合わせは「スペイン国旗の赤と黄色をオマージュしたもの」で、真ん中のオレンジ(本来は金色か銅色)は「この地域で銅の産出が盛んだったこと」と「日本が『黄金の国ジパング』と言われていたように、アリゾナ周辺に大量の金塊が眠っている、という伝説のおとぎばなし」から、だそうです。

星に関しては本来は太陽が地平線から登り、地面に燦々と日光が降り注ぐことを意味しているらしいのですが、「青」と「星」は合衆国の象徴とも言えるマークなので、日本やバングラデシュ、パラオみたいな丸マークではないのでしょう。

1-1 アリゾナ州の特徴6選

私に「アリゾナ州の特徴を言え」といわれれば、「ガチで暑いんだがガチで寒い場所もあるむちゃくちゃな場所」「ミネラルウォーターの値段がめっちゃ高い」「半分メキシコのような場所」「先住民の居留地がめちゃくちゃ多い場所」「天然資源に恵まれすぎた州」「ガチ保守派の州」です。

いやココで「なんでグランドキャニオンを言わないんだよ」と言われそうですが、普通に観光地で世界遺産で、日本からの観光客も多いし、日本語ガイドツアーもわりかし多いので「『グランドキャニオンに行った』は『アリゾナ州に行った』に入らない」と考えています。

私の場合、カリフォルニア州から州境またいでアリゾナ州に入り、グランドキャニオンまでレンタカーで走破往復しているので(4泊5日で行きました)、より「普段のアリゾナ州民」がどんなもんか、というのは簡単にツアー旅行でコンダクターさんについてってる人よりはなんぼか語れる程度ですが。

1-1-1 マジで暑い。(ちゅうか避寒地)

カリフォルニア南部、サンディエゴやLA郊外も確かに暖かいですし、日照量も多いんですが、インターステイト8号線(I-8)を使ってロッキー山脈を越えると「ガチの盆地&暑さのレベルがおかしい場所」が出現します。

そして、カリフォルニア州内でもロッキー山脈越えただけでがらりと風景が変わります。(I-8のロッキー越えはI-40のアパラチアン越え並に運転きつかったです。そして一気にガソリン代が跳ね上がる・泣)「うわあレッドステート地域だあwww」と思う間もなくアリゾナ州に入ります。

一応Googleマップより。ガチでカリフォルニア州です。ロッキー越えるとこんな感じです。

歴史的背景を言っておくと、太平洋戦争時、西海岸にいた日系アメリカ人の方々はこんなような「ロッキーの向こう」のカリフォルニア州やアリゾナ州の「土地がやせて、何もないような場所」に強制収容されています。割と近くにポストン日系人収容所があります。(私の知人にも「カリフォルニア州で生まれたんだけど、幼い頃強制収容されて収容所で過ごしていた」という日系人の方も居ます。もうお歳を召されていますがすごく元気でパワフルです)

「で、暑いって何やねん」という方のために。
アリゾナ州はマジで冬でも暑い日があります。アメリカの日照の関係もあるのでしょうが、「なんで冬にサングラスかけて運転せなあかんの」と思うレベルで晴れてますし、暖かいです。
当時サンディエゴ在住だった友人を隣に乗せてドライブしたのですが、「あっついねー」とびっくりしてました。

どんだけ暑いか、といえば、アリゾナ州の州都フェニックスの平均気温がこちら↓。

冬でも50~60F°とかぶっ壊れ気候過ぎる。あと降水量すっくな!

なかなか日本に住んでると(というかアメリカに在住経験が無いと)F°(華氏)表記に慣れないんでしょうけど、住んでしまえば慣れるんですよ。私が住んでた某南部も結構あったかい方でしたけど、アリゾナの夏の暑さは普通に気が狂うレベルです。一番暑くなる6-8月で110s F°平気で越えてきて、ひどい日は130F°近くなるとか「そんなんいくら湿度低くても絶対外出たくないやつやん(日焼けがすごいことになる)」というw

逆に上の表から冬を見てみると、湿度50%で60 F°~70F°台。多くの北東部および中西部の富裕層が冬のホリデーシーズン(大体感謝祭から正月まで)に避寒地として選ぶには適しているんですよね。だからアリゾナ州に別荘を持ってるっていうお金持ちは結構います。

しかも冬でもそれほど降水量がない、ということで、MLBの球団がキャンプをするには一番適して居るんですよね。大谷選手もエンゼルス入団後の初参加はアリゾナ州テンピの早春期キャンプでした。

そしてアリゾナと言えばサボテン。知人とI-8走ってる時に「サボサボゾーン」と思わず名付けてしまうほど、高速道路の周りだろうが何だろうがサボテンが群生してます。↓

I-8のアリゾナエリアからのGoogleマップ。マジでこんなんです、サボサボゾーン。

なお、このサボサボちゃん達は保護されています。無断で伐採すると懲役25年です。そして19世紀~1970年代以前までだったか、頭の足りないマッド野郎どもが酒に酔っ払って銃でサボテンを撃ちに行く(plugging)ということが絶えなかったそうで、サボテン警官も存在したorするほど。(今でもアリゾナ以外の州およびメキシコでもプラギングに関する厳しい取り締まりがあります。)

私が聞いたことある中でかなり間抜けな亡くなり方をした男性も、酔っ払ってプラギングしてたらその何メートルものサボテンが自分に倒れてきて圧死、とか「頭おかしいw」と草しか生えない事件も結構あったらしいです。

1-1-2 ミネラルウォーターの値段が馬鹿高い

アリゾナ州に在住or長期滞在すると、何が高いって、ミネラルウォーターのボトルの値段です。カリフォルニア州は消費税率が高いなーと思ってたんですが、アリゾナ州に入って消費税率下がったと思ったらミネラルウォーターのボトルが馬鹿高くてげんなりしました(私は結構水を飲む派なので)。
渇水沙漠地域なので水そのものが貴重なのですが、それに加えて安全に加工したミネラルウォーターおよび家庭用水道の値段は、地域によっては冷房のための電気代より高額になってしまう所もあります。

アリゾナ大(アリゾナ州ツーソンにあります)に知人数人が留学していたのですが、シェアハウスで5~6人が共同で住んでウォーターサーバーで各々が水を使う、という形にしても、1回3ガロンだかのサーバー用補充ボトルの値段がすさまじく高く、実際の値段聞いて私も「そんな高いの!?」とびびりました。(水の値段だけだったら下手するとマンハッタン内よりも高いかもしれません。)おかげでシェアハウスで家賃抑えられてるはずなのに「燃料サーチャージ」ならぬ「水サーチャージ」を取られてたとか。

降水少ないし、湿度低くてカラッと晴れてばっかなので、地中海出身の人には住みやすいかもしれませんが、バスタブに湯を張らないと風呂に入った気にならない日本人にとっては地獄のような水道代に悩まされるという(苦笑)。

なお、アリゾナにもダイアモンドバックスというMLB球団がありますが、あそことかその他マイナー球団の野球場とか、その他のフットボールフィールドやゴルフ場の芝の養生のためのスプリンクラー代は幾らになるんだと考えただけで頭がクラクラします。

唯一気にしなくて良いのかな、と思うのは、水および降水が少ないので雑草駆除の作業が少なく済む、ということですかね。(しかしサボテンは生えてきたらよっぽどの道路工事以外は伐採厳禁です。マジでえぐい懲役食らいます。)

1-1-3 半分メキシコみたいな場所

メキシコからの不法移民に関して、トランプ政権が「国境の壁を作るんだ!」つってえらく金かけて壁作ってましたが、そこまでやっても来る人間は来るんですよ。

むしろ、メキシコ系移民は正規に働けないので安い労働力として密契約で下働きをさせてるカリフォルニアとかアリゾナの小規模店主やらリゾート施設は結構多い気がします。

個人的な肌感覚だと、サンディエゴの場合は沿岸警備隊が不法移民取り締まりを頑張ってて、それ以外の内陸部のカリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコなど各州は州警察と国境警備隊が取り締まってるっぽいです。

カリフォルニア州内陸部、I-8で一番国境線に近い部分。いろんな密入国防止設備があります。

テキサス州の場合、結構な国境線をリオグランデ川が通っているので「天然の国境」になってますけど、カリフォルニア内陸部やアリゾナ州、ニューメキシコ州などでは結構こうやって「灌漑設備」という名目の水路を張って、国境の壁をなんとか越えられたとしても泳いだり、鉄条網をなんとか突破しないといけない作りになっています。(日本だと信じられないかもしれませんが、結構北米でも、中米でも、泳げない人って意外と多いんです)

私もI-8を走っていて、「右折はメキシコ国境ですよ」みたいな注意書きを結構見かけました。

ここでまた、アリゾナ州の話に戻りますが、アリゾナ州ではササベ、ナコ、ロッキエイなどの国境検問所がありますが、その中でも一番大きな国境検問所がノガレスです。

ノガレスの国境検問所。アリゾナ州ノガレスとメキシコ・ソノラ州ノガレスの間にあります。

アリゾナ大学があるツーソンからI-19を走って1時間ぐらいでこの国境検問所に着きます。アリゾナ大に通っていた知人が一度ノガレス参りをしたことがあるんですが、US→Mexicoはかなりゆるいのに、Mexico→USはパスポートからビザから国外許可もらったI-20やらESTAやら、まー提出する書類が多いこと多いこと。当然入管の職員さんもえらく仏頂面だったらしいです。

こんな感じなので、国境警備が緩かった時代にメキシコから来た移民がそのまま住み着いて、底辺労働者として働く、というのはカリフォルニア~テキサスにおいてはわりかし普通で、初めてその辺の地域から南部に来た日本人の知人が「え?ヒスパニックの下働きってここはこんなに少ないの?」と驚いていました。合衆国、と一口に言っても所変われば民族構成も変わるもんなんです。

というわけで、西はカリフォルニア~東はテキサスの各州に関しては「看板が英語&スペ語表記」がデフォルトになってますし、お店の看板の売り文句には「スペイン語話せる店員がいますよ~」ってなってたりします。一応アリゾナ州に関してはドラッグストアで売ってるモノは英語表記なのですが、チェック係の方がスペ語話せる方も居るので「コレってなんて書いてあるの?」とスペ語で尋ねてもちょこっとだけの説明は出来る人が多いです。それだけメキシコとの関わりというか因縁と言うかが深い地域なんです。

一応メキシコ系の方々の名誉のために言っておくと、正規の手段でメキシコから留学や就職で来ている人も多いですし、事業を成功されている方も無数におられます。いまやヒスパニック系は重要な民主党支持層の一つとなっています。

私の元ルームメイトの一人もメキシコ出身で、トルティーヤを何度もご馳走してくれましたし、「メキシコ人もタコ食べるんだよ」と教えてくれました。ただ、私は基本的に巻き舌が苦手なので結構スペ語の人名の発音を訂正させられた苦い思い出もあります。

なお、その方曰く「タコ食べる国は世界で10カ国もない」そうです。だからモロッコやモーリタニアで日本のJICAがタコ養殖や蛸壺漁を教えて、それが日本の食卓に並んでます。

1-1-4 先住民の居留地が多い

アリゾナ州はカリフォルニア州に次いで先住民の各部族が住んでいる州です。大体は居留地にいますが、中には都市部で頑張ってる方々も多いです。
アリゾナ州の中で一番数が多く、かつ話者も多いのがナヴァホ族およびナヴァホ語です。

ここで私にとっては習慣(悪癖でも良いですw)となっている特定の時期のスポーツ観戦での国歌斉唱のお写真をひとつ。

中央で国歌斉唱されてるのはアリゾナ州立大に通うナヴァホ族出身のカハラ・ホッジズさんです。

こちら、2024年4月にアリゾナ州グレンデールで行われたNCAA男子バスケットボールトーナメントの決勝戦の開幕セレモニーのお写真です。真ん中がアリゾナ州旗、その左が合衆国旗となっていますが、その後ろにずらーっと並んでるのがアリゾナにいる主要先住民各部族22部族分の部族旗です。

ナヴァホ、アパッチ、ホピ、アズテック系列辺りの主要な部族の他にコレだけの部族旗が一堂に会するという機会はアメリカ国内でもそうそうありません。というのも、1828年以降のジャクソン政権下の強権的な政策により、18世紀半ばから本来の土地を追われ、さらに連帯して内乱を起こさないようにという目的で、大体部族ごとに居留地が定められており大体はその居留地で生活保護を受けたり、1970年代以降に「先住民の生活保障のため」という意義で居留地内に設置が認可されたカジノでの仕事に従事しています。

こちら、アリゾナ州マリコパのアク=チン先住民地区内のカジノつきホテルです。

こういう「先住民の福祉目的で特別に認可されたカジノ」は結構いろんな州にあります。私が住んでいた州にもありました。(呼吸器が弱いので行ってませんけどね)。結構安価から遊べるものも有るみたいで、労働者階級の白人の人たちでも「行ってきたよー」とにこにこしてることも多いです。

このようなカジノでの収益は居留地の学校建設や、先住民の優秀な学生への奨学金に使われますが、同時に先住民の中で深刻なアルコール依存やギャンブル依存も引き起こしていて、さらに先住民女性の初産年齢の異様な若さやシングルマザー率の高さなんかも問題になってます。

これは「アメリカ在住歴あるある」なんですけど、割と白人の方は「ひいおばあちゃんが先住民だったんだよ」とか、こっちが聞いてないのに割と誇らしげに言ってきます。「祖先にアフリカ系が少しでも入ってたら恐怖する割にそこはええんかw」と私などは思いますが。

1-1-5 天然資源ざっくざく(昔から銅、今はパワーストーン)

アリゾナ州が潤ったきっかけは銅山と綿花生産でした。元々準州扱いだったのですが、州に正式に昇格したのが1912年。カナダ以南、メキシコ以北の北米大陸本土内で最後に州となりました。

今や「銅=チリor西アフリカ内陸」というのはまあ割と地学系の勉強では学習すると思うんですが、合衆国にも結構銅鉱山はあったりします。これも仕方ないっちゃあ仕方ないんですが、かつてはOPECの銅版みたいな機構作られようとしたんですけど、アメリカの不参加で話は消えております。(割とこういうモンロー主義的な所は今でも変わってないです)

アリゾナ州モレンシにあるモレンシ鉱山。今でも銅鉱山として動いてます。

そして、鉱石好き、パワーストーン好きに人気なのがアリゾナ州セドナ。元々パワースポットとして人気があるのですが、私もセドナに行った親戚にペリドットのアクセサリーをお土産にもらったことがあります。

確かセドナとグランドキャニオンにはギリギリ日本のツアコンさんがついてくれてるような気がするので、「英語がなー」っていう人はツアーに参加しても良いかと思います。

1-1-6 ガチ保守派の州

アリゾナよりもユタのイメージが多いかもしれませんが、アリゾナ州内には結構モルモン教徒(末日聖徒イエス・キリスト教会、通称LDS)が多いです。19世紀半ばからブリガム・ヤングが今のアリゾナ州の地域に信徒を送り込んだようです。

そのモルモン教含め、プロテスタントの中でもバプティストとか、メキシコ系に結構多いカトリックとか、ガチに中絶反対の立場を崩さない人は結構多いです。

わりかし中絶に寛容なカリフォルニアから、アリゾナ州フェニックスに入った時のインターステートの中でPro-Life(人工中絶反対)というステッカーを貼った車ばっかりになって「おめーらよぉ・・・」と泣けてきました。

アメリカのこの手の方々とは基本的には人工中絶と銃規制に関してはどんだけ言おうが全く聞きませんので気をつけてください。(逆に言えばそこさえ触れなければ結構フレンドリーです)

でもって、このようなガチめの宗教信仰家+銃規制反対派が熱烈に支持しているのが共和党です。でもってアリゾナ州は基本的に共和党支持者の声が大きいです。
なお、
共和党=レッド
民主党=ブルー

と、普通は色分けされていて、州ごとにレッドステート(アリゾナとかがそうです)、ブルーステートとくっきり分かれます。(カリフォルニア州はブルーステートです)

2020年の大統領選挙では、アリゾナ州がブルーステートになったことが逆に私にとっては、事の経緯を知ってればある意味当然でしたけど、歴史的経緯からすると結構な大事でした。

原因は簡単です。トランプさんが「アリゾナの英雄」であるマケイン元上院議員(2018年逝去)のことを2020年にわざわざアリゾナまできてむちゃくちゃ誹謗中傷したからです。あれはリアルタイムで見てて「それアリゾナで言っちゃいかんやつー!!!せっかくのレッドの票田なくすやつー!!!」と泣きそうになりました。

別に私はどっちの支持でもありませんが、地元の州にいろいろな利益をもたらし、さらにヴェトナム戦争に従軍して「共和党員としての矜持」の象徴みたいな存在だったマケインさんをあそこまで言ったらそりゃブルーステートになりますよ。

小休止 その1 アリゾナ州の銀行口座は何だったの?

さて、ちょっと話を冒頭に戻しましょうか。
今、PDFで例のUSA v. Mizuhara のafft(訴状)読んでるんですけど、2ページ目に結構重要なことが書いてあります。

III Summary of Probable Cause(第三章 訴追根拠まとめ)というところの2行目に、「1600万ドル(16 million dollars)以上を被害者A(大谷選手です)のものであるchecking account(当座預金口座)から電子送金された」と書いてあります。

日本の当座預金でも同じですけど、当座預金は小切手で送金するための口座で、利子が付きません。だから元通訳が大谷選手の財務チームに「利子つかない口座だし、彼はあの口座は出入金では動かしてないし(実際には元通訳がむちゃくちゃ動かしていたんですけどね)、何より本人が『プライベート利用にしたい』って言ってるから」って説明してますよね。

実際、大谷選手は高校から日本ハムにドラフトされた時も契約金などはご両親にお任せして自分は寮住まいで筋トレ練習漬け。一応月に10万円のお小遣いを送ってもらっていましたが、寮だとお食事でますし、水道電気ガス等の料金も寮=日本ハム側持ちなので「10万ですら余る」という非常にストイックなアスリートだった、というのは日本人であれば割とよく知っているおはなしです。

ただ、コレがMLBエンゼルスに移籍して活動拠点をアメリカ合衆国内に移す、となったら話が違ってきます。歴史の古いドジャースだと事情が違うのでしょうが、エンゼルスは新興球団。「日本で作っていた銀行口座をそのまま使う」というのに対して「いや、アメリカ国内の口座作ってよ」というのは当然の流れだと思います。私もアメリカ住んでたときにバンカメの当座預金口座作ってもらいましたし。

小休止 その2 アメリカのめんどい日本人事情

私の場合は、そもそも日本人が少ない州で、ルームメイトも基本は日本人以外という「英語話さないと生活できない」という、敢えて自らにきつい苦行を課す覚悟で行きましたけど、こんな徹底的に「日本語を話すことが親との電話と日本関係の仕事以外ない」という人は逆に少数かもしれません。

「日本に居ないから日本人と一緒に居た方が安心する」という考えの人も多いと思います。特に日本企業からの駐在員の家族で、配偶者(俗に「駐妻」と言われる人々です)であれば、日本人コミュニティや日本人会の運営、駐妻のミーティングへの参加などで、変な意味で日本に居るより日本の同じような境遇の女性と関わる事が駐妻さんたちには多いです。

私は、近所に日本語補習校があって、そこでバイトで臨時教員をしていた関係で、その補習校の運営母体である日本人会や駐妻会の方々と「しょうがなく」話すことはありましたが、大方の駐妻の方々は日本に帰ると英語、忘れちゃいます。そら普段使ってなければ忘れますよ。

私の場合、英語で食ってるようなものなので、基本スピーキングは忘れませんが、たまーに難しめの英単語が飛ぶことがあって、アメリカで学位取ったと言っても、今でも「あれ?」と思えばすぐに電子辞書で調べてます。それは仕事上当たり前の行為だと思ってますので。

で、こんな胡乱な独り者の後期高齢中年(中身ただのおっさん)が、日本のママ友集団と話が合うわけがありません。以前書きましたけど、父親が猛毒だったので「自分が子供を持ったら同じ事を子供にしてしまうかもしれない」と怖くて子供持ちませんでしたし。

小休止 その3 アメリカのめんどい信用経済

さて、こんだけ日本のことをシャットアウトしても出てきてしまうのが、アメリカの銀行問題です。私が滞在していた州は南部過ぎてまず日本の銀行の支店などありません。となれば、アメリカの財務省の認可を受けた銀行で口座を作って、そこから日々の食事やらガソリン代やら家賃やらを支払わなければいけません。

数ヶ月の観光目的滞在であれば問題ないのですが、年単位で滞在するのであれば、結局はアメリカの銀行口座を持たないと生活できません。

何でかと言えば、「アメリカ人は現金を持たない」からです。持ってても20ドル札1枚です。万札使っても何も言われない日本とは全く違います。いや、確かに100ドル札ってありますけど、そんなもん、普通の店で出されても「それ、使えないから」とクレカ払いか小切手払いを要求してきます。

アメリカは銃社会です。コンビニに銃持った強盗が来て店員を銃殺しても、レジに入ってるのは大抵小切手。紙幣が入っててもせいぜい20ドル札、10ドル札、5ドル札、1ドル札が数枚程度です。その20ドルでも治安が悪い地域では平気で「レジに$20札あった」という情報で銃を持って殺しに行きます。

こういう事情を全く日本人は知らないので、とある日本の知人が私の所に遊びに来たときに私に滞在費を支払ってくれたのですが、差し出されたのが100ドル札。「何ちゅうもんを出してくれんねん」と内心キレてました。(しょうがないんで、事情話して日本人会関係の話が通じるお店で結構大量に買って消費して使い切りました)

そして、アメリカで数年間以上生活する上で欠かせない&絶対に一回ははまり込むのが信用履歴(クレジットスコア)。基本、市民権を持ってたり、グリーンカードを持ってたりする人間はそこまで苦労しませんが、就労ビザで渡航してきた外国人(ビジター)は、例えば「東京大学で博士号取りました!」という人でもクレジットスコアは0スタートです。

だから、大谷選手がいくら日本のプロ野球で二刀流選手としてすごい名声を残していようが、クレジットスコアはゼロスタートなんです。

知り合いに医科歯科大博士号取得者&アメリカ某大学での研究員として滞米していた人がいるのですが、そんな、ある意味すごい履歴があっても、この辺の知識が無い場合、「普通に出来るでしょ」と通勤用の自動車を買いに行くことすら「クレジットスコアない人間に売れません」と断られてしまいます。その方の大学、結構な車社会だというのに、「一体どないせえちゅうねん」とぶつぶつ言っておられました(苦笑)。なお、私は某国際企業互助会の援助で行きましたので、その企業互助会のつてで、中古車を結構早い時期に買うことができました。

では、そのようなクレジットスコアゼロな人間が現金を使うのを嫌がる国でどうするか。それが、今回話題になっている「当座預金口座( checking account )」なんです。当座預金口座であれば、無利子なのですぐに口座開設できますし、クレジットカードもデビットカードも使えます。

私も最初に国際交流関連の部署の方に付き添ってもらって、銀行に口座開設に行きましたけど、当座預金でした。その代わり、小切手帳やクレジットカードのデザインが選べて、私はスヌーピーを選びました。(ディズニーよりスヌーピーorシンプソンズ派です)

今回の騒動で唯一救いがあるのが、大谷選手の当座預金口座に元通訳が勝ったお金を入金せず、自分の口座に入金していた点です。これで、勝ち金がその口座に入金されてしまった場合、「口座に入金した」ということで、IRS(アメリカ歳入庁。国税庁みたいなもんです。アメリカ人やアメリカ在住者はその3文字で結構恐怖におののきます)側が「うーん」と大谷選手への事情聴取がきつくなった可能性があります。誰だって国税やマルサに狙われたくないように、アメリカの人々の誰もがIRSの捜査対象なんてなりたくないですから。

小休止 その4 アリゾナ州のめんどい事情

さて、1-1-3や1-1-6でおはなししてきたように、アリゾナ州という場所は基本英語で、「スペイン語が話せる店員がいますよ」という看板をわざわざ出して商売している人がいる場所です。日本語の看板なんて、綴りのおかしい日本料理店の看板ぐらいにしかありません。

基本、私の本質が一匹狼なので、そういう場所でも英語でホイホイ話を進められますが、何でかグランドキャニオンまで同乗してもらったサンディエゴの大学に留学中の日本人の友人はホテル関係自動車関係の会話を全部私に頼んで「サガさんが居て良かったわー」とか言っておられました。いや、留学してたのどっちよ(苦笑・ちなみに当時の私は日本の某教育機関で働いてました)。

と言うわけで、訳わかんないままエンゼルスに連れてこられて、エンゼルスはLAなんでまあ日本人人口多いんで(何なら日本語で運転免許取れます)良いかなーと思ってたらキャンプでアリゾナに直行。で、エンゼルスから「給与振り込み口座作ってねー」と言われた大谷選手。絶対何が何やら判ってなかったと思います。

基本、通訳みたいなのがいても、銀行預金口座のパスワードだの秘密の質問だのの時は、行員と本人の1対1対応が当たり前なのですが、上に書いたようなめんどい事情を知らない大谷選手、よくわかってないことを良いことに、元通訳を同席させてしまったんでしょうね。私の場合、当座預金口座作りに行った時には、重要情報や事項の申告や説明の時、国際交流担当の人は席を外されてました。

と、ここまで言わないと日本人には通じないというめんどくささよ(涙)。いやヤーポン変えないアメリカも大概変な国ですけど、日本の、特に若い方々には、日本国内にいて日本の慣習が当たり前だと思って居ることの内向き加減のやばさに気づいて欲しいもんです。

カリフォルニア州編は、また時間が出来たら書きますね。














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