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小学校でバイトしてる話①【エッセイ】

僕はここ1年位、近所の小学校で学童保育のバイトをしている。
業務内容はだいたい子どもと遊ぶだけ。全く苦じゃないので、心底気に入っている。

バイトを始めるまでは同年代か上の年代の人間としか関わりがなかった。
だから、子どもたちの柔軟性に満ちた発想やくだらない主張に命張っているところ(自分は1日にアイス2本も食べた、お前より凄くね?って話とか)に毎回、感心する。

面白い話がいくつかあるので、紹介したい。

子どもたちはドッヂボールが大好きだ。命懸けといっても過言はない程であり、ワールドカップに匹敵する熱量をもっている。校庭はスタジアムに変貌する。

その日のドッヂボールは男子対女子という形式で行われていた。僕は男子チームの外野、すなわち女子チームの後方で見守りをしていた。

両チーム残り2、3人になって試合の熱はピークを迎えていた。
子どもたちは奇声や咆哮を発しながら、陣地内を駆けずり回っていた。

小学2年生のN君にボールが渡ったときにその出来事は起こった。
彼は久しぶりに自分へボールが渡ったこともあり、すっかり熱くなってこう言ってしまったのだ。
「喰らえ、このクソババア!!」

もう1人の見守りの先生により試合は中断され、N君はその「クソババア」と呼んだ相手に謝りに行くよう促された。いつもはエネルギーの塊のようなN君もその時はしゅんとして、自分はなんということを言ってしまったんだと悔恨の面持ちで眼前の女子チームへ謝りに行くのだった。

と思いきや、そのまま女子たちの横を通り過ぎ、僕の前に来て言った。
「クソババアって言って、ごめんなさい。」

深々と下げられた頭にはふざける余地などないように見えた。驚嘆して無言の僕を尻目に彼は涙を拭いながら、自分の陣地に帰っていくのだった。

僕の容姿は短髪で、肩幅が広く女性らしい要素など微塵も感じられないのだが、彼には一体どう見えていたのだろうか。百歩譲って「ババア」はいいとして、「クソ」は付けないでもらいたい。

子どもたちと接しているとこのような斜め上の話がバイトに行く度、溜まっていく。
良ければ次回も聞いて欲しい。

(終)

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