
あなたには、みえていないだけ
イオンでの奇妙な出来事。
その日、私はただの買い物のつもりだった。
お昼に食べる二日分のパンと、ジュースを二、三本。
外は冬のため、日が暮れるのが早い。
早めに帰ろうと、少し急いでいた。
買い物を終え、少し小走りでレジに向かう。
混んでいたため列に並ぶことになったが、急いでいたせいか、なかなか順番が来ないことにイライラしていた。
そしてようやく、自分の番が来た。
急いで空いているレジに駆け寄り、支払いの準備をする。
スマホを取り出し、タッチ決済のために指認証。
その瞬間——
スー……ッ。
まるで命を吸い取られるように、スマホの画面が真っ暗になった。
「……え?」
最初は、ただのフリーズかと思った。
だが、いくらサイドボタンを押しても、画面を叩いても、スマホは反応しない。
「……バッテリー切れ?」
そんなはずはない。
数分前まで普通に使えていたし、充電は30%以上あったはず。
レジの機械に電池を吸い取られたのか?
それとも、何か別の“異常”が起こったのか?
混乱する私の背後で——
「お客さまー、何かお困りごとでしょうかー?」
店員さんの声が響いた。
ハッと現実に引き戻される。
「す、すみません……スマホが急に……」
「充電切れですかね?」
店員は愛想よく微笑んだが、私はなんとも言えない違和感を覚えていた。
今の今まで使えていたスマホが、突然ブラックアウトするだろうか?
「とりあえず、別のお支払い方法でも大丈夫ですよ。」
仕方なく、財布を取り出そうとした——が、
ない。
「……え?」
ポケットにも、カバンの中にも、どこにもない。
スマホはブラックアウト、財布もない、支払いもできない。
まさかの三重苦。
「ちょっと、車まで戻ってきます……。」
恥ずかしさと焦りを感じながら、私は一度イオンを出ることになった。
そして、車の中の長い時間。
駐車場に着く頃には、外はすっかり暗くなっていた。
冬の寒さが、いつもより肌に突き刺さる気がする。
車に乗り込み、まずはスマホを充電器につなぐ。
だが——
「…………。」
画面は完全に沈黙したまま。
普通なら、電源が切れていてもバッテリーマークが表示されるはず。
だが、スマホは微動だにしない。
まるで、何かに支配されているかのように。
「……なんなんだよ。」
焦る気持ちとは裏腹に、スマホは無反応のまま。
この待ち時間が、やたら長く感じた。
ふと、フロントガラス越しに周囲を見渡す。
他の車もあるが、人影は見当たらない。
……だが、妙な違和感があった。
隣の車の窓ガラスに、自分の姿が映る。
いや、本当に“自分”だけか?
「……気のせい、だよな。」
そう思いながらも、なぜか後部座席を振り返るのが怖かった。
まるで、そこに何かがいる気がして——
「……ピッ。」
突然、スマホの画面が点いた。
Appleのロゴが浮かび上がる。
「……やっとかよ……。」
ホッとしたのも束の間、スマホを開いた瞬間、妙な違和感があった。
ホーム画面に戻る前、一瞬だけ——
通知も何もないはずの画面に、「じっ……」とこちらを覗くような影が映った気がした。
……見間違いか?
さっきから変なことばかり起こっている。
財布を探し、今度こそ支払いを済ませるために、再びイオンへと足を向けた。
だが、あの待ち時間の長さ、スマホの異常、そして背後の気配……。
あの時、本当に“誰もいなかった”と言い切れるのか?
あなたには、みえていますか。
もし、この時、私が“何か”を見てしまっていたら——?
四谷みこは、そんな“見えてしまう”女子高生。
しかし、彼女には選択肢がない。
「見えている」と悟られたら、終わり。
だから彼女は、どんなに恐ろしくても、絶対に無反応を貫く。
でも、もしあなたが同じ状況になったら?
スマホが突然ブラックアウトした時、誰かがいたのかもしれない。
後部座席に“何か”が座っていたのかもしれない。
あなたは、その異変に気づかないフリができますか?
……ねえ、本当に後ろには誰もいませんか?
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「見える子ちゃん」。一緒にみてみませんか?
次回、「あなたは、みえていますか?!」をお楽しみに!一緒にネタバレしてみませんか?
興味があれば、是非とも読んで欲しいなーと思います。よろしくおねゲッチュ。