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人生を「序・破・急」にたとえる笈田ヨシさんの佇まい

俳優の笈田ヨシさん。
その居ずまい、佇まいを映像で見ているだけで、胸がいっぱいになります。

なにか、笈田さんはひとりの人間という枠を持ちながらも、常に周囲との調和がはかられているようで、いまにも、すべてとひとつになってしまいそうな、見ている私とまでもひとつになってしまいそうな、快感、安堵、そのようなものが私の身体から湧き上がってきます。


笈田ヨシさんは1933年生まれ。1968年にピーター・ブルックと活動をともにして以降、87歳の現在までパリを拠点に世界中を飛び回り公演をされています。これまでの探究と鍛錬とがその身体に凝縮され、自然に漏れ出でてくるのでしょう。以前放送された日本のドキュメンタリーをYouTubeにアップされている方がいました。動画が3分割されていますがトータルで1時間ほどです。この投稿の最後に貼ってあります。

映像でも著書でも、笈田さんは世阿弥の「全ての自然現象には序破急があり、それにしたがって演じる」という事に触れられています。序破急とは、一貫した一定のテンポではなく、ゆっくり始まり(序)、次第に速まり発展してゆき(破)、クライマックスに達する(急)、という流れです。そして急は次なる序の準備となり繰り返されるサイクルです。

これをご自身の人生に当てはめれば、今は「急」にあたる、と仰います。


私は今40代ですから、これからも生きて普通に年を取るのだとしたら、現在は「破」を経験しているのでしょう。

しかし、もしかすると今思いがけず早くも「急」が始まってしまうかもしれません。あるいはいまだに長い長い「序」であるのかもしれません。現時点からは、全体はなかなか捉えられないものですからね。

そうだとしても、することはひとつだと思うのです。安心して、今の自分のテンポを送り出すことです。「昨日の私」ではなく、「私ではない誰か」ではなく、私の身体と、思考と、心とを、緊密に今に寄り添わせて、「たった今」を感じて、信じてテンポを送り出すことです。

すると、結果として美しい「序破急」が作られていくのです。なぜなら序破急はそもそも、すべての自然の営みなのですから。

そう思うのです。

笈田ヨシさんの佇まいは、そう思わせてくれます。

身体から安堵が湧き上がってきます。

ノンフィクションW
八十歳の漂流俳優 ヨシ笈田 三島が託した日本

part 1
part 2
part 3

by Peter Tournier


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