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【Vol.19 組織成長は新陳代謝に】家業倒産、大学中退、派遣社員から年収1600万リーマンになるまでの話
組織の向上は、新陳代謝のもとに
ツン姉さんは、僕やニノを媒介として、正社員勢とも会話するようになった。
もちろん以前から挨拶や業務上の会話は交わしていたが、談笑するようになっていた。
この変化は、ニノの存在がとても大きく寄与していた。
ニノが常に明るいということは、以前書いた通りだ。
いつもふざけていじられ役となり、場を盛り上げていた。
ニノのおふざけがツン姉さんのツッコむ機会となり、自然と口数が増えていた。
その状況を、好ましく思っていない人がいた。
ベテラン女子ボスだ。
「楽しそうやな」
談笑しているグループの横を通りながら、皮肉っぽくそう言い放った。
「最近正社員と仲良さそうやん」
また別のある日には、休憩室でツン姉さんにそう言ったらしい。
そしてまた別の日には、新卒女子に会社のネガキャンを行っていたらしい。
新卒女子は絵に描いたようなおバカちゃんではあったが、非常に純粋でいい子だった。
皆に等しく可愛がられており、そんな彼女も皆にいい意味でフラットに接していた。
ベテラン女子ボスのこういった言動とは裏腹に、店内は明るいムードが増していた。
販売面で苦戦しているのは相変わらずだったが、徐々に改善しており、「要注意店舗」からは脱却していた。
結果が出始めると、店内の空気は前向きになってきた。
活気が出るとモチベーションが湧き、ますます皆が積極的に販売活動を行うようになった。
モチベーションが行動や成果を生むと思われがちだが、実際は逆であると以前書いた。
これは組織においても、同じなのだ。
まずは、スモールステップで成果を出し、その成果がモチベーションを生む。
組織の空気感を改善したければ、これが最も効率的で有効な手段だ。
驚いたことに、短期間の間に「販売を頑張る」空気が当たり前になった。
頑張らない者が、浮く雰囲気に変わっていったのだ。
ベテラン女子ボスは、浮いていた。
彼女自身も、そんな空気を感じていたようだ。
ある日、退職を申し出ていた。
理由は「妊活」。
嘘ではないだろう。
しかし、このタイミングだったのは、居場所がなくなったからではなかろうか。
僕たちは、ベテラン女子ボスに何もしていない。
周囲の空気が変わったことで、居づらくなり、自身で辞めていった。
ベストなのは、彼女自身にも変化してもらうことだっただろう。
もしかしたら、そうなる道もあったのかもしれない。
一方で、「ガン」は取り除くことはできても、良性に変えることはできない。
彼女が「ガン」だったのかはわからない。
しかし、組織のレベルが上がった時、そこに所属する個人のレベルアップも求められる。
能力的にレベルアップできない者、あるいはその気のない者は淘汰される。
それが新陳代謝であり、サステナブルな組織には必要不可欠であろう。
彼女に能力はあったと思うが、その気がなかった。
エネルギーを、ネガティブな方に使ってしまった。
その結果、淘汰されたというのが現実だろう。
「最も強いものが生き残るのではない。 最も変化に敏感なものが生き残る」
組織において、「変化への敏感さ」が重要なのは経営層だけだ。
一方で、「変化への柔軟さ」は重要だ。
頑なさを捨て、変化をポジティブに受け入れる。
あるいは、変化への本能的な忌避を、一瞬押さえ込んでみる。
最初の一歩を踏み出せば、その後は行動がモチベーションを生む。
我慢は最初の一瞬なのだ。
この一連の騒動は、その後の人生において、何度も思い出す大切な経験だ。
皮肉っぽくなってしまうが、ベテラン女子ボスの存在によって大切な学びを得た。
ベテラン女子ボスの退職に伴い、店舗は一枚岩となった。
販売の改善傾向が加速する中、まもなく新年度が始まる4月を迎えようとしていた。
このタイミングで人事異動が発令され、新店長が就任することになった。
それが再び混乱を生むとは、この時は想像もしていなかった…
To be continued...