見出し画像

詩作               磨かれて磨きあげられたもの


磨かれて磨きあげられたもの

 それはテカテカと輝く真鍮の

    聖人像の足の甲

 信者の唇と手のひらが

   何千回も何万回もその箇所に

    ひれ伏し擦り 口づけを繰り返し

    その既に黒ずんだ像の

       足の甲の部分だけ

 まるで薄暗い廊下の一箇所が

 鋭い西日にあぶり出されたかのように

 仄暗い大聖堂の一角で 

  鈍い黄金色を醸し出す


 何百年の時を重ねて

 カトリック教会の聖人像の足は

 その指先までもが

 磨かれ磨きあげられ

 祈りと共に変容し沈黙し佇む


磨かれて磨きあげられたもの

 それは初夏の海の波打ち際の

   その透明過ぎる水底で

        驚く程の白さを放つ石達


 幾日も幾日も 海水と踊り 

   乳歯のような真っ白な波に

    何度も何度も洗われ転がり
 
   ますますその楕円形に

     柔和な曲線を施していく


  

 ソーダ水とアイスクリームの色合いの

  波打ち際に素足で立ち 

      遠くの空を眺めて思う

 磨かれて磨きあげたもの

  そんなものを

       私の中にも育ててみよう

 

 

 


 

いいなと思ったら応援しよう!